| カワサキ XANTHUS | |
~ 和製ストリートファイター伝説 ~ |
助手: | 博士、バイクの2008年における販売台数が1982年と比べて1/6まで減少したそうです。(社団法人日本自動車工業会(JAMA)による) |
博士: | その数値には原付も入っておる点が要注意じゃが、まあ売れなくなっていることは確かじゃな。 |
助手: | 251cc以上のバイクにいたっては、07~08年にかけて販売された総台数のなんと1/4がハーレーダビッドソン(以下ハーレー)だそうですよ。 |
博士: | いつになく深刻じゃな。 |
助手: | だって、2007年のMotoGPクラス(※1)でも、それまでの33年間ずっと日本のメーカーが優勝してきたのに、ドゥカティに王座を明け渡したじゃないですか。 |
博士: | まあ永遠に勝ち続けることなんてないのじゃよ。栄枯必衰じゃ。 |
助手: | しかし、私たち、乗り物学徒として、斜陽の国内バイクメーカーになにか手助けできることはないのでしょうか? |
博士: | 君が心配するほど、ビジネスの世界で生きている彼らは甘くない。心配無用じゃ。しかし、確かに90年代における国内バイクメーカーの失敗を今でもひきずっている感はある。 |
助手: | 失敗、ですか? |
博士: | そうじゃ、それを再認識しておく必要があるかの。では、こいつを知っておるかね? |
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「疾風」と書いて「かぜ」、「特攻」と書いて「ぶっこみ」と読ませる拓ちゃんとか乗ってましたね。 |
助手: | 大ヒット作、ゼファーじゃないですか。レーサーレプリカブームについていけず、販売不振にあえいでいたカワサキを救った。 |
博士: | そうじゃ、1990年代の「ネイキッドブーム」の先鞭をつけたバイクじゃ。 |
助手: | はて、これが日本バイクメーカーの失敗、なんですか? |
博士: | そう先を急ぐな。1980年代は技術の進歩に対して、無邪気に人々が夢を見られた最後の時代じゃった。 |
助手: | 音楽でもテクノブームとかありましたもんね。 |
博士: | 国産バイクたちは海外でも技術で海外メーカーを圧倒した。それを反映したのがレーサーレプリカブームじゃ。 |
助手: | けれど、「速いだけがバイクじゃない」ということで、1989年のゼファーにはじまったのが1990年代前半のネイキッドブームでしたよね。 |
博士: | うむ。しかし、日本ではネイキッドブームが落ち着いた頃、ヨーロッパでは別の方向への萌芽があったのじゃ。 |
助手: | それは? |
博士: | 後に「ストリートファイター系」と呼ばれるバイクが1993年に出現したのじゃ。 |
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レーシーなスーパーバイクのイメージであったドゥカティが1993年に発売したモデル。
デザインはミゲール・A・ガルーツィ。
当時の排気量は900cc。
スーパーバイクの足回りとフレームに空冷エンジンとバーハンドルをつけたスタイルは、当時としては異形のものであった。
しかし、フレンドリーなドカティとして大人気を博し、ドゥカティの販売を支えるモデルとなる。
そして2008年のフルモデルチェンジまで進化し続けた。
助手: | デザインとしては、現代ヨーロッパにおいて主流になっているものの元祖みたいなバイクですね。 |
博士: | そうじゃ。1993年には既に登場していたのじゃ。ゼファーシリーズは1970年代のZシリーズを真似たものじゃった。ネイキッドブームはその底にある姿勢として後ろ向きのものだったのじゃ。 |
助手: | しかし、ヨーロッパでは新しい価値が生まれていた、というわけですか。 |
博士: | そうじゃな。ストリートファイターは、基本的にスーパースポーツ(以下SS)のネイキッド版というものじゃ。過去を見ているものではない。SSの性能を気軽に、というものなのじゃ! |
助手: | なぜ、日本はそれに乗り遅れたのでしょう。 |
博士: | うむ、それを考えるにあたり、忘れられないバイクがあるのじゃ。 |
助手: | それは? |
博士: | うむ、1992年に発売された、まさに「和製ストリートファイター」と呼ぶべきものじゃった・・・。 |
助手: | おぉ! |
博士: | しかも、カワサキ製じゃ。ネイキッドブームの先をカワサキはちゃんと考えていたのじゃ! |
助手: | はやく教えてください。そのバイクの名を! |
博士: | これじゃー! |
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ホンダCB400スーパーフォアなどのライバルに対抗するため、カワサキが提示した“新しいスポーツモデル”。 |
博士: | 0-100km/hまでの加速であるならリッタークラスのSSに負けない。ライトチューンするだけでレーシングマシン並のハイスペックになるという、まさに和製ストリートファイター! |
助手: | モノサスペンション、異形ヘッドライト、ラジエーター脇の飾りガードなんてなんてところもストリートファイターっぽいですね。 |
博士: | そうじゃろう。SSベースではないものの、これこそモンスターやブルターレの先を行ったストリートファイターと呼んでよいのじゃなかろうか? |
助手: | すっげー! このザンザスはもちろん売れたんですよね? |
博士: | ・・・いや、まったく。 |
助手: | え? |
博士: | 数千台しか売れなかったらしいの。 |
助手: | えぇ! |
博士: | わずか3年で販売終了。 |
助手: | なぜです? |
博士: | 理由は簡単じゃよ。モンスターやブルターレと比べて、このバイク、美しいかね? |
助手: | うっ、お世辞にも・・・。 |
博士: | 結局、デザインも含めてじゃが、大人が欲しいと思える価値を創造できなかったのが問題だと思うんじゃ。たとえモンスターやブルターレとは価格対象者層が違っていてもじゃ。 |
助手: | う~ん。ライバル車にスペック上で勝っても、それだけじゃレプリカブームと同じですものね。 |
博士: | じゃろ。ネイキッドブームに反応した世代の消費者としての成長に、国内メーカーは対応できていなかったと思うんじゃ。 |
助手: | それが博士の思う失敗ですね。 |
博士: | そうじゃ、性能に加えて、ドカティやBMWとは違う大人が大枚を払う価値、それを創造するべきじゃた。 |
助手: | なるほど、いま外国車が売れる理由がわかった気がします。 |
博士: | バイクとはロマンの乗り物なのじゃよ。ユーザーの人生になにをプラスできるか、そこから考えることが重要なのじゃ。 |
助手: | カスタムもイベントもファッションも提供するハーレーの一人勝ち状態はそういう理由があるわけですね。 |
博士: | まあわしはハーレーのことはよく知らんがの。 |
助手: | なんですか、その投げやりな態度? |
博士: | 個人的にアメリカンには興味ないんじゃよ。経済学のほうでハーレーのマーケティングについては研究されているからそっちに任すとしよう。 |
助手: | ・・・(バイクを売るには、こういう心理を研究しないといけないんだな) |
博士: | なにか言ったかね? |
助手: | いえ、何も。次いってみましょー! |
※1 | 世界最高峰のバイクレース。 |
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