●XB-70 バルキリー
 ~ 純白の死の女神 ~




助手:美しいですね。
博士:そうじゃな。個人的には人類の生み出しあらゆる造形の中でもトップクラスだとおもうんじゃが。
助手:美しいだけでなく、この大きさ(全長56.39m、全幅32m、自重68.05t )で上昇限度22,100m、航続距離12,200km、そしてなんといっても最高速度マッハ3.08。コンコルドもぶっちぎり!
博士:機能美のもっともたるものかもしれん。核爆弾によって敵を完全に破壊し殺戮するという・・・。
助手:この美しい「もの」が死の女神だというのは皮肉だなぁ。
博士:人間の罪深さを体現した芸術作品じゃな。使われないまま博物館で眠ることになったのは人間の英知がそうさせたのだと願わずにはいられん(これは試作機だけど)。
助手:けれど、僕は、いつか人類を滅ぼすものは、このような美しいなにかだろうって気がします。
博士:希望も見てみたまえ、理由はともあれ、ライト兄弟による動力付き飛行機の初飛行からわずか半世紀ちょいで人類はこの究極の航空機をつくりあげたのじゃ。キミも若いのじゃから、ワシみたいなジジイより前向きになってもらいたいもんじゃの。




ノースアメリカン XB-70バルキリー爆撃機
  大陸弾道ミサイル(ICBN)が現実化するまで、アメリカでは敵国に核爆弾を落とすための方法が幾つも立案されました。
 広島や長崎の悲劇と同じように、爆撃機でそれを行う方法が有力でしたが、そのために様々なタイプの爆撃機を考えだしました。
 このバルキリーは、敵のミサイルも迎撃機も届かない高空を、敵が対応できないような猛スピードで進入、かつ核爆発の被害を受けずに離脱することができる超高空・超高速性能を持った試作爆撃機です。(1964年に完成)
 “バルキリー”とはケルト神話の闘いの女神“ワルキューレ”から名付けられました。

 超高空、超音速、そしてアラスカからモスクワを往復する航続距離性能を実現するための大きく鶴のように長い機体。
 大きな機体の積荷は、4人の乗員、沢山の燃料、そして核爆弾・・・。
 それらを載せた大きな機体をマッハ3以上にもっていくことのできる6基の強力なエンジン。
 自らが発生した衝撃波に“乗って”飛ぶという、いわゆる“ウェイブ・ライダー”のための巨大なデルタ・ウイング。
 この翼はあらうる条件下でも衝撃波を逃さないために両端を最大65度まで下向きに折り曲げることができます(写真参照)。
 高速時の翼を下げた姿は龍のようにも見えます。
 しかもこの軍用機らしからぬ純白の塗装。
 これは核爆弾投下後の閃光から機体を保護するためのものです。
 これが迷彩塗装ならばまだ軍用機として禍々しいものに見えたかもしれませんが・・・。
 2機建造されましたが、ICBNの優位性により計画は頓挫、NASAでSST研究用機体として使われましたが、SST計画も頓挫。
 結局1機は事故で損失、のこり1機は空軍博物館(ライトパターソン空軍基地内)で眠っています。
 人類の愚かさと素晴らしさ、両方を乗せて飛ぶあまりにも美しすぎる死の翼です。





ON SET : 3/MAR/2003
LAST MODIFIED : 15/MAY/2005