”ルールもともだちも 約束もみんな捨てて・・・”
N.S.P./ 面影橋
「N.S.P.」は、「New Sadistic Pink」の略称。なんでも地元に Sadistic Pinkというバンドがあって、それに対抗してつけられた名だということを聞いたことがある。十代のころから活動を続けたバンドで、数々のヒット曲を持つ。天野滋という一流のメロディメーカーは心にしみる唄を作らせたら天下一だ。コッキーポップ、なんていう懐かしい番組のレギュラーだったバンドである。
この曲は彼らの活動歴では後期のもの。恋人(または夫か)がいる女性を愛してしまった男性の気持ちを綴った詞になっている。なにもかも捨てて初めて成就する愛があるとしたら悲しいものかもしれない。が、「愛」には違いないんだろうな、と漠然と感じる。苦しみも愛、なんていうのは外野の声でしかないだろうな。
”就職が決まって髪を切ってきたとき
もう若くないさと きみに言い訳したね・・・”
いちご白書をもう一度 / バンバン
わたしが初めてアコーティスティックギターを手にしたとき、弾いてみたいと思った曲。まだ中学生で、松任谷由美さんの曲であるとか、どういう意味の歌詞であるかとかはわからないまま、それでも実に悲しげで美しい曲だと感じた。学生運動を描いた「いちご白書」のことを取り上げた、学生運動に関わった男女の唄だとわかったのはそれから5年ほどあとのことだった。
この曲で印象深いのはイントロとエンディング部で聞くことができるリードギターのメロディ。70年代のニューミュジック系の唄によく登場する、ややひずみのかかったギターのメロディは、「遠くで汽笛を聞きながら」や「針葉樹」なんて曲に共通するものといえるだろう。
”両手をあわせた傍らで 揺れてるれんげ草・・・”
僕にまかせてください / クラフト
恋人の亡き母のお墓参りで、娘のしあわせを誓う男性を描いた唄で、テレビドラマの主題歌であった。作詞作曲はさだまさしさん。彼はもともとこの唄に「彼岸過ぎ迄」というタイトルをつける予定だった、という話を聞いたことがある。また、このシングル盤のB面曲「紫陽花」も彼の手によるものである。
出だしからサビにかけてののゆっくりとしたメロディの抑揚は心に残る。驚くことにたいていのカラオケにこの曲がエントリーされている。歌い出すとわかるが、キーの高さにあらためて驚かされるのである。
クラフトは男性ばかり5人組のグループ。シングルカットされた曲はほとんどが「僕にまかせてください」のようなメロウな曲が多かったのに対し、コンサートではウエストコーストロックのようなにぎやかな曲を多く演奏していたそうだ。
クラフトのベスト盤(CD)が発売されているのでそちらを聞くのをおすすめする。
”かげろう揺れる 名もない駅に・・・”
幻の人 / 茶木 みやこ
金田一耕助の推理劇場(毎日/TBS系列)の主題歌としてヒットしたこの曲は、名のとおり幻想的な歌詞が魅力だった。ファルセット気味な茶木さんのボーカルもそんな幻想的な雰囲気をさらに助長している。
茶木さんはピンク・ピクルスのメンバーとして活動の後にソロアーティストへ転向、このヒット曲を生み出した。現在も関西を中心に活動を続けておられ、あの魅力的なボーカルは健在である。
若き日のゴダイゴのメンバーがバックを努めた彼女のアルバム「レインボーチェイサー」にもこの曲は収められているが、シングル盤とはテイクが違い、ジャズのアレンジをきかせたスローバラードに仕上がっており、こちらも素晴らしい出来だ。
”ああ、青春は 燃える かげろうか・・・”
あ〃 青春 / トランザム
こちらもドラマの主題歌としてヒットした曲。松田優作さん主演の「俺たちの勲章」の挿入歌であった。かぞえ唄の歌詞にのせてながれる郷愁的なメロディはまさに青春時代に引き戻してくれる力がある。
トランザムはチト河内さんや石間秀樹さんをメンバーとした、いわゆるスーパーグループであった。今でもコンサートなど一度見てみたいと思わせるグループである。
この曲は吉田拓郎さんの手によるものである。彼が自ら唄うバージョンもあるので聞き比べると面白いだろう。
”最終電車で きみにさよなら・・・”
東京 / マイペース
シャッフルのかかったユニークなリズムにのって唄われた歌詞は、彼女の住む東京へよくでかけたよ、という思い出をつづったもの。あこがれの君が住む街は東京で、その大きな街は彼女への思いと相まって「花の都」と表現されている。きっと彼女が住む街は、どんな街でも自分にとっては「花の都」なんだろう。そして、最終電車で帰ることの寂しいこと・・・。
マイペースは、結局ヒット曲はこの一曲だけ。3人組の個性的なアーティストで、アルバムもリリースしていた。また、この曲はムードコーラスグループの大御所、敏いとうとハッピー&ブルーにカバー(?)され、こちらもヒット曲となった。カラオケにはこちらのバージョンがエントリーされていたりする。
”風に震える オレンジ色の
枯れ葉の舞い散る 停車場で・・・”
20歳のめぐり逢い / シグナル
2本のアコースティックギターの響きが美しい曲。自ら命を絶とうとした女性との出会いを描いた唄である。自分の「やさしさ」で彼女のこころの傷を癒そうとする男性の姿は、みんなには女々しく映るだろうか。わたしは、男性にはたくましさ以上にやさしさが必要だと思う。相手のことをやさしく思いやるこころほど尊いものはないと思う。この唄に唄われた男性も、ひょっとしたら過去に自ら命を絶とうと思ったことがあるのかしら、と考えたりもする。
シグナルは関西出身の3人組。後には「BGMはため息で」などのヒット曲も多く残している。
”人生はめぐりめぐり 立ち止まろうとはしない・・・”
時の流れに / 中村 行延
「時の流れ」が時にはいたたまれなくなるくらい、悲しくなることはないだろうか。このまま時が止まればいいのに、とか、こんなにも時間が経ってしまったのか、とか。時間は誰にでも平等に過ぎてゆくのだけれど、「今」を大切にするなんて心がけが出来ないまま過ぎていく毎日・・・。
中村行延さんは京都出身のソングライター。この曲はアリスの堀内孝雄さんとの合作で、当然堀内さんのヴァージョンも存在するし、ブラザース・フォアも世界歌謡祭において何故かカバーしている。。
昔の恋人と過ごした街に戻った男性の心情をつづった歌詞は、青春の日々をおくった街と、かつて好きであった女性への想いをオーバーラップさせ、そこに「時の流れ」を感じさせるものとなっている。そして、「時の流れに負けない力を、愛を」と語りかける部分では妙に納得してしまうのである。
”かけがえのないもの 失くしたあとは
どんなに似たものも かわれはしない・・・”
ゆうこ / 村下 孝蔵
親や兄弟や子供、恋人や友達、自分が一人で生きているわけではない証を失ったときの悲しみは大きい。それにかわるものなど見つかるはずがないと思うから。かけがえのないものはこの世に二つとないことを知っているから。村下孝蔵さんの、ふりしぼるようなメロディはどんな世代の人のこころにも容易に染み込める魔術をもっている。そしてかけがえのないこのアーティストを失くしてしまった我々は、どんなに似たものも変わることが出来ない悲しみを知っている。
”椅子の上に重ねた 古い新聞の中に
今は亡き母さんと 同じ名前がありました・・・”
たまの休みに / クラフト
いそがしく過ぎていく毎日、ぽっかりと時間があいたときに考える亡き母のこと。人はみな母親には頭が上がらないものです。大きく強くそしてやさしい存在。そんな人から自分が生まれてきたと。
メロディの美しさと歌詞の美しさがとても印象的なクラフトの曲。かれらの作品の中では私はこの曲が一番好きなのです。
”歳と共に誰もが子供に帰ってゆくと
人は云うけれど それは多分、嘘だ・・・”
療養所 (サナトリウム) / さだ まさし
療養所で見るさまざまな人生。なかには燃え尽きてしまう命も。療養所で会ったおばあさんのことを想った歌詞は、おばあちゃん子だった私にはなんだか悲しくもあり共感も出来る。お年寄りは年老いて子供のように小さくなり・・・と皆が言うのはウソだというくだりはドキッとする。そして続きは「思い通りにとべない心と 動かぬ手足 抱きしめて燃え残る夢達・・・」 人の命が尽きる瞬間は、それくらい尊厳に満ちているはずなのだ。