Henrik Sundqvist (プロデューサー)
日本にはもう三回も行ってるから、日本の音楽を耳にする機会は多いんだ。日本には高くて細い声で歌う女の子ヴォーカリストがたくさんいるけど、halはそういったシンガー達よりも深くて暖かみのある声質をしていると思う。だから実際にレコーディングを始めた時、なるだけ彼女の声から暖かみを引き出そうと務めたんだ。その結果、普通17歳の女の子が歌うよりはるかにしっとりと大人っぽいサウンドになったと思う。彼女に提供した2曲はひょっとするとクラウドベリーの次のアルバムに入ったかも知れない曲なんだけど、halの方がしっくりくると思ったんだ。彼女の声は特に中音域がディープでしっとりとしていて素晴らしいから、その辺が聴き所かな。“エレベーター”での彼女の歌は本当に素晴らしいよ。
杉山裕一 (ディレクター)
「Another side of Life 制作を終えて。」
halから、どうしてもスウェーデン録音を実現したいと相談されたのはシングル発売の前だ。彼女なりに、フェイバリットアーティストの音を目差し「Hitch Hike」ではそれが実現できたと感じたらしいが、スウェーデンのサウンドを追及すればするほど本当にスウェーデンで録音するしかないと結論付けた様子。制作の立場からすると非常ににリスキーであるし又、相手のある話しである、断られるケースもある訳だ。しかし最終的に彼女の熱意に負けスウェーディッシュブームの立役者クラウドベリー・ジャムと交渉を行った。
第1回の交渉はNG!! しかし声質に興味があるとの返事。可能性はゼロでは無い。我々は再び交渉した。2回目、彼等を日本に紹介したトラットリアのブリッジの中心人物・大橋伸行をブレーンにおき新しいデモ曲を制作、プレゼンを行った。返ってきた返事は「日本で7月〜8月にライブを行う、その時にセッションしてみたい」とのこと。デモ曲でのプレゼンは大成功だ。当日、クアトロレーベルの会議室でhalとメンバーとのセッション。アコギ体で「ELEVATOR」を歌う。メンバーからの拍手と握手。「9月にでもすぐにレコーディングを始めよう」中心メンバーのヘンリックから強い誘い。halもわれわれスタッフも夢を見ている様だった。
急なスケジュールの為、スウェーデンのAirが取れずイギリス・ヒースロー経由に。9月のスウェーデンはハイシーズンで、直行便は満席。11時間で行く所、16時間の行程に。しかしスウェーデンで録音できる喜びは長時間移動のストレスを忘れさせた。しかし現地はこちらの予想を上回る寒さ。9月というのに、日本の12月頃の気候。halは現地であわててウールのオーバーを購入。我々も古着屋で(スウェーデンは税金が高いので新品は高価)革ジャン等を購入。VOCALダビングは予想していたより難航。かなり高いレベルを要求され、hal自身かなり煮詰まる。連日連夜ホテルでスタッフミーティングを行い、彼女の気持ちがノレる曲からスタートしようと結論。クラウドベリーも了承。「P.Sの後で」からレコーディングされる。一度呼吸をつかむと対応力のある彼女は、まるでホームスタジオかのごとくリラックスしたレコーディングを進めた。
最終のレコーディング曲は「ELEVATOR」だ。今回のプロダクトのきっかけにもなった曲で彼女自身の思い入れも半端なものではなかった。思い入れの強い分、彼女の納得したテイクがなかなか録れず彼女自身苛立つ。その日は昼頃にレコーディングを止め、ブレイクをとる。レコーディング最終日、いよいよ「ELEVATOR」の録音。hal初のムーディーなバラード。スタジオの照明をかなり暗くして、彼女のコンセントレーションを高める。結果、我々が知らなかった新しいhalのイメージが「ELEVATOR」によって完成された。まさに、クラウドベリープロデュースの高純度に凝縮されたエキスが出たといった感じ。我々もhalも大満足。最終的に次のシングルも含めた計5曲を録音し、ビデオ、ジャケット写真を撮影して帰路につく。ミキサーのペレ、エスキルともに呼吸が合ってきただけにもう少し滞在を延ばせば更によいものができるかも…そんなエゴが頭をよぎるが、どのレコーディングも“腹八分目”かな?と納得。オリジナルのスウェディッシュポップでも実現できない、非常にキュートでストレンジな密度の濃いアルバムができた。