秘密基地「道楽庵」
雑 記 帳
マイ・ファースト・ヒーロー『仮面ライダー』は永遠に…
漫画家石森章太郎が生み出した「仮面ライダー」は、私が憧れた最初のヒーローだったように思う。仮面ライダー以前にもウルトラマン、ウルトラセブン、マグマ大使、ジャイアントロボといった特撮ヒーローは存在したけれども、彼らには負の影というものが無く、むしろ陰りの無い明るさこそがヒーローの条件とされていたようなふしがある。初代仮面ライダーは、悪の秘密結社ショッカーによって、無理矢理拉致され、理不尽にも異形の改造人間にされてしまった苦悩が表現されていた。
特に、撮影中のバイク事故で、仮面ライダーを途中で降板せざるを得なくなった藤岡弘が演じた本郷(猛)ライダー(旧1号ライダー)編が、そういった要素が色濃く現れていて、放送開始当時、幼稚園児であった私には少し不気味で、怖い雰囲気に思えたものだ。
記念すべき第1話「怪奇蜘蛛男」は、1971年4月3日に放映された。子供向けの特撮番組であるはずなのに、クモ男の名前はフルに漢字が使われているところが、不親切な気がする。ただ、漢字で「蜘蛛」と書いてあると、漢字が読めない子供であっても、その不気味な雰囲気は伝わってくる。ちなみに46歳になった今でも、「蜘蛛」という漢字を何も見ずに書けと言われても、書けない。第2話も「恐怖蝙蝠男」とコウモリ男を漢字表記している。
「仮面ライダー」の原点である第1話のあらすじは、以下のとおりである。
城北大学生化学教室きっての秀才でバイク・レーサーの本郷猛(藤岡弘)が、立花藤兵衛(小林昭二)と共に、バイク・レースの練習でタイム・トライアルをしていると、謎の黒いレオタードに網タイツの女性ライダー軍団が襲ってくる。彼女達の攻撃をかわした本郷は、逆に彼女達を追跡するが、霧の中でクモの糸に絡めとられ、意識を失う。意識を失っている間に、悪の秘密結社ショッカーに拉致され、改造人間にされてしまう。ショッカーは知能指数600以上、スポーツ万能の人間を改造人間にし、意のままに動かす事によって、世界征服しようと企んでいた。
先に拉致されていた緑川博士の指示によって、本郷は脳を改造される前にショッカー基地を脱出する。バイクで逃走中、ショッカーの怪人クモ男と戦闘員に襲われ、本郷は谷底に落ちる。緑川博士が殺される寸前に、仮面ライダーに変身した本郷が再び現れ、緑川博士を救出する。
ショッカーの魔の手は、緑川博士の一人娘ルリ子(真樹千恵子)にも伸びるが、立花藤兵衛と野原ひろみ(島田陽子)の機転により、危機を脱し、緑川博士と本郷が隠れている埠頭の倉庫に向かう。ようやく倉庫に到着したルリ子は、クモ男の蜘蛛の糸で首を絞められた緑川博士を本郷が殺したと誤解してしまう。
今度はルリ子がクモ男にさらわれ、本郷はバイク(サイクロン号)でライダー・ベルトに風圧を受け、仮面ライダーに変身し、クモ男を追跡する。次々に戦闘員を倒し、最後はクモ男にライダー・キックを見舞い、ルリ子を無事救出する。ルリ子を立花に託した本郷は一人バイクで疾走する。
仮面ライダーに変身する文武両道の青年本郷猛を演じた主演の藤岡弘が撮影中のバイク事故の為、負傷・入院するというアクシデントにより、「仮面ライダー」は放映開始前に放映中止にもなりかねない危機を迎える。
この危機を乗り越える為、急遽、佐々木剛演じる一文字隼人が変身する仮面ライダー2号が登場する事になる。一文字隼人のキャラクターは本郷猛とは逆に明るい三枚目的な存在で、ここでは改造人間の苦悩は置き去りにされ、ひたすら明るく優しく強い従来型の特撮ヒーローに路線変更されてしまう。
佐々木剛が始めて変身ポーズをとって、自らの意志によって能動的に仮面ライダーに変身し、彼がいわゆる「変身ブーム」を巻き起こし、仮面ライダー人気を不動のものにした貢献者である事は紛れも無い事実であり、彼が2号ライダーを引き継いだからこそ、藤岡弘の再起後、1号ライダーの再登場となり、その後、「仮面ライダーV3」、「仮面ライダーX」、「仮面ライダーアマゾン」、「仮面ライダーストロンガー」…、更に平成ライダー・シリーズへと続いていく事になるわけだが、私が好きだった苦悩するヒーローという影の部分は完全に封印されてしまった。
ダブルライダーとして本郷ライダーの助っ人参戦を経て、再改造された新1号ライダーとして、藤岡弘が本格復帰するのだが、原点回帰ではなく、2号ライダーの明るいヒーロー路線を引き継いでしまった。誠に残念な事である。
私は個人的には平成ライダー・シリーズは、様々な世界観やキャラクター設定のバリエーションで番組が作られており、「仮面ライダー」の冠を外してしまった方が良いのではないかと思っている。あえて「仮面ライダー」という冠のひと括りにしてしまうのが、何か不自然な気がする。
だから、私にとっての仮面ライダーは、誰が何と言おうと旧1号ライダーであり、番組存続の為の苦肉の策である2号ライダー→新1号ライダーへの路線変更は私にとっては納得しがたい流れとしか言いようがないわけである。
旧1号ライダーのシリーズ全13話の中で、第11話「吸血怪人ゲバコンドル」、第12話「殺人ヤモゲラス」、第13話「トカゲロンと怪人大軍団」の3話の中には、本郷猛は登場しない。VTRで出演シーンが挿入されているだけである。変身後の仮面ライダーの声は、ショッカーの首領の声を演じていた声優の納谷吾朗の実弟で声優の納谷六朗が担当したが、ライダーの声がいつもと違って、子供心に不思議に思ったのを憶えている。
仮面ライダーのネーミングは、マスクを被ったバイク乗りという意味であるが、ショッカーのネーミング・パターンからいくと不自然である。「仮面ライダー」初期のショッカーのネーミング・パターンはクモの改造人間は「クモ男」、コウモリの改造人間は「コウモリ男」、サソリの改造人間は「サソリ男」であり、以下「カマキリ男」、「コブラ男」、「ハチ女」等々…、ならば、バッタをモチーフとした改造人間である仮面ライダーであれば「バッタ男」のはずである。
まぁ、ヒーローの名前が「バッタ男」では、ヒットする物もしなくなるだろうと思う。「バッタマン」なら、アメリカン・コミックから生まれたコウモリをモチーフにしたヒーロー「バットマン」のようにヒットするだろうか?しないだろうなぁ?
関西では、偽ブランド商品とか偽物を、「パッチモン」とか「バッタモン」と呼ぶが、「バッタ男」や「バッタマン」では「バッタモン」同様に、胡散臭さ炸裂である。
余談ではあるが、FBI捜査官滝和也役で出演していた千葉治郎を2号ライダーに起用しようとするプランもあったようだが、彼の実兄で俳優の千葉真一の反対により、そのプランはボツになったそうである。
佐々木剛も、同じ俳優として藤岡弘の役を奪う形になる後任をなかなか引き受けたがらなかったという。だが、結果的には彼が後任を引き受けてくれたからこそ、「仮面ライダー」が世代を超越したテレビ史に残る変身ヒーローとしての地位を確立したのは紛れも無い事実であり、もし仮に彼が後任を固辞し、番組自体が打ち切られていたら、V3以降のシリーズ化は無かったのであり、非常に複雑な思いである。