Always
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なんてことない日常。 代わり映えしない日常。 * * * 「うぅ〜、聞いてくれよシュウ〜。オレまた振られたのよ〜」 とっくに酒に飲まれて隣で管を巻く男・平山晃哉。 会社は違えど、同じ年で同じ番組に付いていて、今では『野猿』というグループの仲間。 親友。 俺達はよくこうやって連れ立って呑みに来る。 「さっきから何回も聞いた」 何がこいつをそうさせるのか、俺達二人の時は見事に俺が介抱役。 いつもの『面倒見のいい平山さん』はどこに行ってしまうのか…。 ファンの子が見たら泣くぞ。ああ、もう。そんな甘えた声を出すんじゃない! 「やっと、やっとさあ! 『忙しいあなたでもいいの』って言ってくれる子がいたと思ったのに、ほんの数ヶ月で『会えなくて淋しいから』ってなんなんだよな〜。オレだってさあ、時間作ろうとしたけどさあ!」 こいつの目も回る忙しさは一緒に働いてる俺達はよく分かってる。 本業の仕事だけでもそれなりの肩書きを持ってるんだ、そこらの奴より数段忙しない。なのにその他に『野猿』って副業まで出来ちまって…。 女の子にキャーキャー言われるっての差し引いても、羨ましいとは思えない。 「シュウちゃん、オレ淋しいのよ。愛を頂戴よ」 「はいはい。ここの代金払ってくれたらな」 横から抱き着いてくるこいつを放っておいて、俺はグラスを傾けた。 「…シュウ冷たい…」 「俺だってムサいおっさんにくっつかれるより、若い女の子の方がいいんだよ」 「ムサいって…同い年なのに…。髭だって同じだし…」 「ファンの子でもお持ち帰りしたら? 『野猿の平山さん』になら無条件で愛情注いでくれるだろ」 平山は俺から離れて目前のグラスをちびり口に運んだ。 「…すまん、今のは失言」 仲が良すぎるとついつい言わなくていい一言が出てしまう。 それだけ気を許してるって事なんだけど…。 「悪い。言い過ぎた」 「…オレらってさ、いつまで『野猿』でいられるのかな」 手の平のグラスを持て余すようにクルクル回しながら、平山はそれを眺めて呟いた。 「ファンの子はさ、オレが『野猿』だから好きなんだよな。だったらなんて言うか……やめたくないなぁ」 「…なんだよ。女の子に騒がれてたいからだけかよ」 俺はからかい半分に平山を小突く。 「そうじゃないけどさぁ。楽しいし、皆でクラブやってるみたいにワイワイやってんの。それも含めて、やめたくないなぁ…」 消え入りそうな声で言うと、平山はテーブルに突っ伏して何も話さなくなった。 俺は作り直された水割りを一気に飲み干してから、平山のその頭を二回叩いた。 「……仕方ねえなあ! もてない平山くんの為に俺が愛してやるか!!」 「…なんだよ…なんだよ、もてないって! オレはきっとお前よりもてるぞ!」 「なぁにぃ!? 俺の方がもてないってか! そんな事言うのはどの口だ!? この口か!」 平山の口を両端から掴んで思いっきり横に引っ張ってやる。 抵抗するように平山は俺の手を上から押さえようと懸命に力を入れてきた。 「いひゃいりぇしゅ、しゅうしゃん」 「やんねえぞ、俺の貴重な愛情!」 「やら〜」 引っ張られたままで、ぷるぷると頭を左右に振る。 ホント、かっこいい『平山さん』はどこに行ったんだか…。 あ〜、つまんない。 なんて面白くもない日常。 * * * でもこれも楽しい日常…なんだな。 〜 Fin 〜 |
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