昔の話である。
今から 20年ほど前、ARBとはじめて出会った。TVだった。
「浅草ロックフェスティバル」と言うイベントの番組だった。
なにげなしに見ていたが 「あれ、日本にもこんなBANDあったんだ。」と思った。その時はそんな感じだった。

のちに自分は大学生になりBANDをいくつも組む。そのひとつに日本のロックばかり演るのがあって それにARBの曲もあった。
「BAD NEWS」を聞いた。衝撃的だった。のちに「あのTVのBAND」だと気がつく。
人数もルックスも変わっていてパワーを感じた。
アルバム・ジャケットもモノクロ調で サウンドとぴったりだった。どこかアメリカのB級映画の映像がアタマに浮かぶ。そんな音。
「黒」を基調とした音とスタイルは 自分に根本的な意味を持つものとなる。
それが いまでも自分の理想とするもの。
このアルバムが ひとに与えた影響ははかり知れない。桑田圭佑や ジュンスカ 、ユニコーンなど多数のミュージシャンや
こうして これを読んでいる あなたもそうかも知れない。

ふとしたきっかけから 学園祭の実行委員長をやることになった。そしてその年のBANDを決める事になった。
前年は RC サクセション。
いくつか候補が 挙がる。
プロモーターのオススメは ハウンド・ドックだった。
が・自分は やっぱり ARBを呼びたい。
しかし スケジュールが合わない。
それで その年は シーナ&ロケッツに決まった。
そして 自分の希望は 翌年果たされることになる・・・・。

シーナは 本当に歌の好きなひとで 帰りのタクシーに乗るまで 歌を口づさんでいた。
打ち上げの時
自分のBANDがARBを演っていたことを ローデイーさんは
メンバーに告げる。みんなやっぱり微笑ましく思うみたいだ。
後で明らかになる事だが その場には 浅田 猛も居た。
皆さんも知ってのとおり彼は後にARBに参加する。
そして自分の仕切った学園祭は ほぼ成功に終わった。

翌年 大学を卒業しても まだ影響力のあった俺は 後輩(自分のBANDのべーシスト)に ARBを呼ぶように言う。
そして 学園祭。

ARB到着。
メンバーは控え室の会議室へ
あとから 自分が部屋の前に 応援団員2人を引き連れて行く。
中に KEITHや凌さんの顔が見える。
ドアの横に 応援団員を立たして 自分は 少し離れた窓に寄りかかる。
しばらくして 控え室から 人が出て来る。
凌さんだった。
彼は 軽く会釈して「あの〜トイレは?」と。
以外だった。
STAGEでシャウトする姿からは 想像もつかないほど 腰の低い人だ。
すぐ近くの トイレへ案内する。
ドアを開けて照明のスイッチを入れてあげる。
そして「ありがとう。」と俺に言い彼は照れくさそうに会釈する。
外に出て戻りかけると
3人ほどのファンらしき人が偶然そのトイレに入る。
さぞ 彼らは中で ビックリしたであろう。

そして リハーサルの時間が来た。
久しぶりに 見る生のARB。
MICのチェック。凌さんが 声を出す。「ワン・トゥ・チェック」と。
KEITHが リズムを刻む。
音量や 音質を見極めていたイチロウとサンジが続ける。
スローなナンバー。
「さらば相棒」
リハなのに バランスが良いのに驚く。
そして 音もシマッている。
しばらく 聞き入る・・・・・。

気がつけば広い講堂の中央に 俺がひとり。
ARBが 俺ひとりの為に演奏してくれてる。そんな気がした。
我に返り やりかけていた仕事を 思い出す。
講堂をあとにする。

「おい! デストロイだぜ!」そんな声が聞こえる。
おれの着ていた Tシャツだ。
当時 やっぱり俺は パンク少年で ピストルズのTシャツに 皮パンツ それに 鋲付きのリストバンド。これが定番。
それを 思うと ARBのメンバーや お客達から見ると 主催する側にそういう人間がいるのは 以外だったかも知れない。
入場待ちのパンクス達を カラかい カラカワレ時間が経つ。
入場。
客は良いポジションを求めて 3階まで階段を駆け上がる。
そして メンバーを 迎えに行く。
俺は去年までの経験を生かして
客には 目の届かない 秘密のルートを 自分が先導して 皆を BACKSTAGEまで連れて行く。
途中 ベランダの通路に出て視界が開ける。
後ろを振り返ると 最初に付いて来るのは KEITHだ。
当時 入院というウワサを聞かされていたので 助っ人が来るかもという話だったが
本人が 来てくれたので安心していた。
俺ははじめて ここで声をかける。
「身体、大丈夫なんですか?」と
「大丈夫だよ!」
KEITHは サングラスの隙間から優しい目を見せて 笑った。
11月の空は少し寒かった。が 俺はワクワクしていた。

そしてBACKSTAGEに入る。
舞台そでから 客席を見る。満員だ。
ふと チキン・ジョージでの圧死事件が アタマをよぎる。
期待と不安が入り交じる。
BACKSTAGE。
メンバーも LIVEに備え コンセントレーションを高める。

KEITH・・・・パシパシと 自分の腿を バチで リズミカルに打つ。

イチロー・・・・右手人差し指に いつものテーピングを施しシャリシャリと ギターを鳴らす。

サンジ・・・・パッキン・バッキンと BASSを ハジク。

凌・・・・柔軟体操・・手から 足・・開脚・・・腰を廻す。

そして 凌が 紙に書いたセットリストを読み上げる・・・・・。
その一曲・一曲に メンバーが 相づちを打ち「ハイ!」と答える。
その光景を一部始終横で見ていた俺は 自分も メンバーになったような錯覚に陥る・・・・・・・。
(後に ARBのリーダーは イチロウなのに 凌が指揮っている事に気づく。)

STAGEではコンサートにあたっての注意事項を読み上げる。
その前、STAGE下には 応援団員が 腕をとなりどうし組み 人の鎖が出来上がる。
それはもちろん「圧死」に備えての行動。
緊張・・・・・。

そして開演!
SEが鳴る! 「ユニオン! ユニオン! ユニオン! ユニオン!・・・・・・・・」
客が最前列に押し寄せる!
バシバシと パイプ椅子が倒されて踏まれていく!
人が波となって うねる。うねる。
3曲が 終わったところで 中断させる。
「さがれ! さがれ!」と STAGEから呼びかける。
そして 倒された椅子を撤去させる。
再開!
途中 何度も客に 押され殴られながらも 無事終了。
死者や 大きなケガは なかった。
力が抜け
BEERを飲んで寝てしまう。

「おい! 起きろよ。 行くよ!」
その呼びかけで 目が覚めた。
もう 打ち上げが始まっているみたいだった。

身体の痛みを感じながら 会議室へ。

ドアを開ける。
「お〜!遅いぞ!」中はもう盛りあがっていた。
みんなが あそこの席が空いてると 指さす。
奥のほうだ・・・・。

凌さんのとなりだった。

「どうも」
「どうも お疲れさん。」と凌さん。
「彼は がんばってたよね。」と マネージャー。
誰かが ビールを持ってきてくれて
乾杯!

美味かったかどうかは もう緊張で 憶えていない。
味なんて分かる余裕はなかった。

学友会会長から今回の公演の報告と御礼があった。
「椅子がずいぶん壊れたみたいだね。」凌さんが俺に聞いた。
「会長! 幾つ壊れた?」と俺が聞く。
「120〜30脚くらいです。」と 会長。
「どーも ないやろ。それくらい。」と 俺。
「大丈夫です。学友会費から出しますんで。」と会長。
頼もしい奴だ。
そのやりとりを聞いていた凌さんが 俺に
「一体 あなたはどういう人なんです?」と。
俺は 元応援団員で 現役生からすると 卒業生は「神様」みたいなものという戒律とか、
学園祭を指揮っていた事とか 会長とは無二の親友である事とかを 話した。
横で聞いていたKEITHからは
「なんで ファンがこんな所に居るのかなって思ったよ!」などと 言われた。
そこですかさず 自分がARBのファンで 今回来てもらった経緯をも話す。

そのあと 凌さんは意外にもこんな事を言い出す。
「どこかで 会ったことあるよね。」意外だった。
「う〜ん タクタクかな? 何回も行ってるしね。」と俺。
本当のところは どうか解らなかった。が
おべんちゃらで そんなこという人だとも思わないことは確かだ。

それから 四条大橋での喧嘩の事などを話してくれた。
俺が BANDでARBの曲を演っていて今は 解散したこと
そして それがメンバーとの意見のくいちがいによってなったことを 凌さんに話すと、
少し 言葉がとぎれた・・・・・。

サンジは ホンダのVTに乗ってて しばしBIKEの話で盛り上がり
KEITHも楽しそうだった。
しかし イチロウは ローデイーとばかり話していて気ムズカシそうだった。
そして 俺の予感は的中!
凌さんが 言葉を失くした裏には そんな事もあったに違いない。

疲れたのかいつもより酔いが回るのが早く感じられた。

あっという間に楽しい時は過ぎ、メンバーは 新幹線で東京へ帰る時がきた。
京都駅までのタクシーの時間を考えて マネージャーから合図を受ける。
皆と お互い挨拶をかわす。
凌さんは 「さらば相棒」のシングル・レコード数枚にサインをして
俺に手渡す。
外のタクシーまで みんなを見送りにぞろぞろと 出て行く。
2台に別れて乗り込み、凌さんは最後に。

タクシーの窓を開け凌さんと握手。
「じゃあ。また・・・。」と言い残して。
おれもつられて「じゃあ、 また」と。
お互いに また会えると信じていたのだ。

タクシーは動き始め、凌さんは手を揚げる。
すぐ見えなくなる。
おれは 脇に挟んでいたシングル版を見てつぶやいた。

「さらば 相棒・・・・。」




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