視覚と触覚
視覚は自己と他者(対象)をより区別して認識させる傾向があるのに対して、
触覚は容易にその二者を反転させてしまうという。
全身の触覚でころがるように生きる虫がいる。彼らはその肌触りで仲間との連絡をとる。よって仲間とは常に距離を離してはならない。
肌触りによる仲間との接触は、伝えているのが自分なのか相手なのか時としてわからなくなる。
あるいは例えば苦しんでいるのが相手なのか、それとも自分なのか、それも定かではない。
視覚を駆使し、それが行動の基盤となる虫がいる。彼らはできるだけ見通しの良いところに自らを運ぶ。
同類の動きはこの場合それほど問題にならないどころか、
多くの場合同類とは違う方向に向かうことが、ひときわ高い位置をキープすることにつながってくる。
触覚をたよる虫のほうが「種」全体としては「大きな虫」となる可能性を持っているだろう。
しかし、虫たちはここのところずいぶんとそのなわばりというものを崩してきた。
隣にいるのが視覚をもった虫だということが、どんな意味を持つのか。当初触覚志向の虫はとまどう。
そして距離がなくなれば、種も混ざり合うことになる。
よってその子孫は、当然視覚と触覚の両者を併せ持った存在となる。
もはやいずれかの種だというわけではない。