秘密基地「道楽庵」
雑 記 帳


キミはB級アクション映画『エクスタミネーター』を知っているか?


 小さな子供であっても、男の子はオモチャの光線銃を持って怪獣ゴッコ、女の子はママレンジ(オモチャの調理器具)でママゴトと、男女の嗜好は生まれながらに違うもののようだ。
 私も銀玉鉄砲やモデルガンとか、オモチャの鉄砲を片手に刑事ドラマのマネをして、野山を駆け回ったものだ。
 私の中学生の頃のモデルガンは現在のBB弾を発射できるエアガンとは異なり、弾玉は飛び出さず、キャップ式の火薬をダミーの銃弾にセットして、パン!パン!と音が鳴るような物が主流で、相手に着弾、命中したかどうかは、相手の気分しだいという牧歌的な時代だった。
 弾丸が出るエアガンもあるにはあったが、BB弾ではなく「つづみ弾」と呼ばれるてるてる坊主のような形の柔らかい弾が飛び出すような物で、風が吹くと弾道が曲がるようなオモチャ然とした代物で、リアリティ面を重視するモデルガンの方が主流だったように思う。
 クリント・イーストウッドの映画「ダーティ・ハリー」、スティーブ・マックイーンの映画「ブリット」や刑事ドラマ「太陽にほえろ!」、「大都会」シリーズ、「西部警察」、「大追跡」、アニメ「ルパン三世」、漫画「ドーベルマン刑事」、大藪晴彦のハードボイルド小説「蘇える金狼」、「野獣死すべし」なんかの影響で、銃器の知識も増えていき、中でも「ダーティ・ハリー」の主役であるハリー・キャラハン刑事が使用するスミス&ウェッソン(S&W)M29・44マグナムという大型拳銃に少年達は胸をときめかせたものだった。

 1979年12月に日本で公開され、当時無名だった主演俳優のメル・ギブソンをブレイクさせたアクション映画「マッドマックス」の公開から丁度1年後の1980年12月に日本で公開されたB級アクション映画が「エクスタミネーター」である。
 「マッドマックス」は近未来が舞台で、警察官が同僚の警察官や妻子を暴走族に殺され、復讐するというストーリーであったのに対し、「エクスタミネーター」はベトナム戦争の帰還兵が現代のニューヨークの街で街のチンピラに親友を半殺しにされ、その復讐をキッカケに街の害虫共を駆除するというストーリーで、どうも映画の宣伝方法として、「マッドマックス」のヒットにあやかろうというような意図が見え隠れする。
 ベトナム戦争の帰還兵とニューヨークという設定は、1976年公開のマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の「タクシードライバー」との共通点が見られ、ニューヨークで街のチンピラに妻を殺され、娘をレイプの上、廃人にされた復讐をし、自警市民となって街の犯罪者を始末する1974年公開のマイケル・ウィナー監督、チャールズ・ブロンソン主演の「狼よさらば」との共通点も見られる。
 1982年12月に日本で公開されたシルヴェスター・スタローンの映画「ランボー」もベトナム戦争の帰還兵だったので、アメリカ映画においては、ベトナム戦争の帰還兵、大都会ニューヨークでの犯罪、復讐、自警市民というのは、何度と無く使いまわされているモチーフと言えるだろう。

 2012年12月にもアメリカのコネチカット州の小学校で銃乱射事件が起きた。
 当然、銃規制の声も上がるが、逆に政治的な圧力団体でもある全米ライフル協会は銃を装備した警備員を小学校に配置すべきと主張していると言う。
 日本では到底考えられない考え方だが、未開の大陸を自分達の手で開拓していき、自分で自分の身を守らないと生きていけなかった歴史的な背景を持つアメリカでは、自分の銃を捨てる事は銃を持つ敵に殺されるという事に繋がるという認識を捨てる事は困難な事なのだと思う。
 アメリカが世界に冠たる軍事大国になってしまったのは、自分の身は自分で守らなければ、誰も助けてくれないという社会が、そのまま大きくなってしまったという事ではないか?

エクスタミネーター この映画「エクスタミネーター」の主人公ジョン(ロバート・ギンティ)は、ベトナム戦争時に捕虜になったが戦友のマイケル(スティーヴ・ジェームズ)の機転で地獄の戦場から逃げ延びる。
 ある日、ニューヨークの市場で働くジョンは、街のチンピラ達が市場の倉庫から缶ビールを盗み出そうとしている現場に遭遇するが、チンピラ達に捕まった所を再びマイケルに助けられる。その後、マイケルは一人でいる時にチンピラ達の報復を受け、廃人にされてしまう。
 ジョンはマイケルの敵討ちをし、悪徳精肉業者のマフィアのボスをミンチにしたり、娼婦の身体にハンダゴテで傷をつけた変態市会議員を撃ち殺したり、無抵抗な老婆から略奪したチンピラ達を始末していく。 
 街の悪人達を始末する闇の処刑人エクスタミネーターをヒーロー扱いする風潮に危機感を覚えた政府の要人は、大統領選挙への影響を危惧し、CIAにエクスタミネーターの抹殺を指示する。
 マイケルの病室を訪れたジョンは、マイケルの希望を受け入れ、彼の生命維持装置を切ってしまう。
 たまたまマイケルの入院先の病院の女医メーガン(サマンサ・エッガー)と空き病室にしけ込んでいたニューヨーク市警のダルトン刑事(クリストファー・ジョージ)は、ジョンとすれ違い、ジーンズのチャックが開いている事を指摘された後、直感的にマイケルの生命維持装置を切ったのがジョンであると気づく。
 ダルトン刑事は、死んだマイケルがベトナム戦争時代にいた部隊にいた者と殺人現場に残されていたハンティング・ブーツの購入者リストからジョンがエクスタミネーターである事を割り出し、捜査員を総動員して、彼の逮捕に向かう。
 自分のアパートで警察が待ち伏せをしている事を察知したジョンは、自室に電話し、ダルトン刑事を港のクレーンに呼び出し、威嚇はするものの自分の銃を差し出して投降しようとした所、CIAに狙撃され、ダルトン刑事と共に脱出しようとするが、ダルトン刑事はジョンだけを逃がそうと、援護射撃を申し出る。
 再度、銃撃を受け、クレーンから海に落下したジョンだが、実は防弾チョッキを着ていた為、海岸に辿りつく。

 DVDの特典映像のジェームズ・グリッケンハウス監督のインタビューには、国よってはジョンが生還するラスト・シーンをカットして上映した国もあったとの事。違法な闇の処刑人であるエクスタミネーターが生き残るというラスト・シーンを不適切と考えられたそうだ。ラスト・シーンの結末を変えてまで、映画を上映して意味があるのか、無いのか?よく分からんねぇ。
 悪を倒す為なら暴力も辞さないという主人公のスタイルは、前述の「ダーティ・ハリー」のキャラハン刑事と変わらないが、悪人を銃で射殺するだけではなく、焼き殺すわ、精肉機でミンチするわ、バーナーで拷問するわ、ちょっと極端な気もする。
 ジョンを演じるロバート・ギンティも全然精悍さが無く、ベトナムでもヘロヘロ、チンピラに捕まっても自力で脱出できない、マフィアのボス宅では防犯用のドーベルマンに襲われるといった、非常に駄目キャラなのである。
 体型もひょろひょろで、顔もタレ目でほっぺもゆるい感じ、強いて例えれば、ビートルズのポール・マッカートニーのような甘い感じのルックスで非情な闇の処刑人には全く見えない。
 グリッケンハウス監督いわく、ヒーロー然としたキャラクターではなく、平凡な男の怒りが頂点に達した時にどうなるかという部分を表現したかったという事らしいが、どうもロバート・ギンティが淡白過ぎるような気がする。

 日本で公開された当時、我々中学生男子連中の話題は、ベトナム兵に捕虜がナタで首を切られるシーンや人肉ミンチのシーンの事と主人公が44マグナムを使うというようなばかりで、まさにB級アクション映画という感じでした。
 ポスターに使われているフルフェイスのヘルメットの男が、火炎放射器を使っているシーンは、映画本編には出てこない。グリッケンハウス監督いわく、映画制作会社が宣伝の為だけに作った代物との事。
 テレビのゴールデン洋画劇場で放映された時には、ロバート・ギンティの日本語吹替えを「ベンチがアホやから野球ができひん」という名言を残してプロ野球を引退した阪神タイガースの元ピッチャーの江本猛紀で、棒読みでヘタッピな吹替えだったと記憶している。
 結論としては、「エクスタミネーター」はB級アクション映画の殿堂入りである。

(2013年1月14日)


TOP PAGEに戻る