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-2002 vol.5-

HUMANISTIC
ABANDONED POOLS
アルバムが発表されたのは昨年ながら、ちょっと前にやたら売っているのを見かけるようになったこのABANDONED POOLS、元eels のTommy Walter が殆んど一人でやっているプロジェクトだそうで、レーベルはEXTASY RECORDS、EXCECUTIVE PRODUCERにはあのYOSHIKI の名がクレジットされていたりと、ワケわからんバックグラウンドと言えなくもない存在だが、確か初めてその名を知ったのはZWAN の前座やってた時だった気もするし、実際試聴機でそのスマパンライクなヘヴィ・ロックっぷりを耳にして買ったという経緯があるのでその辺にソソられてファンになる人が八割ぐらいを占めるであろう。

アヒルっぽいヴォーカルと惜しげもなく歪んだギター・サウンド、そして甘酸っぱいメロディが織り成す90年代ロック世界。やはり思い出すのはTHE SMASHING PUMPKINS だが、パクリなんて低次元な代物ではなく、希薄なオリジナリティを補って余りあるセンスがメロディやアレンジに散りばめられ、結果的に面白い音楽になっている。

丁度僕の年代の人ってのは多感な時期にグランジやらブリットポップが祭り的に盛り上がって、そのあとRADIOHEAD なんかが爆裂して、まさにこのABANDONED POOLS のようなロックがいっぱいあったわけで、(スマパンも解散しちまったしで)ノスタルジックな感傷が先に来てしまうけれど、でも実際これはカッコ良いロックだと思うわけで。2.Mercy Kiss とか8.L.V.B.D.11.Seed のえもいわれぬ躍動感はたまらないわけで。 (11/8)


ON FIRE
SPIRITUAL BEGGARS
JB(vo.)Roger Nilson(b.)が新たに加入して更なる飛躍が期待された5th。

その新ヴォーカリスト、JB であるが、太く力のある声と、コブシの利いたソウルフルな唱法が見事な素晴らしいシンガーで、楽曲ごとに様々な魅力を聴かせるあたり非常に器用な面も感じられる。声質も含めて、かなり好きな部類に入る。

この人選抜群なシンガーでもって楽曲の方は前評判通りの70'sHR 要素バリバリなもんだから、個人的にはツボはまりまくり、今年のBEST 3 入りは堅いよね、っちゅうハズなんだけど、薄い。あまりにも薄いアルバム。
オマージュとかリスペクトとか、パクリとかに関しては結果的にそれが気に入ってしまえば許してしまえるというのが我がスタンス。そういう意味じゃこのアルバムの楽曲がつまらないという意見には100%同意しかねると言うのが実情。こういう曲は好きだし。5.Black Feather なんてこのシンガーあってこそのシンプルな良い曲じゃないスか。タイトルはDIO で中身はブラックモア節の8.Dance Of The Dragon King もまぁアリ。

じゃぁ何がダメかって、そりゃ演奏でしょう。今彼らが標榜している70'sハードロックや、それ以前のブルーズを基盤にしたヘヴィなロックの肝たるは、スリリングな音と音のぶつかり合いにあったわけで、もとより調和なんてものを目指してるはずもない、ともすれば自己主張の拡散に終ってしまいそうな自由で制約のない、限りなくプリミティブな音が偶発的に生み出した世界であり、確かにまずは楽曲ありきなんだろうけど僕が興奮できるポイントはそういう緊張感の中にあるわけで。
それらと比べるとやっぱりこのSPIRITUAL BEGGARS には緊張感が欠けているというか、特に”お仕事”な感じが拭えない今作。Michael Amott(g.)を筆頭に小さくまとまってしまっている印象。リアルタイマーではないが、その音を愛する者として言わせて貰うが、これが70年代ヘヴィ・ロックの再現と捉えるのは間違いだろう。良くも悪くも世界一の文化祭バンド。

とは言え、シンガーが好みなんでしっかりこまめに聴いていたりするのが実情。Per Wiberg(key.)が目立ってきているのも良い傾向だし、せっかくこれだけのメンツ揃えてるんだから是非ともマジモンの「70年代の再現」とやらを実現してもらいたいもの。 (11/1)


STONESOUR
STONESOUR
SLIPKNOT でヘヴィ・ロック界最強シンガーの一人に名を連ねたCorey Taylor(vo.)を中心とするSTONESOUR 、ツインギターの一角はこれまたSLIPKNOT のJames Root で、話題性十分のデヴュー・アルバム。

路線的にはSLIPKNOT の1stをさらにオーソドックスなメタル寄りにしたような感じで、Corey の歌心が光る分「どうも今風のヘヴィロックっちゅうのはねぇ」という食わず嫌いさんでもよく噛んで召し上がれ、という感触なのだが、判り易く言うならばヴォーカルライン以外はMETALLICA のブラック・アルバム以降のへヴィ・ロックの典型的パターン。
したがってSLIPKNOT のあのありえない突進力に見られるような革新性こそないわけだが、どことなく翳りのある楽曲はグランジっ子のハートにも響くであろうし、正直一聴した感じではサッパリしすぎかとも思ったけど、聴きこむにつれメチャクチャ良くなって来たわけです。

オマケのビデオクリップも激カッコ良い1.Get Inside はザクザクの疾走感が心地よい逸品だが、この段階ではSLIPKNOT との差異はあまりないんだけど、2.Orchids ではメロウなサビが垣間見え、間にMETALLICAチックな楽曲を挟んでの8.Bother はバラード(!)で何気に奥で聴こえるエモーショナルなコーラスが凄くいい味出してる。
で、この曲以降はメタメタしさが減少して一曲一曲のインパクトこそ薄いんだけれど、メロウなギターの旋律や奔放な歌メロが良いエッセンスとなってむしろこちらの方がSTONESOUR らしさというのが出ているのではないかと思う。12.Tumult なんてこれライヴで絶対盛り上がるだろうし。
ボーナス・トラック14.Inside The Cynic に於けるドラムのクールさは何者だ。

弱点らしい弱点は歌メロのバリエーション、特にサビに持っていくパターンが少ないってことだろうか。でもそれを言うならSLIPKNOT もそうだし、何よりそれでダメになるようなやわな楽曲ではないんだけれども。
わざとSLIPKNOT という単語を多用してみたんだけど、まったくの別物だと思って聴くのなんて難しいからこそ、聴いてるうちにSTONESOUR ならではのクールネスも見えてくるのでは。 (10/26)


E
奥田 民生
東京スカパラダイスオーケストラとのコラボやフェスティバル関係への精力的な参加で頻繁に名前を見かけたのでそんな気はしなかったが何気に2年以上ぶりの6thフル。

「粋」という言葉がある。上品・下品、派手・地味、甘味・渋味などとは別の事象として存在する「粋」という日本的表現こそが奥田 民生というアーティストを形容するに最も適したものではないだろうか。
一方で洋楽っぽい邦楽という胡散臭い形容もまた、このアルバムを語るに避けられないところ。そのボーダーレスなトコロこそが最大の魅力であり、本作はそのキャリアの中でも最高傑作と言えるのではないだろうか。

そしてある意味ギターアルバムと言っても良さそうなほど、ギター・プレイ面での充実ぶりが際立っている。1.俺は知ってるぜ2.まんをじして と、のっけからエレキ・ギターの音のカッコ良さで勝負してきているが、とにかくリフが良い曲が多い。6.モナムール での情緒的なプレイも美しい。アルバム通してギター以外にも演奏が抜群にタイトで、音に説得力がある。

終盤の16.Custom18.The Standard19.ドースル? では特に奥田 のヴォーカルを堪能でき、力入れてんのか抜いてんのか、温かいのか冷たいのかわからない微妙なそのスタイルだからこそ、楽曲に見事なまでにハマっている。 (10/25)


BOUNCE
BON JOVI
普通といえば普通なんだけど、ツアーの長さなんかを考えれば前作からかなり短い間に提供された感もある8th。

このバンドを語る上で面白いのはテクニックに溺れずフレーズ勝負なRichie Sambora 奏でる艶やかな音色のギター、凡百のバンドがそうであるような単なる装飾に留まらずアンサンブルの中で大きなウエイトを占める仕事人的キーボーディストDavid Bryan、なんぼポップな曲であろうとパワフルで気持ちの良い音でヘヴィネス4〜5割増しにしてしまうTico Torres のドラムと、世間でのJon Bon Jovi 中心の歌モノグループ的イメージとはうらはらに、ロックバンドとしての類まれなるポテンシャルを持った集団であるということ。相変わらずメンバー写真にも姿のない点が万年助っ人の哀愁を感じさせるナイスミドルHugh Mcdonald も音のほうは存在感のある太い音で居場所をがっちり確保しており、つまるところBON JOVI というバンドは今の彼らの楽曲を求めるのであればハズレはほぼない状態にあるわけです。

初っ端の1.Undivided は間違ってWEEZER のCDをかけてしまったかと思う重めのリフで始まり、BON JOVI らしいサビ(裏で鳴っているギターもナイス)がキマるロック・チューンで胸高鳴るゾクゾクワクワクなノリ(これもまたこのバンドの魅力の一つであると思う)でツカミとしては申し分ないと言えよう。いきなり静かになって終わるエンディングよりもむせび泣くようなギターソロで盛り上がり続けながらフェード・アウト、と言うのを期待したのだがそういうのは時代の流れにそぐわないのだろうか。
日本人の大半が耳にしているであろう2.Everyday もゴリ系のリフにキャッチーな歌メロが乗っかるナンバー、リズムが気持ちよいがこの曲もいきなり終わる。

続く3.The Distance はお家芸とも言える『昂る和み系ソング』で、ストリングスを配したアレンジの妙も相まってこれでもかと心を揺さぶってくる。欧州の切ない叙情性を伴うそれとは違う、柔らかさの奥にスケールの大きさ、ダイナミズムを感じさせるアメリカン・ロックの醍醐味ともいえる温かなメロディは世代を超えて愛される一つの要因とも言えるだろう。9.Love Me Back To Life も同様の魅力を持つ楽曲だが、こちらはJon のエモーショナルな歌唱がより強くフィーチャーされており、詩的な歌詞もハマっている。

今作ではロッキンな楽曲の健闘ぶりも目立っており、7.Hook Me Up11.Bounce の軽快な感覚は純粋に気持ちよく、ライヴで盛り上がる情景が脳裏に浮かぶ。
一方でバラード曲も大充実で、割合としちゃ決して少なくはないものの、タルさを感じさせないのは曲の振り分け方もあるが、一口にバラードと言っても幾つも引き出しを持っていて、一曲一曲がやっぱり良い曲だからというのがポイントなんだろう。
中でも8.Right Side Of Wrong は地味目の曲なれど、個人的にはアルバムのハイライトと言えるくらい好きな曲で、アルバム中もっともRichie らしいソロも聴けるし古臭い映画みたいな歌詞も泣かせるしで、このバンドは自分が好きになった頃からずっと同じ魅力をたたえ続けているんだな、と改めて感じる。

とにもかくにもライヴが楽しみな、聴いて損ナシのアルバム。 (10/24)


THIS IS UNITY MUSIC
COMMON RIDER
未だ多くのフォロワーを残すOPERATION IVY での活躍で知られるJesse Michaels (vo.,g.)率いるCOMMON RIDER の2ndフル。

スカを基盤としたパンク・ロックという点は不変にして普遍であろうが、このアルバムから感じられるのは洗練というか、爽快というか、良い意味での聴き易さであり、アクがすっかり抜けたような気持ちの良い楽曲の数々が織り成すパンク絵巻はやさぐれロッカーからアーティストとしての自我に目覚めた頃のTHE CLASH にも通じるエナジーがある、とも思える。

楽曲のクオリティも総じて高く、スローなスカから早いパンク・ロック、スカコアっぽい曲までヴァラエティに富んでおりあっという間の30分強、オーソドックスながら抜群にかっこよいアレンジとスカならではの妙な余韻のあるサビが印象的な9.Midnight Passenger を筆頭に、パンクオヤジの音楽的素養が惜しげもなく発散されまくった一枚。 (10/24)


SOULS
HAWAIIAN 6
そのうち買ってもいいかな、と思っていたのが周りで好評なのを見るにつけ無性に欲しくなってしまった日本のソフトコアバンドのニュー・アルバム。

歌謡パンクだかなんだか言う触れ込みもごもっともな哀メロの連打連打は欧米のメロコア・シーンのそれとは確かに趣を異にしており、音の選び方の一つ一つにも独特のセンスが窺われる。
10.Autumn Leaves12.Heartbeat Symphony のイントロなんて超ナイスではないだろうか、同じく日本のシーンには琉球音階を取り入れたバンド(Indian-Hi だっけか)も存在するが、本場米国でも飽和状態気味なこの手の音楽に自分なりのオリジナリティを添加してこれだけマトモなものを作れるのは大したモノだと思う。

少し物足りなく感じたのはコーラス、ハーモニーのショボさ。この辺がもっとしっかりしていれば恐ろしく良いものになったであろう楽曲も多いので残念。ハイスタとハスキンの中間みたいなヴォーカルは巧くはないが、かすれた完全燃焼系な歌声が楽曲のムードにマッチしていて良い。 (10/24)


BY THE WAY
RED HOT CHILI PEPPERS
広大なアメリカの大地を思わせるオーガニックさと男の哀愁を前面に出した前作『CALIFORNICATION』が驚異的なヒットを記録して、さらにファン層を開拓した彼ら、本作でもその『CALIFORNICATION』の延長線上とも言える作風であるが、発売前から何度も耳にしていたタイトル・トラック1.By The Way のあまりのカッコ良さに比べると他の曲が地味で、こりゃちょっとイマイチなんじゃないのという第一印象だったのだけど、よくよく聴いてみるとやっぱり2.Universally Speaking とか6.The Zephyr Song8.I Could Die For You あたりにはえもいわれぬ魅力を感じてしまうわけで、そもそも最初に何度か聴いたときは音を絞って聴いていたせいで細やかなコーラスだとかギターのオブリとかの何気に肝となっている部分がよく聴こえてなかったせいもあるのかもしれない。ドカドカバキバキの轟音ロックでもないのに大音響でこそ光り輝く、そんな日本の住宅事情に優しくないアメリカのロックバンド、レッチリ。

今さら現在の彼らを「日和った」と非難する人がいるのかは知らないが、"歌モノもやるレッチリ"ではなく、レッチリ・サウンドのままの歌モノができるという点でこのバンドがいかにハイパーな存在であるのかが伺える7.Can't Stop10.Through Away Your Television みたいな曲はやっぱり好き。それでもやっぱりバキバキ言わしてるレッチリもまた聴きたいのだけど。

他の奴がやったらナヨナヨしてしまうかもしれないけどそれを骨太に仕上げてしまう、BEATLES の"Let It Be"ばりに切ない12.Tear もそれほどしみったれた感じにならない、そこら辺はやっぱりこのバンドならではなんだろう。 (9/7)


STILL AT WAR
TANK
20世紀末に起こったNWOBHM再結成の中で同様に再結成を果たしたTANK のその割には随分遅れて出てきた復活第1弾となる6th。

ツイン・ギター編成となってその真価を如何なく発揮した名作との誉れ高き4th『HONOUR&BLOOD』のギタリスト、Mick TuckerCliff Evans の2人がこのリユニオンに揃って参加しているということもあって、期待通りの良いリフ満載でタイトル通り現役バリバリを宣言するような一枚。

TANK と言うとAlgy Ward(vo.,b.)の"男たちの挽歌"的勇壮な歌声が肝だとよく言われるが、個人的にはこのヴォーカルはあまり好みでなく、TANK は良いリフが聴けるバンドっていう捉え方をしていたし、本作もそういうつもりで聴いたのだけど、聴いてるうちにAlgy の歌が沁みて来てしまって、やはりこのヴォーカルあってのサウンドだと思うように至った。ヘタクソなのにそれを補って余りあるダイナミズムとカリスマ性が、衰えるどころか歳くって渋味が出たせいでヴァージョン・アップしてる気配すらある。

少し残念なのがドラム。7.Conspiracy Of Hate みたいなド迫力ナンバーもソツなくこなす良いドラマーなんだけど、もっと喧しいドラムの方が曲も太鼓も活きるのは明らかであり、何よりヘタでも激しい勢いがあればそれが技術をも上回る、ってのがNWOBHM のクールネスなんだから。

とりあえずファン騙しの集金活動でもジジイが昔の輝きにノスタルジー抱いて冷や水かっ食らってしまった訳でもなく、普通の新譜として十二分に楽しめるアルバムだから安心して買った方が良い。 (9/5)


CORE
UNITED
ヌンチャクと並ぶ日本のハードコア・メタルのパイオニア的バンドの7th。
湯浅正俊(vo.)が初めて曲作りから関わるという点に注目が集まったが、オフィシャル・サイトによれば彼もレコーディング中に「某国に拉致監禁されてしまったのではないか」と噂されるような失踪をかましたそうだ。でっち上げか、はたまた彼もUNITED のメンバーらしく奇行癖の持ち主なのかは謎であるが、それだけ強いプレッシャーの中で生まれたアルバムである、という事は間違いないだろう。

で、肝心の音の方だが、これが非常に気持ちの良い音なんで驚いた。ハードコア・メタルと言うか、要はスラッシュなんだけど、今までのUNITED とは確実に違うタイプ。もちろん、紛れもないUNITED らしい音なんだけど、全体的な無機質さが凄く際立ってる作品だなという印象。
古井時代の歌メロなんて典型例だったけど、このバンドはそれぞれのパートが聴かせるところを意識的に聴かせる能力に長けている節があって、個人的にはそれがうまく整合されてる曲はすごく好きなんだけど、逆にパーツパーツでしか楽しめない曲っていうのもあったわけで(稲津なんて声が好きじゃなかったからあの時期のUNITED 自体イマイチ感が強い)、そういう意味では本作の方がバンドとして同一の方向に向っている感がある。
そこで前述の無機質さっていうトコに戻ると、湯浅の歌唱はノッペリした感じで、歌メロが抑揚しているスタイルではないけれど、他のパートもそれと勢いだとか流れを統一して、緩急はあれど起伏のない非常に無機質な、ハードコア的(コア詳しく知らない人間の解釈だけど)なサウンドの一つの完成形とも取れるあたり、今回『CORE』というタイトルを持ってきた自信の程も窺える。

アルバム中でも9.Overcome Indecision みたいなモダンさを持った曲は凄く好きなんだけど、演奏が非常にタイトだからこそ、このカッコ良さも在り得るのだろう。 (9/5)


RED ASUNDER
DEVIATE
ご近所諸国と比べると音楽に関連するイメージがあまりにも希薄なベルギー出身のハード・コア・バンドの5th。
何となくその出自から猛烈な真性ハード・コアっぽい雰囲気があるがこりゃメタルでしょ、という部分が大半を占めており、ここ最近のSLAYER をデフォルメしたような(別に貶すわけではなくって、そんだけSLAYER が凄いわけなんだけど)サウンドは、メタルのリスナーにも大いにアピールすると思われる。

リフにしろ何にしろ、アルバム全篇、斬新なものはひとっかけらもないんだけど、それでも好きなタイプの音なんで相当に楽しめる。って言うか、楽曲作りの能力はかなり高いんだけど、それに伴う音が出来てないだけ、みたいなトコロがあって、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムと各パートがもうちっと迫力あれば全然見違えるようなバンドになるのではないだろうか。6.Obilivion の禍々しさとか7.Brokendown Palace のスピード感なんかは凄く良いと思うし、ありふれた感じのモノではあるけど、8.Subscription To Your Paradise みたいなリフは好きなんだけどあと一押し足りない、と言ったトコロ。

機材とかエンジニアが違えば今年の10選に入れちゃったかもしれないぜ、ってくらいお気に入りなんだけど微妙な歯痒さもある一枚。ライヴで観てみたい。
 (9/5)


SAY SOMETHING NASTY
NASHVILLE PUSSY
諸事情によりお色気度が激減したものの、R&R のカッコ良さは未だ健在、品の悪さは生まれつき、みんなの憧れNASHVILLE PUSSY の3rd。

お坊ちゃんには判るまい、ないかにもロケンローな雰囲気と言動から色モノ的イメージも付きまとう彼ら。しかしながらこのNASHVILLE PUSSY 、2.Say Something Nasty6.Keep On Fuckin'8.Keep them Things Away From Me など極端な例を挙げずとも"超AC/DCタイプ"なハード・ドライヴィンでストロングなR&R を身上とする至極真っ当なバンドであって、しかも本家AC/DC よりもここのBlaine Cartwright (vo.,g.)の方が"歌える"って点でとっつき易いシンガーとも取れるのである意味では全世界でプラチナ連発してもおかしくないのだ。歌詞の壁か。

過激な歌詞とBlaine のワイルドなヴォーカルよりもさらに前へ前へと目立ちまくるRuyter Suys (g.)のギター・プレイも実に強烈で、そのブルージーなリード・プレイからノリノリなブギー・リフまでカッコ良さに溢れた弾きっぷりは神々しいほど。
そのギターも含めて、恒久的に変わらぬスタイルなようで、しかし徐々に普遍的な米国ロックの持つ気だるさが顕著になっているのもまた、バンドがどんどん力をつけている証であるのかもしれない。

とりあえず4.You Give Drugs A Bad Name なんてタイトルを付けるバンド側のセンスと、その曲に「禁じられたドラッグ」という素敵な邦題をあてがったビクターの見事な連携に敬意を表します。 (9/5)


LEAVING THROUGH THE WINDOW
SOMETHING CORPORATE
drive-thruレーベルから鳴り物入りで登場したSOMETHING CORPORATE。

ジャケを見れば判るように、シンガーのAndrew McMahon がピアノやハモンドの類を兼任している辺り、同レーベルの中では異色とも言えるかもしれないが、そのAndrew の声質は紛れもないdrive-thru 声で、そのマイルドな歌声と気持ちの良いハーモニーはそれ目当てでレーベル買いしてる向きにはビンゴな高いレベルにある。

しかしながらこのSOMETHING CORPORATE 、エモとかそこら辺に括るよりも色んな意味でアメリカン・ロックしてるバンドであるなって印象が強い。前述の鍵盤楽器も効果的に用いられているし、一方でギターもしっかり鳴ってるし、曲は総じて良いしでまるでヴェテランみたいなしっかり自分の持ち味を見据えたアルバム作りは大したもんだ。

一番の魅力であるメロディも胸キュン度高いので"放課後アメリカン・ポップ・ロック"の明日を担うであろう彼らの今後は要チェック、下校放送や地方名物夕方を告げる役所の音楽にはこのバンドを用いるのが今後のトレンド。わざとらしいヒーリング・ミュージックよりも欧米ロックかぶれはこういうので和んで癒されるもんです。 (9/5)


UNFINISHED BUSINESS
SHY
オリジナル・メンバーに拘りを持つファンにとっても、メンツがどうであれ良いものが聴ければOKという向きにも、Tony Mills(vo.)の歌うSHY の新譜で昔ながらのHR サウンドが展開されている、というのはとても素敵なプレゼントではないだろうか。期待が強すぎた前作よりもさらに期待してしまった一枚。

世界中に熱心なファンは多々あれど、こうしたメロディアスなハードロックというのはもはや流行の最先端と言えるものではないし、SHY の名を知らぬロック・ファンも大勢いるだろう。
そんな21世紀、この『UNFINISHED BUSINESS』はある種の魔法みたいなものだ。1.Skydiving を聴けば気持ちよいHR世界から抜け出せない。Tony の素晴らしいヴォーカルが冴え渡る美しいメロディ・ラインを持った曲だ。本人がいくら熱意や意気込み、信念といったものを語ろうとそれで完成した音楽がクソだったらファンの真摯な気持ちを悪用した集金行為と言われてもしょうがないけれど、この曲を聴いただけで此度のSHY 再終結がここに来て意義のあるものに結実したと私には思える。

そして先行シングルにもなっている3. Breakaway は王道的なアップ・テンポのHRチューンで、やはりTony の素晴らしい歌唱と、そしてこの曲ではSteve Harris(g.)のエッジの利いたプレイが光っている。この曲もなかなか良い曲だ。全体的に一曲一曲が長い割には、冗長なイメージがあまりないアルバムで、それだけ曲が良いという事もあるかもしれないけれど、アレンジも手際よく纏められている成果であろう。

しかし何と言っても本編のラストを飾る10.No Other Way が一番のお気に入り。この曲の中盤以降はこういうリードギターが好きなんだよと心から感じる事しきり。

「今さらSHY かよ」と言われたら「今だからSHY だろ」と爽やかに返せる、見事なアルバムだ。
しかし本CDの最大の笑いどころは解説なんだろうな。ミッシング・リンクかよ。 (8/30)