HELLOWEEN
はじめに
僕がいわゆるヘヴィメタルを聴くようになったばかりの中学校上がりたての頃に出会ったバンド。
メタルと言えばLAメタルとベイエリアクランチしか知らなかった僕は一方で日本のバンドブームの洗礼を受けて育っており、その頃には中古CDを求めて聖地町田ユニオンへの巡礼を開始していました。そこで見つけた一枚のCDこそ、ほかならぬ『PINK
BUBBLES GO APE』だったのです。店が店だけに店内放送されていたそのサウンドは、よその店なら流してないであろうし、それまで体験した事のない類のものであり、僕は一撃で魅了されてしまったのを覚えています。
出会いは常にドラマティックとは限らないものですが、丁度その日に中古で売られていたKai
Hansen が歌っていた時期の音源を集めたCDも同時購入。その日に気に入ったアーティストのCDを、過去の作品まで遡ってまとめ買いしたのは後にも先にもこの一回こっきり。それだけ衝撃を受けたのは間違いないし、この2枚はそれぞれ1000回はくだらないってくらい聴きました。後にHELLOWEENタイプ、って文句を見ただけで「じゃぁいいに決まってる」という程の勢いで好きでした。
しかし広く浅くがモットーだった当時の僕は名盤の誉れ高き守護神伝2部作をスルーしてしまい、『KEEPER OF THE SEVEN KEYS -PART U-』に至っては、高校生になってから『MASTER OF THE RINGS』を聴いてコンプリートの意志を確定してから、というメチャクチャな順番で聴いてきた事になります。
この人
新旧のHELLOWEENメンバーに嫌いな人はいません。ライヴ盤では音質の劣悪さも手伝ってキスケ時代の名曲を台無しにしてしまったAndy
Deris も曲によって、特にPC 69時代には素晴らしいシンガーであったのは間違いないし(だからこそ彼は今HELLOWEENにいる必要はないとは思ってるけど)、何だかとっちらかった感じだけど何処となくHELLOWEENの核だったIngo
Schwichtenberg と比べるとやかましく感じたUli Kusch もメタリックな良い曲をたくさん残したし、人気・実力ともにバンドの顔だったKai
Hansen の後任というハードなポジションで自分のカラーをしっかり出していたRoland
Grapow を僕は高く評価しています。そしてMarkus Grosskopf の曲をしっかりと支えつつもやたら動きのあるベースラインは多くのフォロワーたちとの格の違いを語る上で外してはならないポイントではないでしょうか。
しかし何と言っても僕にとってHELLOWEEN、そしてジャーマン・メタル界最強のシンガー、Michael
Kiske との出会いこそがこのバンドがもたらした一番のラッキーです。キャッチーなメロディを伸びやかに歌い上げるハイトーン・ヴォーカルは変声期後も声が高いことに劣等感すら抱いていた僕に反対に誇りと勇気を植え付け、結局アマチュア・レベル止まりとなってしまったものの、ヴォーカリストとしてステージに立って人前で歌うと言う至高の悦びを教えてくれました。好きなヴォーカリストはたくさんいますが、殊"声が好き"という点に関して言えばキスケは世界一の男です。ソロになってからは苦戦しているようですが、僕は何処までも彼を信じて応援したいと思っています。
CD REVIEW
| HELLOWEEN ・ WALLS OF JERICHO ・JUDAS (1985・86) |
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| Kai Hansen ヴォーカル期のデヴューミニ、1stフル、シングル"JUDAS"を一枚にまとめた企画盤。 ラフでスピーディながらも非常にメロディアス、というヘヴィメタルの理想像の一つを体現した彼らだが、その雛形はこの時点ですでに形成されているというのは驚きですらある。 楽曲が抜群に良いというのにも程がある。"Starlight"、"Murderer"、"Warrior"と畳み掛けるような疾走曲の後にはドラマティックな展開と極めてメロディアスなサビが今なお色褪せぬ"Victim Of Fate"、バラードかと思いきや激しい盛り上がりへと繋がって行き、男声コーラスと美しきツイン・リードの調べまで入るというドラマティック・メタルの良き手本とも言える名曲"Cry For Freedom"と聴き惚れている間に、ミニアルバム部分は終わり。 後に伝統化されるSEで始まる『WALLS OF JERICHO』の一曲目はKai が作った最強の疾走曲の一つ"Ride The Sky"。もちろん他の部分では良い所がたくさん増えているのだが、この曲の切れ味を超える曲はHELLOWEEN もGAMMA RAY も作れてないのではないかとすら感じる。 ベース・ラインが印象的な"Raptile"、後のフォロワー達が似たようなメロディを用いるキャッチーなサビと美しいギター・パートが光る"Guardians"は名作『KEPPER OF THE SEVEN KEYS』へと受け継がれるジャーマン・メタル、北欧メタルのパイオニア的楽曲。"Phantoms Of Death"、"Metal Invadors"での明らかに従来のスラッシュとは異なる疾走感は流れるようなギター・ワークの賜物と言えるし、その裏で躍動するMarkus のベースも素晴らしい。"Gorgar"では巨匠Ritchie Blackmore も好きな(はず)、グリーグのフレーズを盛り込むという粋な部分も見られる。続く最もアグレッシヴでファストな"Heavy Metal(Is The Law)においてもこのバンドのキャッチーさは決して鈍ることがない。 そして初期HELLOWEEN最大の名曲、ドラマティックでパワフルでスピーディでマイナーメロディたっぷりでソロではギターが慟哭するというバンドの総決算的な"How Many Tears"。この曲にケチつけるような人は是非モッシュピットで会いましょう。但し身長・体重制限あり。 "Judas"も典型的な初期の楽曲の一つだが、サビが少し物足りない気もする。ソロはナイス。 この時期のHELLOWEEN に批判的な向きの多くはKai のヴォーカルを指摘するけど、彼の良くないところは出来もしないテクニカルな歌唱を試みた時に「やっぱヘタだよな」というのが露呈するとこであると思うし、少なくともこの時期の彼はラフに歌うということに努めており、それが楽曲にも見事にマッチしているので的外れとは言えないまでも、大して問題とは思えない。っていうか、むしろこれで良い。 |
| PINK BUBBLES GO APE (1991) |
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| バンドの中心人物だったKai Hansen が脱退。新ギタリストとしてRoland Grapow
を迎え、プロデュースもChris Tsangarides が担当、レーベル移籍など、色々な面でチャレンジングなアルバム。 HELLOWEEN最大の武器であるクサメロとスピード感と、Weikath、Kiske、Roland の3人のソングライターのポップセンスとが昇華したある意味新たなHELLOWEENサウンドは、この作品で完全にジャーマン・メタルの垣根を越えたと言えるだろう。 特に新加入のRoland は、キャッチーでスリリングな"Someone's Crying"、ドラマティックな展開を見せる"Mankind"、疾走感・叙情感と新加入とは思えないほどにこのバンドのツボを押さえた名曲"The Chance"など、優れた楽曲を生み出してKai の穴を埋めると言う重責を見事果たしている。 Kiske のペンによる"Kids Of The Century"、"Goin' Home"もHELLOWEEN独自の魅力の一つである明るく楽しく元気よく、なポップ性がこれまで以上に花開いたもので素晴らしく、アルバムは優れた楽曲が並ぶ強力なものとなっているが、方向性にまとまりがないのもまた事実であり、そこら辺があまり好かれていない要因の一つなのかな、と思う。良い曲もいっぱいある作品なのに残念。 僕はこの作品でHELLOWEEN を知った、というのもあるし、Kiske が歌ってるってだけでプラス査定なので説得力ないかもしれないけど、守護神伝の興奮冷めやらぬ状態で聴いてがっかりしてしまったリアルタイマーの皆さんや、評価低いから聴く気も起きない若い方はあと十回くらいこの作品を聴いてみて欲しい。それでこの作品を好きになるって事はないかもしれないけど、少なくともMarkus Grosskopf という男がいかに優れたベーシストであるかはわかると思う。多分。きっと。 |
| MASTER OF THE RINGS (1994) |
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| 『Pink Bubbles Go Ape』、『Chameleon』の2作は非常に優れた楽曲こそあれど、守護神伝効果でメタル界でも注目を浴びていたHELLOWEENが「メタル離れしたポップな作風に走った」というほどには思い切ったものでもないものの、彼らにメタル界の牽引を期待するファンの求めるものとは違ったらしく、結果として中途半端なものと受け止められてしまった。オリジナル・メンバーがWeikath
とMarkus のみとなり、ヴォーカルにはAndy Deris、ドラムにUli Kusch を迎え、背水の陣で制作された6th。 新シンガーのAndy の前バンドであるPINK CREAM 69はHELLOWEEN と同郷のバンドではあるものの、アメリカンな雰囲気と哀愁溢れるメロディが魅力のHRバンドであり、「ジャーマン・メタルの権化」たるHELLOWEEN に適応できるのかが気にはなったが、この作品を前にしたらそれはただの取り越し苦労だと言わざるを得なかった。言うなればAndy がバンドに馴染む必要などなく、バンドの方を自分に馴染ませてしまったような感すらある。Kiske の澄んだハイトーンに替わり、セクシーで叙情的な歌声の持ち主であるAndy が入ったところでHELLOWEEN らしいHMというスタンスを崩さないどころか、むしろメタリックな方向に向かっていくんだ、という意気込みすら感じさせるパワフルな"Sole Survivor"はWeikath とAndy の共作だが、このコンビによる楽曲がとにかく素晴らしく、バンドの持ち味を存分に活かしたスピード・チューン"Where The Rain Grows"、リフが印象的なミディアム・テンポの"Perfect Gentleman"、Kiske よりAndy が勝る点であるメランコリックさが活きるバラード"In The Middle Of A Heartbeat"と二人の相性の良さを実に感じさせる。 細かなところではAndy の楽曲"Why?"はそれまでのHELLOWEEN には全くなかったタイプの曲で、ギターソロも少し趣が違うものになっていたり、ボーナス曲"Can't Fight Your Desire"はPC 69の優れた血がHELLOWEEN に持ち込まれた一つの証明と言えるだろう。 Weikath のソングライティングも好調で、テトリスやっててこのリフ浮かんでくるとこがすごい"The Game Is On"はオフザケなどでは決してない高いクオリティだし、"Secret Alibi"はヴァイキー節に沿った作りの良いリフを持った曲。 一方、Roland はこのバンドに初めてモダン(当時)なヘヴィネスを持ち込んだ(『CHAMELEON』でも匂わせてはいたけど)"Mr.Ego"、前2作で発揮したポップ・センスをここでも発揮したノリの気持ちよいロック・ナンバー"Take Me Home"、ヴァースからサビにかけての駆け抜けるような爽快感とAメロまでのどっしりした感じの対比が面白い"Still We Go"とヴァラエティに富んだ楽曲を提供し、アルバムを引き締めている。 起死回生って言葉が本当にぴったりな、危機を迎えたバンドが生み出した傑作。自らの持ち味を出し惜しみせずぶちまけた時点で彼らの勝ちだと言えよう。 |