超短編集              

BIKE in the Summer
過去に「10%なら自転車で」なんていう歌詞で唄っていたっけ。今は、リクエストがあっても唄えないけれど・・・・・・。その当時は、バイクに乗っていて「おいでよ!」の一言で友人の待つ群馬県のキャンプ場へ翌朝走ったものでした。体に、風の暑さや町の匂いを感じながら。バイク乗りたちは、二本指で擦れ違いざまにあいさつを送ってくれます。もちろんヘルメットはかぶっているのだけど、照れながらこちらもお返し。信号待ちでは、トラックのおじさんから声をかけられたりして、小説の世界でした。夏のいい思い出です。いま、エリミネーターは退屈そうに眠っています。
                             HANABI
秋というのか、寒さがまだ,物足りなさを募らせている。青く澄んだ空を遠く見つめていると花火が無償に恋しくなる。何色が気にいってた?問い掛けてみる。ドンドン花開く形や音に気を取られうっかりしていたみたい。確かあの夏は、青色だった・・・・。次の夏は緑色・・・・。今年の夏は、そう、白だった。畑から夜空に上る尾を辿り、ダンボールの上に置いたおしりに重心をかけながらおでこが後へゆっくりと移動する。黒い空にいっぱいに開いたそのとき、「あっ、この色・・・・」そう思っていた。何色ではなく、この色として。前の人がビールをこぼして慌てた。すうっと、迷子のアナウンスの声が入ってきた。
                          TA NA BA TA
一年に一度だけ逢える。(雲の上は雨など関係ないのだろうけれど・・・・。)そして、さようなら。何年経っても、この繰り返し。これを究極のとか、悲恋のとか、なんて考えるとこの日はないほうがいい。「また、逢おうね」みたいな感じの方がずっといい。そのほうが、ずっとしあわせな気持になれる。一年たっぷりのよしなしごとをどれだけ早口で伝えても限られた時間。言葉ではなく伝えられるもの?・・・・・。笑顔。相手のしあわせな笑顔。これで、一年でも、二年でも待っていられる。いつまでも、ふたりが笑顔で逢_えること。いつか一人でこの日を迎える時が来ても、その笑顔は決して記憶から消えることはないのだろう。私事の願いよりも、あなたのしあわせを願い_たい。
MI ZU WA RI
完璧じゃない月の、なんとも懐かしいような光に包まれながら、リクライニングチェアーにゆっくりと身を委ねてみる。かすかに揺れるカーテンの向こうから波のように聴こえるメロディー。サイドテーブルには、ガラスの花器が光をもてあますかのようにテーブル上を躍らせている。花弁の重みに耐えかねた茎、淡いピンクのガーベラが2輪揺らいでみえる。この静けさを壊さぬように氷はグラスを滑り冷たさを運ぶ。ゆるやかに体の奥にぬくもりを伝えながら。こんな夜は、お銚子よりもワインよりも、セピアにほんのり酔ってみるのもいい。
ワイパー
それは、いつも規則正しく、時に戦っているかのように激しく視界に揺れる。信号の明かりをぼんやりと、夜のネオンも混ぜてしまうように、煌びやかな別の世界を創りあげる。こんな時、きまって流してしまう曲がある。まったく、雨とは無縁のアコースティックサウンドのインスト・・・・・。「あの頃」という擦り切れたテープから、いつまでも飽きる事のない繰り返しが続く。もう戻らない時間と共に郊外を抜けた。
月光
まだ、ひんやりと夜は冷たい。昼間ののびやかな陽射しを夢の世界へと移す。五惑星の悪戯・・・。それぞれに空虚な心に愛を埋めている。誰かと一緒に、なんの迷いも無く、すべてがここにあるように。深い深い陶酔の中で永久を誓っていてもきまって月の輝きは報せにくる、さよならの時を・・・。月は、なにも知らないよと言いたげに姿を隠した。
Black Beer
いつか、この小さな紳士と、黒ビールを傾けながら・・・・・・・・・・・・。
この癖のある味を、いつ覚えたのだろう。
あの店は、まだあるのだろうか。
ある映画のワンシーンが浮ぶ
アイルランド人の集うバーのカウンターで
有志達が高く壜をあげた・・・・・・・・。
同じ、黒ビール。
Favorite
そのディスクは、黒人の男女が微笑んでいるジャケット。
突然、彼が立ち寄った輸入レコード屋。
手渡されたオレンジ色の濃いビニールの袋、その中に入っていた。
レゲイ?ポップス?ラブバラードだった。
その時は、気づかなかった・・・・。
いま、どうしているのだろう。どこまで薄らいでしまうのだろうか、この記憶。
だけど、たとえ僅かでも思い出は、この1枚のCDのタイトルのように
続いているものなのかもしれない・・・。
EndlessLove。