review                                  戻る  TOPへ

-2003 vol.2-

NOT 4 SALE
SAMMY HAGAR AND THE WABORITAS
ヴォイスオブアメリカ、Sammy Hagarの最新ソロアルバム。ツアーも共に回ってるTHE WABORITASをバックに従えてのスタジオ盤。

彼の永い永いキャリアの中でVAN HALEN時代はほんの一部に過ぎないんだろうけど、その一部ってのは大きなものなんだろうな、とか考えながらニンマリと楽しめるアルバム。VAN HALENぽいってのとも彼がバンドに持ちこんだってのとも違うんだろう、両者が持って生まれたアメリカンHRのドライで爽快でスケールがでっかくて人懐っこい感覚、ってやつが惜しげもなく吐露されている。
偉大なシンガーのソロアルバムってのはどうしても歌唱にばっかり耳が行ってしまいがちなんだけどこいつは曲が揃いも揃って良い。それも歌メロだけじゃなくってギターやキーボードも大活躍、トータルなバンドモノとして素ん晴らしいとハナマルをあげたくなる出来。

ダイナミックで重量感のある1.Stand Up で素晴らしい舞台の幕は上がる。スリリングな雰囲気から一転してメロウなサビへと雪崩れ込むお家芸ともいえる展開がバレバレなんだけどやっぱり心地よい2.Hallelujah はアルバムになくてはならない程の存在感ある一曲。
3.Halfway To Memphis はこれといって特徴のないバラード(白蛇のカヴァーでつか?と耳の穴をかっぽじってしまう冒頭とか特に)なんだけど、それなのに凄く良いのはやっぱり歌が凄いからなんでしょう、ズルいけど聴き入ってしまう自分は否定できず。
エヴァーグリーンな雰囲気が古き良き思い出を呼び起こす4.Things've Changed もまた「来たか!」ってぐらい古典的な楽曲なんだけどうっとりしてしまうわけさ。5.Whole Lotta Zep はZEPメドレー、お口直しっていうかお遊び的要素が強いんでしょうが何気にバンドの力量が垣間見える辺りに見事な営業努力を感じる。っていうか歌うめーし。
地に足の着いたブルーズ・ナンバー6.The Big Nail はいい感じのギターが淡白にフェードアウトしてしまうのが残念ですがピアノもギターリフもコーラスも最高。全体の音作りとかがアルバム中最もメリケンチックな7.Make It Alright はもっと練りこめばさらに強力な曲になるんじゃないのってぐらいあっさりしてるけどそこら辺もやっぱりラジオで全てが始まるお国柄ならではでしょうか。
続きましてはアサヒスーパードライ系爽快チューン8.Not 4 Sale 、ハイテンションなハードロッキン・チューン9.The Big Square Inch という盛り上がるだけ盛り上がれ、みたいな流れ。じわじわ感じていた事がここで確信に変わるんだけど、このアルバムそのまま短めのショウみたいに一曲一曲の配置が絶妙で、押したり引いたり巧いことやるのはさすが百戦錬磨のツワモノ。っつう事はやっぱり、ってコトで最後はブルージーなバラード10.Karma Wheel で締めくくるエンディング。これがまたムダに効かしてるエコーもちっとも嫌味じゃないくらいに泣かせてくれちゃうんですが。

そんなこんなで終始定石から踏み外す事ない展開は人によっちゃ面白くもなんともないんだろうけど、この人たちのこのアルバムは"音楽"してまっせ。王道は王がやってこその王道なり。やっぱりな、っていう展開続きの奥底に感動が眠っている。 (11/29/2003)


SMILE
スガシカオ
ロックとは逆サイドにあるし、日本の人だし。洋楽ロックオタクであるところの僕がこの人のアルバムを全て持っているというのは人の趣向というのがいかに多様でコンプレックスなものであるかという良き見本とでも言ったら良いでしょうか。単純に声が好きってのが一番なのですが。

ファンである大部分の人は歌詞に、ねじれてるのに尖ってて、真っ直ぐなようで斜に構えてて、シンプルなコトバの持つ深みを前に打ち出すようででもやっぱり奥底にしまったままで、冷めてるようで熱くもあって、甘いような苦いような、っていうスガシカオが書く歌詞の世界に強く惹かれるんだと思うし、僕も彼の歌詞には共感だとかそういう思いではなく純粋に興味を掻き立てられる。

でも僕は詩人としてではなくシンガーとして彼が好きなわけで。確かに歌詞の一つ一つが心に残るなんてのは今の使い捨て状態なJ-POPシーンでは貴重な存在だけど、それ以上に歌詞の乗っけ方の巧さが耳を惹くっていうか現代音楽と日本語の抱えるジレンマから解放されてるって感じにサラッと唄ってる様が凄い良いのです。
ブルーズの人らはみんなそうやってることだけど、CDもリハもライヴも他人がカラオケで歌うのもみんな一緒、てのが散乱しているシーンにあってこういう事ができる人がチャート上位に食い込むのは爽快でもある。

ライヴ・レコーディングのベストを聴いてそういやレヴュー書いてなかったな、ってんで書いてみたのはいいものの、なんかアルバム評とは言えない内容になってしまったけれど、「あ、この人のこういうトコやっぱ好きなんだよな」って今さら再確認した気がするので。アルバムの良し悪しは別として(僕は全部好きって意味で)、ここまで"らしさ"が出てるのは久々なんじゃないかな、とも思うし。 (11/23/2003)


TRAIN OF THOUGHT
DREAM THEATER
変態バカテクプログレメタル軍団の7th。芸術性溢れる不吉なイメージのジャケは眼玉の奥底にしっかりバンドのエンブレムが入ってるところがちょっぴりマヌケではあるもののかなり良い感じ。

ここ数作で特に握り拳モノなのですが、この人たちは骨の髄までメタルなんだな、って嬉しくなってしまうようなアグレッシヴな曲調には文句ナシの大感動。こんだけゴリゴリのメタルが片田舎のCDショップでも面出し平積みってだけで得した気分が味わえるというもの。
リフもリードも容赦ない弾き倒しで度肝を抜くJohn Petrucci(g.)のギタリストとしての凄味は今まででも最凶とも言えるんじゃないかな。これだけ暴れはっちゃけておいて曲の雰囲気を壊さないのは神憑り的。それは当然全てのパートに共通する事なんだけれども。

あまりにもダークでヘヴィな世界観はそれでいて緻密に計算されており"狂気"ってよりかは"猟奇"って言葉の方がピンと来る、みたいな感じ。だからこそJames Labrie(vo.)のメタメタしさ全開からは一歩引いた、時に冷たさすら感じさせるスタイルがハマるというもの。メランコリックさやもっと単純にメロディで押して行くってのなら他にも良いシンガーがたくさんいるけどこの路線ならやっぱこの人でしょ。

僕ぁ『AWAKE』の「プログレとPANTERAのあいの子」って感じが非常に好きで、火のような熱さと機械のような冷たさ、その両方をバカテク惜しみなく披露しながら叩きつけるDREAM THEATERって凄いバンドだなぁ、って感動した若き日の自分がいたわけで。
それと同じようなショックを10年経った今、再びDREAM THEATERから受けているのはなんとも面白いモンです。僕がよく使うコトバですが"肉感的キャッチーさ"、メタルの醍醐味はそこにあり。
(11/23/2003)


HANDSHAKES FOR BULLETS
KINESIS
オビでの紹介のされ方があまりにハイプ臭に満ち満ちている事からしょっぱなパスしようと思ったんだけど試聴できたんで聴いてみたらこれがかなり良いでやんの。って事で即決で買ってしまったメンバー全員がまだティーンエイジャーという英国の新星。

主張がどうのこうのっていうポリティックな面はとりあえず置いといて、曲が良いんですわ。どことなく冷めたエモ加減とかがツボなUKロックの王道を行く音作り、若者のクセに(いやもう何が新しくて何が古いのかなんてよくわからないしどうでもいいんすけど)現在英米から北欧に至るまで燃え上がっているガラージ系に括るにはちっとばかし洗練されてないそのパンキッシュなノリはマニックスにも通じるものがある。要するに僕の趣味に合うってこってす。

驚くべきはギターのセンスで、1.One Way Mirror7....And They Obey って辺りで顕著なんだけど聴き手に緊迫感を伝えるエッジの利いたリフはポップな楽曲に効果的な味付けを施している。たまに何気ないフレーズがすっごく小洒落ていたりするところもお気に入り。

粒揃いな楽曲はそれなりにヴァラエティにも富んでいて、飽きさせない内容。まだまだこれからな若者たち、って事もあって早くも次作や今後に期待が持てる存在。ライヴはどうなんだろう。 (11/1/2003)


MODERN ARTILLERY
THE LIVING END
一聴してLIVING END っちゅうパンクバンドはもう居なくなったんだな、と感じる一枚。でも泣かなくたっていいさ、僕らは新たにLIVING END って飛び切りメロディックなロックバンドと出会ったんだから。
まわりくどいですが、それだけこのバンドが普遍的なメロディの強みっつうか万人受けするポップさを研ぎ澄まして帰って来ました、って事です。
先んじてGREEN DAY やOFFSPRINGが歩んだ"脱メロコア"とも言える多様化よりも自然にこなしてしまった感があるし、パンク小僧のカリスマのまま音楽としては素晴らしい拡散を続けたTHE CLASH の偉業にも似たオルタナ化には思わず舌を巻く。とりあえず5.Jimmy を聴いてごらんなさい。

もともとシンプルな楽曲が多かった彼らだけに、このアルバムの楽曲も至ってシンプルなものばかり。だからこそ、メロディの良さが光るというもの。
そのメロディが堪らなく良いんだけど、全篇に亘って聴けるのは切ないほどに優しく、身を委ねるのに十分すぎるほどオーガニックな、何だかわからないけどすごく懐かしい気持ちにさせてくれるアメリカン・ロック(彼らは米国人じゃないんですが)。8.Maitland Street とか9.Putting You Down とか11.So What とか、挙げてきゃキリがねぇぞ、って程に上質な乾いたロックには脱帽どころか頭の皮まで剥がれちまうほど惹きつけられます。ガキンチョの時毎晩こっそり聴いていたFENがクロスオーヴァーしてるんだろうな、きっと。

たった2,000円ちょっとの金で、こんなに満たされた気持ちになれるなんて安い買い物。それにしてもグレッチって素晴らしい音がするのですね。 (11/1/2003)


JADED
TO/DIE/FOR
サウナとキシリトールの国フィンランドのゴシック・メタル集団の3作目。北欧ゴシックの型からはスッポリ抜けてる軽快さっていうか露骨に80’sな、もっと具体的に言えばニュー・ロマンティック的な匂いがメランコリックな中に差し込む光、って感じで凄くフレッシュであると同時にそういう系統が音楽の入り口であった僕なんかには桂馬跳びみたいな哀愁を呼び起こした前作の路線はそのまま引き続いている。

良い意味で古臭くて安っぽいデジタルなシンセの音色、肩の力を抜いた淡白さで哀愁のメロディを唄うと思いきやここぞという場面で激情のエモエモさを聴かせるヴォーカル、これまた出し惜しみなく哀愁美旋律を奏でるギター、不似合いなようで何気にバンドのアイデンティティであると言っても過言ではないいかついドラム、どことなくアンバランスそうなこれらの要素が奇妙な一体感を成したTO/DIE/FORサウンドは前述の通り他のゴシック勢とは一線を画するものであり、なおかつ面白さが先に来た前作より楽曲のクオリティが上昇して聴き応えってヤツも格段にアップしていて、大満足の一枚。
突出した楽曲ってのはないけど色んな表情を見せるところとか、余計な曲やしつこい演出がないところは他のバンドが見習うべきところとも言えるだろう。聴き終えた後のえもいわれぬ爽快感はそれだけアルバムに深くのめり込めた結果って事。 (11/1/2003)


SOUNDCHASER
RAGE
Victor Smolski(g.) のインプットと老舗の持ち味とが華麗なるアウフヘーベンを見せ、新生RAGEの真骨頂とも言えるメロディ、緻密さ、推進力が見事だった前作は古くからのRAGEファンのみならずHM好きの多くを満足させる素晴らしいアルバムだった。そんな最強ラインナップでもこのバンドの一番の良いところである安定したリリース・ペースが保たれてるのがやっぱり嬉しい、そんな最新作。

失礼ながらすっかり過去のバンドと思っていたRAGEに再びドップリ浸かりこんでしまった前作はホントよくそこまで、ってほどに何度も聴きなおした力作だったので、今回もかなり期待してはいたけど正直あれほどのクオリティはなくても許すよ、なんて贅沢リスナーらしい生意気な心構えでいたわけです。
ところがどっこい、これまた素晴らしいアルバムだから堪らない。3ピースならではのタイトな演奏はもとより、楽曲の完成度も大充実、Victor はこのバンド入る前から90年代モダン・へヴィネスとプログレがかった複雑さとを併せ持った上にクラシックの素養があるという変わったギタリストだったわけですが、それがRAGE特有のストレートでもどこかヒネた音楽性と非常にマッチしていて、融けこむどころか核になってるところが凄い。今作は特にギターのトーンも良いし。
それからMr.RAGEであるPeavy もデヴュー当時からは信じられないくらいに強力なヴォーカリストになったもんで、METALLICAのJames にも通じる説得力は欧州でも屈指と言えるんではなかろうか。大合唱必至のサビだけでなく、Aメロ、ヴァースに至るまでそこいらの守護神伝劣化コピー系ジャーマン/北欧バンドとは違って「おぉ、そう来るか」っていう意外性のある歌メロ(フックってのはそういうもんでっしゃろ)も優れもの。

「大陸型FIGHTだ!」とガッツポーズが出そうになる4.Soundchaser 、有無を言わせぬ突進力に感無量の5.Defenders Of The Ancient Life 、奇妙な緊張感が支配する6.Secrets In A Weird World の流れは個人的なハイライト。つっても他も捨て曲ナシのハイ・クオリティ、でも最後のインストはPC-98時代並みの安っぽい音じゃなけりゃ良かったのにな、とは思う。 (11/1/2003)


BLACKOUT
DROPKICK MURPHYS
ボストン発、マッチョでケルティックなパンク野郎共の4th。

前作でアイリッシュ魂漲るバグパイプやティンホイッスルの哀愁の音色をいかついOiパンクに交えるというサウンドの完成形を披露したDKM。それは我々怒れる労働者の代弁者たる彼らがミュージシャンとしても文句ナシで一級品である事を証明した記念すべきアルバムでもあり、事実ここ日本でもメディアの扱いが良くなったりそこそこの売り上げを残したり、果てはフジロックで大盛り上がりのステージを炸裂させたり(メッタクソ観たかったぜチキショイ)と、バンドとして一つの成熟期を迎えたとも言えるんじゃないかな。FACE TO FACEとのスプリットもかなり冴えてたし。

そんな良い状態にあった彼ら、前作で新入りながら大活躍を見せた若きバグパイパーが早くも結婚退社したそうでどうなる事かとハラハラさせられはしたものの、蓋を開けてみれば今までよりもさらにルーツ・ミュージックの要素が色濃いものとなっている。その中でも力強さを微塵も損なわないところはフォークなり、カントリーなりを完全に消化しているからなんだろうなと思う。付け焼刃的な味付けではなく、ごくごく自然体なところがパンクの、そしてロックの醍醐味なんだよと言い聞かせるかのような楽曲の数々はそのキャリアの中、ライヴに次ぐライヴで培った精神の賜物であろう。

歌メロもバックもどんどんキャッチーになって来てるんでそこら辺も人気の理由なんだろうけど、やっぱり最大の魅力は"熱さ"。そこに共感できるか嘲笑しか湧かないか、ってのは人それぞれだろうけどこの男気には惚れ惚れしますわ。12.This Is Your Lifeなんてもの凄くシンプルなのに胸にガツンと来るし。
THE CLASH直系のパンクからスタートして、いまや確実に独自のサウンドを築き上げた彼らのオリジナリティが垣間見える14.It's A Long Way To The Topもオマケにしとくには勿体ないくらい出色。

コ汚ねぇ作業着のままパブでビールガブ飲みして、誰が歌い始めたのかいつのまにか大合唱になって、千鳥足で向う家でする事ったら翌日の仕事に備えて寝るだけ、夢とか希望とかはないかもしれないけど、仲間がいてアンセムがある。生きてるって素晴らしいんだぜ。 (10/3/2003)


A LETHAL DOSE OF AMERICAN HATRED
SUPERJOINT RITUAL
事実上の空中分解を遂げてしまったPANTERA 、前々から不穏な噂は次々囁かれていたけど、それでもなんとかならんものかと願っていた一ファンとしては残念な限り。
そんなゴタゴタのど真ん中にいたPhilip Anselmo の今一番力とやる気を注いでいる(と思われる)このSUPERJOINT RITUAL、当たり前っちゃぁ当たり前なんすけど前作同様気合入ってます。単純に制作スパンの長さから考えればこれが今後のPhil のメインの仕事になるのでしょうか。

前作はとにかくJimmy Bower(g.)の爪弾くハイエナジーにして妖しいルーズさをも醸し出すギターのセンスにぶっ飛びまくった私ですが、今回も炸裂しまくり。ダルッダルな魅力がたまらない10.Symbol of Nevermore を頂点に、紫煙がスピーカーから出てきそうなおくゆかしきプレイを聴かせてくれる。
もちろん主役のPhil も大活躍、PANTERA でもDOWN でもそうなんだけど、この人ってこういう歌唱スタイルのシンガーの中ではずば抜けて巧いな、と感じるところがあって、表現力っつうか演技力っていうか、とにかくいろんなパターンを出してくるところが非常に飽きさせない。所謂歌メロってのとはまた別なものが要求されるスタイルにあって頭三つも四つも飛び抜けてるわな。

もろ突進メタルコアで判りやすい勢いで満ち溢れていた前作と比べるとより一層Phil の好き勝手さが弾けていて、それは都会っ子のそれとは露骨に異なる田舎っぺならではのギトギトしたハードコア・サウンドの肉付けが進んだ、とも言えるだろう。
理屈ぬきで気持ち良かった前作と、より深みが増して隠れたキャッチーさ(つってもキラキラメロディアスじゃないっすよ、肉感的なダイナミズムにも通じる耳ざわりの事ね)が浮き彫りになった今作ときて、当然求めてしまうのはライヴでしょう。観たい聴きたい暴れたい。 (9/24/2003)


ST.ANGER
METALLICA
いつの頃からか新譜を楽しみに待つのも辞めてしまったMETALLICA。今まで僕と音楽談義をした人なら一度は耳にしているであろう事だけれど、所謂四天王の中でこのバンドだけは強烈な思い入れっていうのがなくって、勿論ライヴは強く印象に残っているけどアルバムで死ぬほど好き、というのは特にないバンドでもあるわけで。
そんな理由もあってもの凄い期待なんてサラサラなしで聴いたこの最新作、ムチャクチャ良いでないの。これまたよく発言する事なんだけどKirk Hammet のギターソロに感動というものを覚えたことがないっていうのがMETALLICA に激しく入れ込めない最大の原因だったと思うし(それこそリフは最高なのにソロで台無し。ぐらいに感じていた)、それが解消されたってのもデカいんすけど何よりこの音の生々しさ、プロダクション云々だけでなく全てにおける音の濃さが最高のヘヴィネス&クールネス。こんなに破壊力のあるバンドだという事を久しく忘れていたのかも。

これはリフのアルバムでしょう。両ギタリストのかっこ良さが存分に発揮されたゴリゴリのリフ、リフ、そしてまたリフ、という展開にはもう参りました状態。皆でジャムってるまんまアルバム出しちゃいます的なノリで一曲一曲が全然コンパクトじゃないところはバンド・プロデューサー共に凄い自信だなと思うけど、その曲の長さがちっともタルさや冗長な感じに繋がらないんだから実際たいしたもんだ。イロイロあったけど今はバンドの状態が非常に良いって事なのでしょう。

黒盤以降はテンポの緩い曲の方が好きで、ライヴじゃ"Battery"あたりもやってくれるんだし別に今スラッシュやらなくてもいいじゃん、と思ってきた僕と同じ心ないリスナーは原点回帰!みたいな評判に手を出し辛くなってるかもしれないけれど、このアルバムはゴリゴリな部分に終始するわけではなく、ここ最近での独特のユラユラした感じが良きスパイスになってるので、月並みな表現だけど総決算というか現在のMETALLICAのあるがままの姿が浮き彫りになってるって感じです。その緩急というかメリハリのつけ方はオーケストラとの共演という経験から得た影響みたいなものも大きいんじゃなかろうか。

怒りでも誇りでもなく、ただロックが好きで好きでっていう衝動だけで作っちゃったみたいなこの音が当代一流のロックバンドであることを証明してる、ってのは間違いなし。 (9/20/2003)


FIGURE NUMBER FIVE
SOILWORK
米国ニュースクールの大躍進とはまた別に、淘汰と進化の進む北欧メロデス・デスラッシュ勢。その先頭にあるSOILWORKはまた同時に現在のへヴィ・メタル・シーン全体の鍵を握る存在に成長しているんだな、というのを割り増しを続けるここ数作の完成度の高さと、それに伴う人気・注目度の上昇具合から感じずにはいられない。必須項目のへヴィネスとスピード感を楽勝でクリアした上に、持ち味とも言えるメロディックさ、そして一番重要なのは「ヘヴィ・メタルはダサくねぇんだぜ」と語る上で引き合いに出すには持ってこいのソフィスティケイテッドぶり。そんでもって欧州ならではの翳りを帯びた妖しさも堅持し続けてるんだからたいしたもんだわ。
かつてスラッシュの波が多くの後続を産み、かの大御所JUDAS PRIESTに傑作『PAINKILLER』を作らしめた歴史が繰り返され、このSOILWORK やIN FLAMES の作り出す新たな津波がメタル・シーンを盛り上げる、なんて事もあるかもしれない。

骨太なリズムとサックリしたギターも最高水準なんだろうけど、効果的なキーボードの活躍、そして何より漢っぷり漲るヴォーカル&コーラスがたまらない。これだけ濃い要素が凝縮されているのに決して押し付けがましくないのが不思議ですらあるんだけど、全てがバランス良く纏まってるって事なのかな。

前作も同じような魅力が詰まった素晴らしいアルバムだったけど、今作は初めてMEGADETH やPANTERA、WHITE ZOMBIE を聴いた時みたいな気持ち良さを感じた。何度も何度も聴き通してそいつは気のせいじゃないな、と思った。この興奮はめったやたらにあるものではない。
メタルヘッズだけで独り占めしないで全ての"いかついロック"を愛する仲間たちに興奮してもらいたい。スウェーデンにはこんなにクールな連中がいるんだぜ。 (9/20/2003)


HIGHER
HAREM SCAREM
前作『WEIGHT OF THE WORLD』はバンド名が元に戻ったって事と、かつてを思わせる音造り(楽曲自体は終始一貫HAREM SCAREM節だと思いますがね、全てのアルバムで)との相乗効果が楽曲の良さを盛り立てて、会心の一作と言って良い出来だった。つうこってこのアルバム(制作スパンもそんなに長くないし)が妙にタルかったりしようものならたちまちボロクソに言われて下降してしまうんではないだろうか、という不安すらあったんだけどそれも取り越し苦労、これも良いアルバムじゃないっすか。

聴き方・愛で方ってのは人それぞれだけども僕の場合HAREM SCAREMの聴きどころは"いかにホットであるか"に終始するもので、まだ踏みもみざるカナダの地のイメージとは似ても似つかぬ暑苦しさがギターに歌に滲み出ているところが何とも言えぬ良さだと思う。それでいて爽快感や叙情性も持ちあわせるというバランスよきアンバランスさが絶妙な魅力を放っているのです。透明感よりもCHEAP TRICK的なカラフルなイメージに凄く良さを感じる、とでも言ったら良いのかな。

そういう意味合いから言えば、もうちょっと練りとか捻りがあっても良かったんじゃないかな、と思う部分もちらほらあって、曲がコンパクトなのを悪いとは言わないけどもっと盛り上げてくれ、ってとこで終わっちゃったりとか「あら?」と思ってしまう。悶絶インストがないのも個人的には非常に残念だし。

とは言え個々の楽曲は無難なんて言葉で片付けるわけにはいかない良質のものがズラッと揃っていて、泣きの一曲2.Waited の暑さにはこみ上げるものがあるし、昔の歌謡曲的なノリがたまらない8.Lies10.Lost もなかなか暑い。最後の11.Wishing もコブシが効いてて良い。
でもやっぱり通して聴くと良いんだけど淡白な印象が残って、僕が彼らに求めるコッテリした味わいが幾らか希薄なのが淋しいところ。小さく纏まっちまったかな、という気持ちはある。 (9/20/2003)