第十六話「魂」
作:Chierin
『ここはどこだ・・・・私は一体・・・』
『暗く長い時を過ごしてきたような気がする・・・だが、何か暖かい物があったような・・・』
『私は一体誰なのだろう・・・何かを忘れているような気がするのは何故だ・・・』
『あぁ・・・今何か暖かい光を感じた気がする・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぐっ・・・少し頭が痛いのう・・・・ふんっ・・・」
「まだ奴の意識が残っておるのか・・・だが、それももう少しで・・・ククククク」
セルフィの魂は必死に意志を保ち、もう一つの魂ラクアを探していた。
『ラクア・・・・ラクア・・・・何処なんだ・・・』
『このままでは、僕の意識も失われてしまう・・・その前に・・・お前を見つけないと』
『ラクア・・・お前はルナティを愛していないのか?同じ魂のはずだ愛していないはずはない・・・』
『出てくるんだ・・・!』
『私は・・・誰だろう・・・ルナティ・・?誰だ?愛してる?何をだ?』
『ラクア!?いるのか!?どこだ??』
ラクアの声が微かに聞こえてきたが、すぐに消えてしまったようだ。
記憶は無くなってしまったのだろうか、だが意識だけは微かに残っているようだ。
『ラクアが僕に触れてくれれば・・・もしかすると記憶が・・・』
『・・・・』
その頃、ルナティは向かってくる敵を倒しつつ魔界へ向かっていた。
そして、魔界城へ繋がる門へ到達した。だが、そこには何千もの魔獣達が行く手を立ちはだかっていた。
光の使者となったルナティでは、もう一度魔界の門をくぐるには相当な力が必要だった。
そんな時
「ルナティ様ーーー!私たちもご一緒させてください!!」
「天使達!?お前達大丈夫なのか!!?」
「はい、大丈夫です。この門は私たちの力が必要でありましょう」
「だが、そんなことをしたらお前達・・・」
「いえ!お力になりたいのです!お願いです!!」
ルナティは少し考え込んだ。だがこの門を乗り越えなければ城へ辿り着けない。
「・・・・・・・・・・すまぬ」
「わかった・・・頼む・・・・」
「有り難うございます!!では、参りましょう」
十人の天使達は、門を守る魔獣達の方向に並び聖魔法を唱え始めた。
その様子を見ると、ルナティは羽を生やし羽ばたき飛び上がった。
天使達の放った魔法は、数千の魔獣をなぎ倒し門をこじ開けた。
だが、その引き替えに天使達は気力を失いその場に倒れ込んだ。
魔界の門は、生身の人間を埋め込んだものなのだ。だからもしルナティが門を破っていれば
光の使者であるルナティは人間を殺したのと同じようになり、持っている力を全て失うことになるのだ。
「すまない!天使達よ!恩は忘れぬ・・・!!」
ルナティは天使達によって開けられた門を羽ばたきくぐると、急いで城へと向かっていった。
『・・・ルナティ・・・・僕は君を愛している・・・失いたくない・・・』
『君がここに近づいている事が感じるよ・・・だけど・・このままじゃ・・・』
「くっ・・・また頭が痛い」
「ラクアよ・・・まだなのか・・・魂はまだ結合せぬのか・・・」
「はっ!ゼクトア様!まだのようです!」
「ぬぅ・・・我の封印を解くにはお前の完璧な魂が必要なのだ・・・」
「わかっております。ですが・・・・」
『・・・あぁ・・・苦しい・・・ここはどこなのだ・・・』
『ラクア・・・僕に触れてくれ・・・お願いだ』
『触れる?・・・どうやって触れるというんだ・・・こんな暗闇の中・・・』
『暗くない・・・僕の光を感じてくれ・・・強く想うこの光を・・・!』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・んっ・・・』
『この感覚は一体・・・暖かく気持ちいい気分だ・・・』
『この女は・・・ルナティ?・・・あぁ・・・お前は・・・・・』
ラクアの魂は少しずつ記憶を取り戻してきた。
そして、今の状況がどれ程まで危ないのかなどセルフィの記憶と共に把握した。
『そうか・・・私は、セルフィお前の片割れだったのか・・・』
『私は闇の住人として生きてきた・・・だが、もうそんなことはどうでもいい』
『ルナティと出会った私は愛というものを知った・・・その為に』
『その為に、私はゼクトアを裏切ろうとしていた・・・だがそれを阻止された』
『そして私の意識は閉じこめられ、邪心だけが表に残った』
『いや・・・セルフィ、お前のガード魔法が私の意識を守ってくれていたのだろうか・・・』
『あぁ、僕の魔法が役に立っていたのだね。良かった・・・』
『あとは、僕たちが結合しなければならない。じゃないと・・・』
『だが、私とお前が結合すれば、どちらかの意識が消えなければならない・・・』
『そして、おそらく結合したらゼクトアの思惑通りになってしまう・・・』
『うん・・わかってる・・・・でも、それを逆に利用できないだろうか』
『どういうことだ?・・・あぁ、そういうことか』
『やってみるしかないよ。じゃぁ、結合しよう』
『僕達は元に戻るんだ・・・愛する人の為に・・・』
『あぁ・・・そうだな・・・』
二つの欠けた魂は、元に戻るべくゆっくりとくっつき始めた。
ラクアの黒くくすんだ魂は、セルフィの光り輝く魂に触れると闇が浄化されるように少しずつ光輝きだしてきた。
『あぁ・・・なんなのだ・・・この気持ちが洗われる感覚は・・・』
『セルフィ・・・お前の全ての思考が流れ込んでくる・・・うむ・・・』
『私はお前の影のようなものだ・・・表にいてはいけない存在・・・』
『・・・・いいのだ、私はお前に吸収される。それでいい・・・それでいいのだ』
『現にルナティは光を持つお前を好いておる。そのお前が居なくては自信を喪失するだろう』
『私のことはいいのだ・・・お前は私・・・私はお前だ・・これからもずっとそうだ』
『ルナティを頼む・・・』
ラクアは、セルフィに語り終わると完全に魂は交わり大きな輝く魂となった。
その頃、セルフィの姿をした邪心のラクアは魂の交わりを感じ取ると、すぐさま暗黒神ゼクトアの元へ向かった。
「ゼクトア様!魂が交わりました!」
「おお、これで封印が解ける・・・」
壁に半身埋め込まれ石化状態のゼクトアは、結合した魂をセルフィの体から取り出した。
「クククク・・・これが忌まわしい子孫の魂か・・・この我を封印したヤツのな・・・!」
「だが、これで我も蘇られるのだ!忌まわしい人間どもをこの世から消し去ってくれる・・・!」
石になった体をギシギシいわせ、魂を手に取るとそれを喰らった。
その瞬間、ゼクトアにかけられた封印呪文は解かれ、もの凄い音と共に壁は壊れ恐ろしい姿のゼクトアが姿を現した。
その側には、魂の抜かれたセルフィが横たわっていた。


『グハハハハハ・・・!!これで我も自由の身だ!!全てを焼き尽くしてくれる!!』
「はっ!?今のは・・・!暗黒神ゼクトアか!?な、なんてことだ・・・復活してしまったのか・・・!!」
城の手前でルナティは立ち止まり、頭を抱えていた。
すると、頭の中に聞き慣れた声が聞こえてきた。
『ルナティ・・・聞こえる?僕だよセルフィだよ・・・』
「え??セルフィ!?何処に居るんだ!?」
『僕ともう一つの魂のラクアは一つになったんだ・・・ラクアは僕に全てを託し僕に吸収された』
「ラクア様・・・そうか・・・」
『僕とラクアは君を愛してる。それに何ら変わりはないよ』
『そしてこれからもずっと君を見守っていくよ・・・』
「どういうことだ?」
『今僕は魂が元に戻り力も戻った・・・だけど、僕はゼクトアを封印した者の子孫だったんだ』
『封印を解く方法は、僕の完全な魂を喰らうこと・・・』
「で、では・・・!お前は喰われたと!?」
『うん・・・ごめんね・・・でもそのつもりだったんだ』
『君を悲しませるのは、とても辛いけど・・・この方法でしかこの世は救えないと思ったから・・・』
「ど、どういうことだ!?」
『まだ僕の魂は汚れていない・・・この時にしなければいけないんだ・・・』
『全ての力を込めなければいけない・・・だから・・・もう・・話せないや・・』
『じゃあ・・・ルナティ・・・・バイバイ・・・・・』
セルフィの声が聞こえなくなった。
「おい!!セルフィ!!!!」
「一体、なにをしようというのだ!!」
第十六話「魂」終わり
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