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第一話「出会い」
作:chierin


私は、魔族の一人ルナティ・・・
魔界の中心部にあるディリック城を拠点としている。
主に魔王ラクア様をお守りする任務にあたっている。

ラクア様は、とても偉大な方なのだ。
人間をねたみ憎む魂をラクア様は魔族の肉体を与える
力を持っているのだ。
この力で、何人もの人間が悪魔へと変わっている。
この世の中は、憎しみや欲望の渦巻く汚い世界なのだろう。
だが私もかつては汚い世の住人だった・・・

そう・・・私も人間だった時があった・・


〜100年前 冬〜

両親は小さいころ戦争で亡くし・・
子供の頃は、親戚の家で肩身の狭い思いをしながら暮らしていた。
毎日暴力や外ではイジメにあっていた。
それから成人し親戚の家を逃げるように出て一人で暮らし始めた。

とても寒い日の朝だった・・・
私は雪が降る中、市場へと買い物に向かっていた。
ほぼ家から20分くらい歩き、やっと市場についた。
まだ戦争中だったので、手にできる食料はほんのわずかだった。
それから、いつものように市場の近くにある教会へと向かっていた。

その時だった・・・

ものすごい爆音が響いたのだ。私の体は吹き飛ばされ、気がつくと
さっきまで活気のあった市場は、火の海とかしていた・・・
早く逃げようともがいたが・・・体が動かない・・・
ふと周りを見渡してみると見知らぬ男たちが私の・・・吹き飛ばさせた足を持ち
興奮気味にこう言った「くくく・・・美味そうな足だ」
食糧不足と何十年も続く戦争へのストレスでこの男たちは狂っていたのだ。

「助けて!誰かぁぁぁぁ!!」

私は痛みを忘れ泣きじゃくり助けを呼んだが、周りは火の海
誰も助けてくれる状態では無かった・・。
しだいに男達は私に近づき、刃物を胸ポケットから出した。
「へへへへ・・・美味そうな肉だ・・」
「お前を殺して食ってやろう・・・」

「やめて!こないでーー!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
「・・・・・・・・・・・」

そして私は男達に殺された・・・・。

あれから私は暗闇に落ちた・・・
何故か光の無い空間に私は閉じ込められた・・

「ここは何処?」
「私は死んでも孤独の苦しみを味わなければいけないの?」
「苦しい・・・辛いよ・・・」
「やっとあの苦しみから逃れられたのに・・・」

時も流れない空間の中で私はもがき苦しんだ。
そして次第に次第に・・・
男達を憎み憎み・・・次第に人間自身も憎み始めた・・・

「あぁ!憎い・・憎い!!」
「私は人間に殺されるために生まれてきたっていうの?!」

「・・・・!?」

あるとき暗く冷たい空間に青白く眩い光が差し込んできた。
その方向を見てみると、とても長身で白銀の綺麗な髪をした美しい男が
私の目の前に現れた・・・。
実体の無い私は、魂で男に近づきこう言った
「あなたは何者!?」
「あなたは、また私を殺すのですか?」

男は、すっと私を引き寄せこう言った
「お前は人間が憎いか?」
「お前は生きてきた中で、何も楽しいことはなかったろう」
「思い出せ・・どんなに憎い生き物か人間が・・・」
「思い出せ・・・思い出せ・・・・・・」

私は過去にあった全ての憎く思う出来事を走馬灯のように思い出し始めた。
「はぁはぁはぁ・・・何故こんな事を思い出させるの!?」

かたわら、男は赤く目を光らせ呪文のようなものを唱え始めた。
私はどんどん気が狂い始め、実体が無き私の体は燃えるように赤く熱く
なった。とても苦しくもがきこんだ瞬間、実体が無かった私の体が激しく
光り実体が浮かび上がってきた。

「う・・うぅ・・うああぁぁぁぁ!!」
苦しさのあまり私は目の前の男に倒れこんだ。

「ううぅ・・・・」

意識がもうろうする中男はこう言った
「私は、魔界の王ラクアだ・・・」
「普通の人間は自分の憎き力であまりに苦しく、完全なる魔族に
ならず、醜い悪魔になるのだが・・・」
「お前はよほど強い力を秘めているのだろう」
「そうだ・・・美しいお前にルナティという名を授けよう」
「怪しく輝く月のようにお前は美しい・・ルナティ」
「これからは私の側で魔族として生きるがいい・・」

こうして私はラクア様のお力で魔族としての力を手に入れる
ことが出来たのだ。

今日もラクア様の側に付き、あの儀式を見るたび私は思う・・
だいたいの人間が魔族へと変わった時、全ての記憶を失い
脳の無い下僕になってしまうのだ・・・
私は何故記憶を失う事無く、魔族の肉体を手に入れられたのだろう・・と・・

第一話「出会い」終わり

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