SINCERELY〜ever dream〜

伝えたい想いが今、溢れているよ
言葉に出来なくて、戸惑っている―

「―神波。」
「ん?」
「今日で…行っちゃうんだね。」
「あぁ…」

私と神波は『幼なじみ』
家が隣で、幼稚園、小学校、中学校、高校…ずっと、同じだった。
数えきれないほどの季節を、一緒に過ごして来た。

そんな神波が、「デザイナーになる」という夢を叶える為に――
今日、東京へと旅立っていく。

10年近くも一緒にいると、漠然と
「神波と、この先もずっと一緒にいるんだろうな」なんて思う事もあった。
でも、互いに夢を見つけ、それに向かって近づく度に、
私たちの関係は、結構儚いものだという事を、知っていった。

神波だけじゃない。
人は皆、いつかは夢を追って、そのために何かを犠牲にして、旅立っていくもの。

「途中まで送るよ。」
そう言って、神波の横を歩き出した。

「よくこの道、一緒に歩いて帰ったよな。」
「なーんか、久しぶりだねー…」
「コンビニで食いもん買い込んでさー。」
「そこの公園で食べながら、ずーーーっと喋ってたよね。」
「そしたらお前の親から『早く帰ってこい!!』って電話がかかってきて。」
「話が盛り上がってきた所でね。んで、すぐ帰ってもまた窓越しに、夜遅くまで語り明かして。」
「ジュース下にこぼして、また怒られたり。」
「懐かしいよねー…」

旅立ちまでを過ごした『現在』
たくさん笑ったり、泣いたり、怒ったり…
それは、ただの『通過点』だったんだろうか?

「あ…」
気付いたら、こんな所まで来ていた。私たちが通っていた、高校の前。
新校舎に移転するとかで、この校舎はもう取り壊されるんだっけ…

ガシャッ―
「ちょっ…神波!?何やってんの?つかまるよ!!」
「もう誰もいないって!お前もこいよ!!」
「不法侵入だって!!ねぇ、神波ーー!!」
必死に呼び止めたが、神波は軽々と柵を乗り越え、校舎の方へと歩き出した。
ダメだ。こんな時の神波は何を言っても聞くような相手じゃない。
私も何とか柵を乗り越え、だいぶ先まで進んだ神波のもとへ走っていった。
「これでお前も共犯な。」
「…アホ。」



鍵が壊れている裏口から、校舎の中へ入った。

下駄箱まで来た時、誰かが目の前を走っていった。
赤と黒のランドセルを背負った…小学生?
2人は下駄箱から、それぞれ靴を取り出して履くと、
外へ走っていった――

「麻衣ー!置いてくぞー!」
「あっ、今行くー!」

「食うか?」
「ありがと。助かった〜…朝食べてなかったんだもん。」
階段に座り、神波からもらったパンにかぶりつく。
「…ん?」
「…?どした?」
「いや…今、小学生の男の子と女の子が、階段駆け上がってったような気がしたんだけど…」
「…幽霊だったり。」
「まさか…足、あったし。」


階段を上って、3階まで来た。
確かこの階に私たちの教室があったはず…なんだけど。
「…どこだったっけ?」
「俺に聞くな。」
「つい最近まで通ってたじゃない…もう忘れたの?」
「その台詞、そっくりそのままお前に返すわ。」
思わずその一言にカチンとなって、神波を殴るマネをしようと
後ろを振り向いて手を挙げた時

ある教室から、さっき見た小学生2人が
仲良く手を繋いで、走って出て来るのを見た。

「…ここじゃない?」
「あー!そう、ここだ!!なんでわかった?」
「いや…何となく、だけど。」

さっきの子達が教えてくれたのだろうか。
そう思いながら、まだ整然と並べられている机に、適当に腰掛けた。

「麻衣は音大だっけ?」
「うん。」
「よく音楽室でピアノ弾いてたもんなー。部活サボって。」
「神波だって授業中ずーっと、デザイン画書いてたじゃない!
真面目に受けてるなーってノート頼みに行ったら、『あ、俺取ってない』ってさ〜…」

こんな口げんかも、もうなかなか出来なくなるのかなぁ?
ふっと胸に切なさがよぎる。

これから先、神波は神波の、私は私の、それぞれの道へ進んでいく。
いっぱい恋もするだろう。間違いもくり返すだろう。そして、大人になっていくんだろう。
でも、私達はどこかできっと繋がっている。
そう信じたい。

「神波。」
「ん?」
「覚えててほしい事があるんだ。
これから東京に行って、デザインの勉強始めて…きっと迷って、立ち止まる事もあるじゃない。 
もし、そんな時が来たら思い出して欲しい。
私達はどんなに遠くても繋がっているからね。 
一人じゃ…ないんだからね。」

しばらくの間、沈黙が流れる。
ふっと神波の方を見ると…肩がかすかに震えていた。
「…泣いてんの?」
「泣いてない!」
…こーゆー強がりなとこは、昔からちっとも変わってないんだから。
「泣きたい時は泣いた方がいいと思うよ。そしたら楽になれる。また笑えるようになれるよ。 
私は、笑った神波の顔が大好きなんだからね。」

グッと帽子を目深にかぶり直す神波の背中を、何故だか抱きしめたくなったけど
それは出来なくて
私は、神波の肩をポンポンと優しく叩いた。




「じゃ、俺行くわ。」
「うん…元気で。」
頭の上には青空が広がっている。
まるで、私達の旅立ちを見守るかのような。

「麻衣!」
少し歩き出した私を、神波が呼び止める。
その声に振り向くと

神波が笑顔で、私に向かって親指を立てていた。
思わず泣きそうになった。頑張って涙をこらえ
私も笑顔でその仕草を返す。

神波は振り返り、駅に向かって歩いていった。
しばらくその背中を見送った後、私も、もと来た道へと歩き出す。


それぞれの旅立ち。
ここが、その出発点。
夢へと向かう、私達の物語のスタート地点。

神波にも、私にも、
どんな未来が待っているのかは、わからない。
でも、何が待っていようとも、私は負けないから。
下を見ず、しっかりと前を向いて、歩き出していこう。

強くなれるように…


     ――僕達の物語は、ずっと続いていく――  

                                END

さんしょくぱん様から頂いた小説です。
爽やかな青春って感じ。
カンちゃんは友達に恵まれてそうだから
こんな感じの友達、本当に居たかも知れないよね。
さんしょくぱんさん、ありがとございました♥


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