21日〜29日
-21日-
昨日に引き続きまた雨。
この時期は雨が続く、足は相変わらず痛い。
今日は、中々楽しい事があった。
僕の部屋に親父が来たのだ。
何ヵ月ぶりかな〜、親父に会うの。
親父は全く僕の部屋に遊びに来てくれないからなァ〜、つまんないよ
僕だって、寂しいのにサァ
アハハハッ!!!
そうそう、親父が何の用事で僕の部屋に来って
ま〜かか無くても解るような事だけど、もちろんアツシの事っ!
何?
僕怒られちゃウ?
こわ〜い
ギャハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!
親父の第一声〜っ
「アツシをもっと大事に扱いなさい」
コレだけ〜
アツシも何か可哀想だな〜
こんな程度にしか親父に愛されてないんかね?
ちょっと同情しちゃうよね、
僕はもっと頭ごなしに親父が騒ぐもんだと思ってたんだけどなァ
つまんない。
僕がつまんなそ〜な顔してたらさ、親父が僕にこう言った
「大事に扱わないと、壊れるぞ」
そう一言残して僕の部屋から出て行った。
コワレルゾ?
クッ・・・アッハハハハハハハハハハハハッ!!!!
よくわかってんじゃんっ!!!
そうなんだよっ!!
そぉっ!!!!!
物は大事にしないと壊れちゃうんだよっ!!!!!!
親父もちゃんとわかってんじゃんっ!!!
分かってンのにどうして親父は大事ニデキナイノ?
-22日-
今日で雨は何日目かな?
激しい降り方ではないけれど、シトシトと長い雨が続いている。
部屋の湿度が高くなってる。
肌に空気が絡み付くような感じ、何かイライラするよ〜
今日は朝の9時を廻ってもアツシが中々こなかった。
今はお夕方の4時。
まだアツシはこない。
どういうつもりなんだろう
-23日-
結局昨日、アツシが僕の部屋に来る事はなかった。
お陰で僕は昨日、ジメジメしたシーツの上で寝るはめになった。
今日だっていつもの時間にアツシが僕の部屋に来る事はなかった。
代わりに他のメイドがシーツと掃除をしに、僕の部屋にやってきた。
僕はそのメイドにアツシはどうしたのか聞いた。
「アツシは調整中ですので・・」
そう言って僕の部屋を後にした。
ちょっと待ってよっていう僕の言葉は、メイドが閉めたドアの音でかきけ
されてしまった。
調整中って随分変な言い方するんだね〜
やっぱり1人だけ親父に愛されちゃってるから、メイド達の間でも嫌われちゃっ
てんのかな?
ククク・・・かっわいそ〜っ!!!
僕が慰めてあげるから、早く僕のとこにおいで
-24日-
雨があがったっ
今日もアツシはこなかった
つまんない。
僕は今日は久し振りに温室へ行った。
昨日までの雨が雫になって、天上や壁面に沢山ついてた。
日の光を浴びて、キラキラと華に輝きを与えててね、とっても綺麗だったよ。
誰かにも見せたいなって思ったけど
僕には友達もいないしね
ま、一人占めって言うのも悪くない。
薔薇はほとんど開花してて、温室中むせかえる程の匂いだった。
唯一の恋っていたひとつの蕾みを部屋に持ち帰って来た。
また不慮の事故で亡くさない様に、気をつけなくちゃいけないよね〜
そうそう、温室に帰る途中面白いモノを見た。
僕ああいうの見てるの好きだな〜
自分でするのも好きだけどさっ
屋敷の隣にくっついている、メイド達の小屋があるんだけど
そこの影のほうで、数人のメイドが言い争ってた。
数人のメイド達に囲まれて、まん中でひざまずいてるのはアツシだったんだけどね〜
蹴られたり、殴られたり、罵声を浴びせられたりしてたな〜
メイド達もうっぷんたまってんだね〜っ
でもそれは当たり前っ!
だって僕何かの世話しないといけないんだもんねぇっ!!
大変だよね〜
お疲れさまっ!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!
そんな風に殴られたり、蹴られたり。
僕は苦痛に満ちてるアツシの顔が、すっごい見たかったっ!
何せこの間僕が花瓶ぶつけたりした時、呻きはしたものの、苦痛の表情みせなかった
からね〜っ
同等の立場の人間からの暴力だったら、苦痛の顔も反抗的な態度もするってもんでしょっ
でもな〜
何なんだろう、このアツシって奴は。
感情とかうすいのかね?
それともタダの馬鹿?
どんなに殴られても、ニッコリ笑ってやがる。
「笑ってる顔が気に入らないんだよっ!」
「泣いて叫べっ!!」
「お前なんて役に立たないガラクタなんだっ!!」
そう散々言われて手も、ただひたすら笑ってるだけ。
「お前は半人前の最低なスクラップだ」
ぺッとメイドがアツシに唾を吐いた。
僕はそのまま部屋に戻った。
つまんない。
-25日-
今日はアツシが部屋に来た。
ニコニコと笑いながら僕の部屋の掃除をした。
僕はアツシに車椅子を出す様に言った。
アツシは「かしこまりました」と言って、ニコニコしながら僕の車椅子を
ベッドの下から出してくる。
独り悩みながら、車椅子をアツシが組み立てていた。
僕はふと、誰に言うでもなく呟いた。
「半人前のスクラップ」
何回か口の中で呟いた。
昨日アツシに向けられていた言葉。
僕はアツシのほうを見て、言った。
「アツシは半人前のスクラップか」
アツシは僕のほうを向いて、ニコっと笑ってからこう言った。
「はい、そうです。半人前のスクラップです。
皆さんがそう言いますので、僕は半人前のスクラップです。」
僕は笑いながらそう言っているアツシの顔から、目を背ける事ができず
ずっとアツシの表情を目でおっていた。
アツシの表情は哀しいでもなく、嬉しいでもなく。
まして、怒りのカケラもなく、普通の会話を楽しんでいる様な顔をしていた。
それから
「でも僕は正直、半人前のスクラップという意味が解らないんです」
と付け加え、エヘヘと笑った。
僕はそのアツシの笑った顔が、あんまりにも哀しく見えた。
「半人前のスクラップは僕の事だよ」
部屋からアツシを追い出して、僕はまたベッドに寝転がった。
-26日-
「半人前のスクラップは僕ですよ、ヒサシさんじゃないです」
アツシが僕の部屋に来るや否や言った言葉。
僕ってばコイツに同情されてるの?
もしかして
「僕はヒサシさん好きです」
何言ってんのコイツ
訳わかんね〜よ〜
そういう励まし方ってある訳?
どういう同情の仕方なんだ一体
面白くて、笑っちゃいますね〜
うざいからどっか行け
-27日-
薔薇の花が咲きそうだよ。
どんどんいい匂いが部屋中に廻ってくる。
寝ていても、薔薇の事を感じるくらい。
薔薇に統べてを征服されているこの時期、僕は懐かしく、哀しく思い出す事が
ある。
それは、母親の事だ。
今はもういない母。
僕は、母の事が大好きだった。
優しく、そして強く、親父からいつも僕の事をかばってくれていた母。
少し過保護な部分もあったけれど、僕はさして気にならなかった。
母がとても好きだったから。
そんな母が僕の前から消えた時、部屋の中に薔薇の匂いが立ち篭めていた。
だから僕は薔薇の香りを嗅ぐと、切なくもなるし
そして母を懐かしくも思う。
同時に親父への怒りも増殖するけれど、僕たなるべくその感情は違う時期に
思い出したいと思う。
この時期だけは、母を思っていたい。
母がいなくなってしまったのは、そもそも僕の所為だと思う。
あれは10年程前だったか、僕がまだ学校に通う前だ。
僕のいえの近くには、僕と同じくらいの子が1人住んでいた。
僕はその子ととても中がよくて、毎日そらが薄暗くなるまで遊んでた
草原を走ったり、ボール投げをしたり、2人で秘密の場所を探したり。
そいつとはとても仲がよかった。
なんて名前だったか・・・・・
そういえば、あいつは何処にいってしまったんだろう
記憶にない・・・
とにかく、僕はその日もそいつと一緒に遊んでいた。
雨が少し降っていて、花の花粉の上に雨が溜まるさまをみているのが楽しくて、
僕はそいつと暗くなるもの構わずに、あちこち走っては、花の様子をみていた。
何時間かそうしているうちに、花が様子がよく見えなくなってきて
僕とそいつは、辺りが真っ暗になっている事にやっと気がついた。
僕達は家路に急いだ。
母が心配している、父に怒られる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
途中そいつと別れ、そいつのいえから少し離れた自分の家の灯りをみて、僕はもっと
もっと、早く走った。
途中の水たまりに足を取られ、こいしにつまづいた。
勢い良く水たまりに体を沈め、足からは血が流れていた。
痛いという感覚よりも、早く家に行かなくちゃ
ドアを開けなくちゃ
母に「ただいま」と言わなければ
その重いで沢山になりながら、僕はやっと自分の家のドアり前まで来た。
ドアノブに手をおいた時、家の中から母と親父の声が聞こえて来た。
言い争っていた様な聞かせするが、具体的な内容は憶えていない。
僕は怒られるという恐怖を抱きながら、ドアを開けた。
怒られるのはもちろん嫌だったけれど、泣きわめいている様な様子の母が心配
でしょうがなかったのだ。
ドアを開けて、ただいまと言おうとした瞬間、ドアの前に立っている僕に
きがついた父が、もの凄い形相で僕の方に向かって来た。
僕は今でもその顔、はっきりと憶えている。
恐ろしい顔だった
殺されると思った。
母に助けて貰いたいと、心底思った。
でも母は僕が帰って来た事に気がつく様子はなく、窓の外を、僕の帰りを待っている様子だった。
僕は帰ってきたよ。
ただいま
でもそのただいまが、目の前にいる父の形相の所為で言えなかった。
がたがたと震えて、父の顔をみているしかなかった。
父は一言も発せず、右手をふりかざした。
殴られる瞬間、母の声がした。
「あの子・・どこまで行ってしまったの・・・早くかえって・・・・」
途中で母の声は悲鳴に変わった。
僕は思いきり父に殴られ、ふっとんだ。
母の叫び声がいまでも耳に残っている・・・・・
僕が憶えているのはここまでだ。
何日か後、僕は何故か病院のベッドで目を覚まし
そして、母と足を失っていた。
-28日-
今日も薔薇は好い香りだ。
僕のベッドを薔薇でいっぱいにしたら、どうかな?
ずっとママと一緒っていう気分がするかな?
ママに包まれている感じがするかな?
僕ってもしかして、マザコンとかなのかな?
いや、多感な時期に母親を亡くしたっていうのが、原因の様な気がするな
-29日-
今日は、アツシと一緒に温室へ行った。
無理矢理アツシがついてきたんだ。
僕は1人で薔薇の香りを満喫したかったんだけど、「離れません」とアツシが
言うし、キツク言ったところで聞きそうにないから。
大人しそうで、人の事は全部聞きそうな感じのくせに、こういう時ばっかり
僕の後をつけまわす。
変なヤツ。
僕は1人でいる気分になろうと、アツシの存在を自分の中から必死で消し去ろうとしていた。
でもアツシは、じっとしているヤつじゃなかった。
こんなヤつだったとは・・・・
僕が薔薇の前で、じっと花びらをみながら母親の事を考えている時でも、お構い無しに
華の名前を聞いてくる。
ウロウロ、チョロチョロしながら、僕に聞くのだ。
「この黄色や、赤い色の花はなんですか?」
「この花にはとがったモノがついてて、危険ですよ」
「どうして花は、こんな好い匂いがするんですか?」
そう僕に、楽しそうに聞いてくる。
統べて初めて見たものの様に花を扱うアツシが、僕は不思議でしょうがなかった。
誰が見たって不思議だと思うけど。
「アツシはあんまり花の事知らないの?」
そう僕が聞くと、アツシは少し困った顔をして
「僕の中には、白い小さな花しかありません。花というモのに種類があるのは
知りませんでした。」
そう言って、色々な色や形をした花達に釘付けになっていた。
僕はどうしてアツシがそんな事しか知らないのかが、気になってしょうがなかった。
家柄の所為?
それにしたって、花の種類がひと種類しかないなんて言ってるヤツは聞いた事がない。
こいつは今までどうやって育ってきたのか。
そして、どうしてそういう右も左も解らなそうな男が、僕のメイドなんだろう。
厄介者を押し付けられた様に気がしてならないな
「あっ、でもヒさしさんが好きな花ですから、これから勉強しますから、安心して下さい」
そうアツシは付け加えて、花をひとつひとつ眺めていた。
やっぱりコイツはちょっと変わってる
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