それは小さな物語


小さな森の奥深く

小さな湖がありました。

湖の辺(ほとり)には、小さな草むらが茂ります。



そこには一匹の小さな蛙(かえる)が住みついていました。

蛙は、毎日をごく普通に暮らしていました。

お腹が空けば餌(えさ)を探し

眠たくなれば、つぶらな瞳を静かに閉じるのでした。



ある満月の夜

蛙は湖の辺にあった石の上で、体を休めていました。

なんとなく湖を眺めていると…

”水面”に満月がくっきりと映し出され、キラキラと美しく輝いていました。

「なんてキレイなんだろう。」

蛙は思いました。

「あのキラキラ光る満月に触(ふ)れる事ができたら…。」



次の瞬間、蛙は湖に飛び込んだのです!



月の光に魅了された蛙は、一心不乱に泳ぎました。

「あのキラキラ光る満月にたどり着きたい!」

けれど…いくら泳いでも”水面”に映し出される満月には、いっこうに近づきません。

それでも泳ぎ続けた蛙でしたが、

とうとう…力尽きてしまいました。

蛙は疲れきった体を横たえて静かに瞳を閉じました。

そして湖の底深く、ゆっくりと沈んでいきまいた。









どのくらい時間が過ぎたのでしょう?

蛙は目を覚まし驚きました。

それはとても暖かく優しい光に包まれていたからです。

ただ、そこは湖の底でも湖の辺でもない…

蛙は満月のつくり出した光の帯の中、なんと空中に浮かんでいたのです。

住みなれた小さな森、小さな湖、小さな草むらを

天高い所からすべて、見渡す事ができました。



蛙は、天上に輝く満月を見上げてつぶやきました。

「そ…そうか、まだ着いてないんだ。」

やがて蛙は満月に向かって

また、泳ぎはじめました。



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