| 助手: | なんですか?この妙ちくりんなのは?ドイツの飛行機ですな。 |
| 博士: | なんという言い草じゃ、嘆かわしい。これぞ究極の双発レシプロ航空機じゃというのに。 |
| 助手: | マッドサイエンティスト天国、ナチスドイツのお笑い飛行機のひとつではないのですか? |
| 博士: | 笑ってられるのも今のうちじゃ。このドルニエ Do335“プファイル”の最高速度は760km/h。最速のレシプロ航空機の一つじゃ。運動性能もなかなかよく重戦闘機タイプもあるのじゃ。 |
| 助手: | 760km/h!奇抜な外見の割にはやりますね。 |
| 博士: | この前後タンデムのエンジン配置は、前面投影面積が単発機と同じに抑えられるし(被弾回避及び空気抵抗で有利)、仮に一つのエンジンが停止しても主翼の左右にエンジンを配置した双発機のように非対称な飛行状況に陥ることもない、けっこう良いこと尽くめのレイアウトなのじゃ! |
| 助手: | 言われてみれば確かに大柄な双発機の割にコンパクトなレイアウト・・・、レシプロ双発機の欠点を見事に解消している・・・!? |
| 博士: | これこそ「コロンブスの卵」的な発想といえるじゃろう。 |
| 助手: | なぜそれまで誰もやらなかったんですか? |
| 博士: | 前後エンジンの連携が意外と難しかったようじゃの。しかしドルニエ社はこのレイアウトの有用性をよく知っていたのじゃ。ほれ。 |
| 助手: | なるほど。そういえばドルニエ社って飛行艇で有名ですよね。アニメ映画「紅の豚」でもこーゆーのが出てきましたよ。 |
| 博士: | このレイアウトはクラウディウス・ドルニエ教授が1937年に特許を取っている。はじめはパワーも不十分で信頼性も低かったエンジンをカバーするための苦肉の策だったんじゃろう。 |
| 助手: | そうか、海上を飛ぶ機会の多い飛行艇はエンジンが一つだけでは心もとないですからね。 |
| 博士: | そう。しかしエンジンの信頼性が向上することによってその方式は忘れられていた訳じゃがドルニエ社はこの方式を採用し続けていた。
ちなみに十字配置の尾翼もドルニエの特許らしい。
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| 助手: | つまりDo335はジェットのような先行き不透明な先進技術に頼らないで、あえて自信のあるお家芸をフル活用したわけですね。 |
| 博士: | そうじゃの。レシプロ戦闘機技術が行き詰まり、ジェットもロケットモーターもまだまだ・・・、の状況に陥った時、ドルニエ社の出した答えがこのDo335なのじゃ。これまでのレシプロ戦闘機の常識を覆す発明と言っていいじゃろう。 |
| 助手: | おお!、当然このDo335は大活躍したんですよね? |
| 博士: | そうさのう、このDo335で老舗ドルニエは面目躍如・・・といきたいところじゃったのじゃがのう。工場が爆撃で破壊されてしまったのじゃ。なので量産もされなかったし実戦にも参加しておらん。まあ戦争の末期も末期じゃったしの。 |
| 助手: | ・・・だめじゃん。せっかくのお家芸ならもっと早くこの飛行機を作れば良かったのに。 |
| 博士: | ドルニエにはこの飛行機の発想がずいぶん前からあって試験機などを飛ばしていたらしいんじゃが、大型機の実績が大きかったドルニエに軍が「お前らは余計なこと考えずに爆撃機作っとれ」ということだったらしい。 |
| 助手: | 軍や官僚が気づいたときには戦争も末期だったと。結局、優れた技術も社会的/政治的環境次第ってことですね~。 |
| 博士: | まあ自らの信念を貫いたドルニエ社に乾杯じゃ。戦後も残ったしの。 |