● 京浜急行電鉄2100形
 ~ “鉄道趣味界の人気者”に見る鉄道趣味の考察 ~

助手:前回は鉄道ファンが忌諱する存在から鉄道趣味というものを考察したわけですが。
博士:少々辛い内容となってしまったのう。
助手:ですので今回は鉄道ファンが好む存在をとりあげてもらえないでしょうか。
博士:うむ。ではこれなんかどうじゃ?


【京急2100形】
1998年に登場した京急のフラッグシップとなる優等列車用車両です。
創立100年と21世紀に向けての意味合いを名前に込めただけあって、130km/hの最高時速をはじめとするスペックはもちろんのこと、内装も無料で乗れることを考えると素晴らしいものです。


助手:なんの変哲もない通勤電車に見えますが。
博士:鉄道マニアに絶大な魅力を放つこの車両のオーラを感じ取れないとは、まだまだ乗り物学徒としての修行が足らんようじゃな。
助手:電車のオーラって・・・カンベンしてください。
博士:これは京浜急行が創立100周年と21世紀への願いを込めて命名した2100形といって、特急の任にあたる京急のフラッグシップじゃ。
助手:この電車が「走ルンです」シリーズの対極にあるわけですか?
博士:まあ2100形は特急用車両だから一概に比較できるものではないが、「コストダウンで高性能」という大まかなコンセプトは同じじゃ。ただ、それへのアプローチが違うのじゃ。
助手:具体的にはどのようなあたりが?
博士:「走ルンです」シリーズはコストダウンを構造や設備の簡素化と大量生産で実現したわけじゃが、2100形はそれを外国製部品で実現したのじゃ。一例をあげると、

・主制御機器はドイツのシーメンス社製
・空気圧縮機もドイツのクノール社製
・蓄電池はフランスのサフト社製
・クロスシートは、ノルウエーのエクネス社製
・モケットはスウェーデンのボーゲサンズ社製


となっておるのじゃ。
助手:まるで万国博覧会ですね。
博士:日本製品は高いのじゃよ。しかし、どれもこだわり抜いた逸品ぞろいじゃぞ。特にジーメンス社のVVVFインバータなどは、作動音が音階を奏でるようになっておる(俗名:ドレミファインバータ(笑))。さすがはサウンドスケープ先進国じゃな。また、このクロスシートは乗客による方向転換は出来ないが、スイッチひとつで反対方向に向けることが出来る。作業員の手間が省けてランニングコストの削減ができるわけじゃな。
助手:コストダウンにも、さりげないこだわりが散りばめられているわけですね。
博士:わかってくれたかね。さらに重要なポイントをあげるなら、この電車に乗るのに、有料の特急券などが不要なことじゃろうな(注:一部の列車は無料ではありません)。
助手:鉄道ファンはみんな貧乏とか?
博士:愚か者。わしは前回「鉄道趣味とは日常のなかに非日常を見出す男のロマン」と言ったじゃろ。
助手:あ、なるほど。そういえば、クロスシートや2ドアという特急的性格でありながらドア近くにつり革があったりするところは、日常生活の延長線上にもあるということですね。
博士:そのとおり。そこが他の私鉄のフラッグシップである豪華特急達と違うところなのじゃ。君が「なんの変哲もない通勤電車に見える」といったのも、おそらく鉄道ファンの心をくすぐるポイントのひとつなのじゃろう。
助手:なぜ京急だけにそんな車両が存在するのでしょう?
博士:京急は関東では珍しくJRとガチンコしているからじゃよ。JRより安価で早く目的地に到達するサービスが染み付いているのじゃ。観光特急の需要も多くないしの。
助手:なるほど。博士の説明で2100形の魅力がなんとなくわかったんですけど・・・
博士:「けど」なんだね?
助手:2100形の魅力って随分と微妙なところにあるものなんだなぁ、と。
博士:日常生活にもささやかなこだわりを持つのが粋人というものじゃ。
助手:粋人というか、繊細というか・・・。
博士:男とはデリケートな生き物なのじゃよ。とりわけ鉄道趣味人はな。



on set : 8/MAY/2005