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第十四話「掛け替えのない存在」
作:chierin
初めてだ・・・こんなに満ち足りた気分で起きるのは・・・
魔族だった頃は、あの方と居られて幸せではあったが同時に不安でもあったしな・・・
闇はいつも暗くて不安定な物・・・
光は私の不安を消し去り、満ち足りた気分にしてくれている。

「コイツのお陰だな・・・ふふ」
ルナティは隣に眠るセルフィの頬にキスをした。
「ん・・・んん・・・・・・・くすぐったいなぁ・・・」
「ふふ、おはようセルフィ」
目を擦りながらゆっくり起きあがった。
「ん・・・おはよう、ルナティ」
〜 人間界 〜
今日も活気だっている朝市。
そこには一生懸命お手伝いをするアイシャの姿があった。
「うんしょ〜うんしょ〜リンゴ重いぃ〜」
リンゴがいっぱい入った箱を重そうに運ぶアイシャを見かねて
露店のおばさんが運ぶのを手伝おうとした。
「アイシャちゃん、そんなに無理しないでもいいからね」
「いいのいいの!ルナお姉ちゃんが戻ってくるまで、私頑張るんだもん!」
「お姉ちゃん向こうで頑張ってるんだから私も負けてられないもん」
「うふふ、アイシャちゃん負けず嫌いね」
「そうかなぁ?」
「まぁ〜いいやぁ〜!さぁ〜今日も頑張っていきましょー!」
そう言いながら空を見上げた。
「あれ?向こうの空が黒い?雨雲・・・かな?さっきまで晴天だったはずなのに」
黒い雲は、みるみるうちに空一面に広がってきた。
そして雷を鳴らし始めた。
ゴロゴロゴロ・・・・
朝市に来ていた人々は近くの店などに駆け込み、露店主は品物を片付け始めた。
「おいしょ!おいしょ!せっかく運んだのにもう片付けちゃうのか〜」
「ほらっ、アイシャちゃん!もういいから早く行きなさい!」
「雷危ないでしょう」
「いいの!お片付けもちゃんとしないとね」
「いいから!・・・!?ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
目の前にいたおばさんが一瞬のうちに消え去った。
アイシャはその光景を何が起きたのかわからず呆然とした。
「クククククッ・・・お前ルナティを知ってるか?裏切り者の奴に用があるんでなぁ」
なんとそこには、ラクアの姿があった。
「あ・あんた、な・・なんなのよ!!」
アイシャは怯えながらも懸命にこらえた。
「ふん、ガキに用はない!そこをどいてもらおう!」
ラクアはそう言うと、アイシャに手をかけ呪文を唱えようとした。
が、ラクアの動きが止まった。
「・・・クククッ・・・そういうことか・・・・」
「お前、ルナティと関わりがあるようだなぁ・・・使える・・・クククッ」
「な、それがどうしたって言うのよ!」
「ルナティは心底お前を気に入っているようだ・・・利用させてもらおうじゃないか」
「や、やめてよ!離して!!ルナお姉ちゃん!!助けて!!!」
「うるさいのう!黙れ!!」
そう言うとラクアはアイシャに眠りの呪文をかけた。
アイシャは眠りにつく前、心の中で懸命に助けを呼んだ。

「クッハハハハハハ!これであの女も私の手の内に落ちたようなもんだのう!」
「さあ、魔界へ戻り私の力をもっと高めねばな・・・楽しくなりそうだ・・・」
「クッハハハハハハハハ!!」
〜 天界 〜
『た・・・助けて・・・!』
風の声なのか微かな声がルナティの耳元で聞こえたような気がした。
「ハッ!?アイシャ??」
「どうした?ルナティ?急に慌てて」
「あ、ごめんセルフィ・・・急にアイシャの声が聞こえたような気がしたから・・・」
「え?ここは天界だよ?人間がここに来られるわけないし・・」
「うむぅ・・・気になるな・・・」
「私には地上の様子を見ることが出来ないからな・・・どうしたものか」
「レイランス様なら見てくれるんじゃないかな」
「あぁ、そうか!その手があったな。早速頼んでみるとしよう」
二人は急いでレイランスがいる城に行った。
「レイランス様!お願いがあります!」
「うむ、わかっておる。地上の様子を知りたいのだろう」
「今し方見るところだったのだよ」
「お願いします!!何か嫌な予感がするんです!」
ルナティは青い顔をしながら訴えた。
「うむ、待っておれ・・・」
レイランスは目を閉じ集中をすると目の前に手をかざし地上の様子を映し出した。
「!?」
ルナティは驚いた。
「こ、この空は・・・暗黒雲ではないか!これがあるということは・・・」
「ラクアが来たって事だね・・・・」
青ざめ震えるルナティの肩を抱いた。
「アイシャは無事なんだろうか!?」
「待っておれ・・・地上で起きた事を巻き戻して私が見てみよう・・・」
「・・・・!!」
「レイランス様?何が見えました??」
「・・・ルナティ、おぬしはアイシャとやらを凄く大切に思っておるのだろう?」
「・・・・・・ラクアはそれにつけこんでアイシャをさらったようだ」
「な!?さらっただと!!?」
ルナティは少し錯乱した。
「落ち着け、ルナティ!君らしくない」
「・・・まぁ、アイシャは君の妹のような存在だったもんね」
「あぁ、私の大事な妹だな・・・アイツには身寄りがないから・・・・」
「たぶん、過去の自分のようで放っておけないのかもしれない」
セルフィはそっとルナティの手を握り
「ルナティ・・・・僕が居ることもお忘れないでくれよ」
「僕が君の側にいると誓い、幸せもすると誓った。だから・・・」
「君の大事なものは、僕にとっても大事なものだからね!」
「ありがとう、セルフィ・・・」
「・・・・こうしてはいられない!すぐにでも行かなければ!!」
するとレイランスがルナティの動きを術で止めた。
「ルナティ、焦るでない。そう簡単に人質のアイシャを殺すことはあるまい」
「ですが!今のラクア様は冷酷です!何をするかわかったものでは・・・!」
「だが、今のおぬしが行ったところで何が出来る?まだ力は備わったばかり」
「使い慣れてもおらぬのに、どうやって戦うというのだ」
「なんとしてでも助け出したいのです!!」
「仕方ない・・・セルフィが修行を行ったあの場所でおぬしも鍛えてみるか」
「心配はいらぬ。1日で1年分の力に仕上げてみせよう、この私が」
「!?1日で1年?」
「うん、僕が前に修行したって言っただろう?そこだよ。時間を自由に操れる場所なのさ」
「その分、歳は取っちゃうけどね」
「・・・あぁ、わかった。やってみよう」
「レイランス様、この私にご指導よろしくお願いします」
「・・・・ラクア様に対抗できるほどの力を私に」
「うむ・・・」
「僕も一緒に行きます!ルナティにばかり頼るわけにはいきませんから!」
「セルフィ・・・よし!一緒に頑張ろう!!」
レイランスは、とても落ち着いた口調で言い出した。
「ルナティ、私も全力でおぬしにかかっていくとしよう。覚悟しておいてくれ」
「セルフィ、今回はおぬしにも全力で全てを教えるとしよう」
「よろしいな?」
二人は声をそろえて
「はい!!」
そして私たちは、その時間を司る場所へと急いだ。
この先の修行で私は強くなれるか不安だった、だが思い悩んでも何も変わらない。
絶対に強くならなくてはいけないんだ。力も私自身の心も・・・
第十四話「掛け替えのない存在」終わり
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