戻る
第十五話「守りたいもの」
作:Chierin
あれからどれくらいこの時の部屋に居るのだろうか。
私たちは何も考えず一心不乱に頑張っていた。
セルフィは力が完全ではないが、秘められた力はとてつもない物だと神が言っていた。
魂が元に戻ったとしたら、とんでもない力なのではないかと思うと少し怖い気がした。
ただ、私の手の届かないところへ行くんではないかと不安だ・・・
「どうした?」
「あ、いや、なんでもない・・・」
「そうか・・・少し疲れたなら休んだ方がいいよ?」
心配そうに覗き込むセルフィ。
「大丈夫だ・・・」
「ルナティ、おぬし少し心に乱れが出ている。心の乱れは死を意味する」
「一つのことに集中するのだ。でなければ最大限の力など手に入らぬぞ」
レイランスはそう言うと、無数の魔法弾を放ってきた。
「は、はい!・・・」
ルナティは必死に魔法弾を跳ね返した。
「早くせぬと、あともう少しでこの時の部屋は1年を経過する」
「向こうでは1日経過だが・・・これ以上は無理であろう。ラクアのことだ何をするかわからぬ」
そうだ・・・今の冷酷なラクア様のことだ、アイシャやこの世に何をするかわからん・・・
私には考えている暇など無いのだ。セルフィも見違えるほどに力を付けた。
私も愛する人達だけのことを考えよう。愛する人達が居るこの世だけを・・・
「よし、それでよい。では、私におぬしの今の力を放ってみなさい」
ルナティは心を落ち着け、呪文を唱え始めると体の周りが青白い光に覆われた。
両腕を胸元に翳すと赤く大きな光の玉が現れ、それをレイランス目掛けて放った。
それはとてもすごい光を放ち、まるでルナティの心を表しているかのようだ。
守りたい気持ち、その中に秘めた強い想い・・・
凄い威力の魔法弾をレイランスはいとも容易くはね飛ばした。
「な・・・なんて凄い力なんだ・・・だが、それをはね飛ばすレイランス様も凄い・・・!」
セルフィは唖然と目の前に起きたことを見ていた。
「ルナティ・・・全ての力を出す勢いで私にかかりなさい」
「はい!」
レイランスは、ルナティを見たときから何かを感じていた。
ルナティにはとてつもない力があることを・・・
そしてルナティ達は厳しい修行を乗り切り、時の部屋から出ることとなった。
現時間では1日経過しただけだが、なにか感じられた。
「レイランス様、なにか微量ですが邪気を感じられるのですが・・・」
セルフィは立ち止まると周りを見渡した。
「うむ・・・おかしい・・・やはり、私が離れてしまったせいだろうか・・・」
「私は常に結界魔法を張り、周囲を感じ取れるのだが・・・」
「時の部屋に居たことで、次元の違いでその力も無効になってしまったのか」
「この気は、やはりラクア様です・・・」
レイランスは目を閉じ集中し始めた。
「うーむ・・・天界全体を見渡しているが・・・変わっている様子は無いようだ・・・」
「では、いったいこの邪気は・・・」
「何かしかけられているかもしれぬ。十分気をつけるようにな」
「はい、レイランス様もお気をつけください」
ルナティとセルフィは部屋へ戻り、仮眠をとる事にした。
眠りについてから数時間・・・どこからか声が聞こえてきた。
『セルフィ・・・』
「ん・・・んん・・?誰・だ・・い?・・・ルナティ?」
ベッドから起き上がり、隣を見るとルナティはまだ眠っていた。
「なんだ・・・夢だったのかな・・・」
ごろんと寝転がりまた眠りに付いた。
するとまた声が聞こえてきた。
『セルフィ・・・・こっちへ来い・・・・』
「ううん・・・また聞こえる・・・なんだろう・・・」
また起き上がると、セルフィは部屋を出て声のするほうへ歩き始めた。
『こっちだ・・・』
『そうだ・・・そこだ』
セルフィは立ち止まると、いつの間にか神の居た城を遠く離れ湖のほとりに居た。
『よくぞ来たセルフィよ』
そう言うと、声の主が姿を現した。
瞳は赤く、鋭い牙を持ち、筋肉質の大きな体だ。
「お前は誰なんだ?なぜ僕を呼び出した?」
「俺はルグだ。ラクア様直々の命令によりお前を呼び出したのだ」
「な、なに!?」
セルフィは急いで戦闘態勢に入った。
「いや、戦う気はない。聞いてこいと言われたのだ」
「聞きたいこと?なにをだ?お前たち敵になど言うことなど無い」
『くそっ・・・・あの微量な邪気はコイツだったのか・・・』
『だが何故天界に入れたのか・・・』
「ラクア様が申すには、お前の魂は欠けているというのは本当か?」
「・・・・・・・」
セルフィは動揺を見せたが、一切答えようとしなかった。
「ふむ・・・セルフィよ、ラクア様を見たとき何か感じ取れなかったか?」
「・・・・・・・」
やはり何も答えようとしなかった。
「ラクア様の魂もお前のように欠けているそうだ」
「・・・・・!?」
「これがどういう意味かわかるか?お前の魂が・・・」
急に声が変わった。聞き覚えのある声だ。
「なっ、お前、ラクア!?」
セルフィは慌てふためいた。
「クハハハハハッ!!お前気づかなかったのか!?間抜けだのう!」
「だが何故ここに入れた!?天界はお前のような魔族など入れないはずだ」
「ふん。そんなこともわからんのか」
「さっきの獣は、神獣なのだよ。クククク」
「!?」
「奴の魂をゼクトア様が喰らい力を手にし、私は獣に乗り移り天界へ入らせたのだ」
「魂だけの私だ、神獣の体を借りれば難無く入れたのだ・・・クハハハ」
「くっ・・・なんてことだ・・・・・・」
「お前、何が狙いなんだ!?」
「フフ・・・最初の質問の意味がまだわかっていないようだが」
「こうすればわかるか?」
ラクアの操る神獣がセルフィの両腕を掴み自由を奪った。
神獣は口を開けると、そこからどす黒いおどろおどろしい魂が姿を現した。
するとその魂はセルフィの胸の辺りで止まり、ゆっくり胸へと入ろうとした。
「な!何をするんだ!?やめろ!!」
何度も抵抗をしたが神獣はビクともしない。
「おい!そこで何してるんだ!!!」
血相を変えたルナティが飛んできた。警戒するように少し遠目にいる。
「ル、ルナティ!」
「今助けてやる!!」
セルフィが捕らわれていることを確認すると、すぐセルフィのいる所へ飛ぼうとした。
が、結界がかけられ助けに行くことが出来ない。
「結界!?セルフィ!!」
ルナティの頭に直接語るように声が聞こえてきた。
『クハハハハ!お前が来ることなどわかっていたこと!結界を張っていて当たり前だ!』
「ラ、ラクア様!?」
ルナティは驚いた。結界に阻まれながらセルフィの様子を見た。
『私がここに来た理由が聞きたそうだのう、ルナティよ』
『よ〜く、見ておけ』
ラクアの魂が再びゆっくりと動き出し、セルフィの胸の中へ入ろうとしている。
「や、やめろ!そんなことをしてどうなるっていうんだ!!」
阻止しようと必死に結界を叩いたり、魔法を打った。だが効き目が無い。
「くそっ・・・どうして破れん!」
「ご、ごめんよルナティ!僕が何も警戒せずにいたからこんなことに!!」
「僕は、ずっと気づかなかった!ラクアの魂は闇の邪気で覆われ自分のものと感じ取れなかった!」
「だが、近づくにつれわかる!これが僕の魂の欠片だと!!」
「な、なんだと!?ラクア様の魂がセルフィのもうひとつの魂の欠片だったと!?」
『やっと気づいたか!クッハッハッハッハ!!』
『ゼクトア様はとうの昔に感づいておられたのだ!』
セルフィの胸の中に闇の魂が入り込んできた。ズブズブズブ・・・
「ぐああぁぁぁぁ!」
「セルフィーーーーー!!!」
すると、遠くのほうから凄まじい威力の光の矢が飛んできた。
ルナティを阻んでいた結界が破れ、ルナティは急いでセルフィの元へ行った。
が、時はすでに遅し・・・
「ルナティよ・・・お前の愛しい男、私の力には敵わぬようだ」
「どうだ、見てみろ。この男、私の意志で思いのままに動く・・・クッハッハッハ」

見た目はセルフィだが、冷酷な話し方からしてラクアのようだ。
その光景を見たルナティは肩を落とし愕然としていた。
「間に合わなかったか・・・ルナティよすまぬ」
そう言ってレイランスが姿を現した。
「クッハッハッハ!もはや神などゼクトア様の敵などではないわ!」
「ぬう・・・ゼクトア・・・それほどまでに力をつけてきたのか・・・!」
レイランスが少し動揺を見せた。
「さて、この体いいように使わせていただこう・・・十分魔術に絶えられる体になったしな・・・ククク」
「おっと、そうであった・・・あのアイシャとかいうガキだが」
「おそらく今頃餓鬼達の餌食だろうなぁ・・・クッハッハ」
恐ろしく不気味な笑いをしてセルフィの姿をしたラクアはその場から消え去った。
「餌食だと!?こうはしておられん!早く行かなくてはアイシャが!!」
すぐに飛び立とうとするルナティをレイランスが止めた。
「待て!ルナティ!おぬしが行ったとしても敵わぬ相手だろう!」
「レイランス様!敵わぬ敵だとしても私は行かなければいけません!」
「その為に修行も耐えてきたのです!!・・・この先、世界がどうなるか私にもわかりません」
「ですが、限界まで頑張りたい・・・!なんとしても大事な人を救い・・・」
「この世も救いたい!!!」
「うむ・・・おぬしのその強い想いしかとわかった、行くがよい・・・」
「私はここから離れることは出来ぬが、遠くから見守っていよう」
「ありがとうございます!!」
ルナティは、レイランスの言葉を胸に魔界へ飛んでいった。
レイランスはルナティの秘めた力の解放は近いと感じていた。
だが、それがどんな力なのかどんな物なのか誰にもわからない・・・

第十五話「守りたいもの」
戻る
Copyright (C) 2008 kaito, All rights reserved.