戻る
第十八話「神の使者、最後の想い」
作:Chierin
大きな扉を潜ると、そこは大きな広間になっており、その奧には綺麗な彫刻が入った階段があった。
天樹界へと続く階段のようだ。
だが、行く手を阻むかのように、石で出来た守護神が数体襲いかかってきた。
それは意志があるかのように動き、ルナティの体力を奪う。
「はあはあはあ・・・」
「大丈夫かルナティ!」
「まだまだああぁぁ!!」
高らかに声を発し、魔術で剣を出し勢いよく斬りかかった。
だが、石で出来ている守護神達は、倒しても倒しても起きあがりキリがない。
「くっ・・・」
そこでレイランスは封じの術を唱えると、守護神達を少しの間だけ動けなくした。
「ルナティ、今のうちに先に進もう」
「は、はい!」
ルナティ達は、入り口の大きな扉がある部屋を出ると、上へ上へと続く階段を凄いスピードで飛び上がっていった。
その頃、下界のロディは結界を張るのも限界を感じていた。
ゼクトアは人間の憎い、苦しいという思いを喰いどんどん体が大きくなり力も増しているからである。
光の使者達も力の限界を感じてきているようで、立っていることさえもままならなくなってきていた。
「あぁ・・・・な、なんて強い力なんでしょう・・・」
「私はもうだめです・・」
一人の光の使者が倒れ身動きも取れなくなってしまった。
「なんてことだ・・・これでは結界がいつ崩れてもおかしくない・・・」
ロディも結界を支える手が震えて止まらない。
そうこうしているうちにも天から黒い矢が無数に降ってくる。
『グハハハハハハ!!!人間共よ!逃げまどえ!苦しめ!悲しめ!我がその苦しみ喰ってやろう!!』

「ぎゃあぁぁぁ!!助けて!いやぁぁぁああ!!」
人間達に無数の黒い炎を浴びせ殺すと、その苦しむ魂を食い尽くしていった。
世界中の人々は暗闇が支配する中を希望も無く絶望の中、怯えながら過ごしていた。
この状況の中、ゼクトアの体内にいるセルフィの魂は、徐々に意識を失いつつあった。
『ぐぐぐ・・・・どんどん支配され始めてきた・・・だめだ・・・・もう意識が無くなる・・・』
『無くなる前に、やらなくてはいけない・・・・・ルナティの為に・・・』
『そして・・・アイシャ・・・ルナティの愛する子・・・残りの・・力で・・・君を元に戻す・・・・・』
セルフィは意識が無くなりそうになりながら最後の力を振り絞り、持っている光のエネルギーを自らにまとわせた。
残りわずかな力でロディに話しかけた。
『・・・・・・・・・・・・・』
『ロ・・ディさ・・ん・・・』
「はっ・・・!?セルフィ様!?」
『もう・・長く持たない・・・これから・・アイシャちゃんを・・そち・・ら・・へ・・お送りします・・』
『荒い・・・転送に・・なる・・か・・もしれな・い・・ので・・・受け取って・・・く・・・ださい』
「え!?あ・・・は、はい!」
ロディは一瞬焦ったが、一か八か結界を一度外し、アイシャの受け取りに集中し始めた。
すると、目の前に光の魔法陣が現れ、ボロボロに傷だらけのアイシャが横たわり宙に浮いたまま姿を現した。
「あぁ・・・なんてことだアイシャ・・・!こんなにボロボロになって・・・」
無事受け取り、転送が完了したことを確認すると、即座に結界をかけ直した。
そして、セルフィも無事に転送が終わったことを確認すると、
自らにまとわせた光のエネルギーに最後の術をかけ始めた。
体内の異変にゼクトアは気づき始めていた。
その頃、ルナティと神レイランスは最上階の手前まで来ていた。
ここに来るまでどれだけの守護神達を倒してきたのか。
絶え間ない戦闘でルナティは疲れ果てていた。
だが、止まることは許されない。力を振り絞り上を目指した。
セルフィは暗闇の中、自分の光を信じ精一杯力を込め魔法を唱えていた。
それはとても呪文詠唱が長い神聖魔法であり、完全体のセルフィであれど高度な魔法なのだ。
「く・・・くぅ・・・全て・・・の光の・・意志・・・・我に・・・力・・を」
飲み込まれそうな自分を一心に堪え、消えそうな声で呪文を唱える。
呪文を唱えるが心はルナティと過ごした日々でいっぱいだった。
体は無く魂だけのセルフィは涙も出ることはなく、苦しく張り裂けそうだ。
この呪文は世界のためではなく、一人の掛け替えのない女性ルナティの為の物だ・・・
『ルナティ・・・君のために僕は・・・・・やり遂げるよ・・』
『どんな姿になっても・・・また君に・・・・・会いに行く・・・』
長い呪文は終盤に差し掛かろうとしていた。
それは本当にこの戦いに終わりを告げる魔法なのかまだ誰にもわからない・・・
━━━━━━その頃
最上階を目指すルナティ達の目の前に、もの凄く大きな扉が立ちはだかっていた。
黒い空へ永遠に伸びているのか、その扉の上の部分は黒い霧状なものに隠れて見えない。
この大きな扉をどうやって開くのかは、神のレイランスさえもわからないようだ。
この扉があの天樹界へ通じる事だけは確かなのだが、頑丈な扉がルナティ達を拒む・・・

「何かが鍵のはずだが、その何かがわからぬのう」
「最後の最後で進めないとは・・・!どうしたらいいんだ!!」
二人はしばし考え込んだ。
その時だった。
『・・・ルナ・・ティ・・・今どこに・・いる・・のかな・・』
「!?」
「セ、セルフィ!?」
『・・・あぁ・・・声・・聞けて・・・・嬉しいよ・・・』
『これが・・もう・・最後かも・・・・・しれ・・ない』
「一体どういう事だ!?」
『ぼ・・く・・は今・・・高度・・な・・神聖・・・魔法を・・・・唱えつつ・・』
『・・心で・・・喋りかけ・・てるんだ・・・』
「神聖魔法!?どんな魔法なのだ?」
「まて、ルナティ・・・」
「レイランス様?」
「セルフィよ、お主は全てを思い出したのであろう」
「私が生み出したセルフィよ・・・最初に授けた魔法であり最後の魔法・・・」
『・・は・・い・・・今・・のぼ・・くなら・・・コレを・・唱えられ・・る・・』
『本当の・・・守り・・たいもの・・・・を見つけ・・た・・・・から・・』
『・・・うぐ・・・も・・・・う・・・最後に・・・なって・・・きた』
「なんだって!?」
「ルナティよ・・・この魔法は私がセルフィに授けた最終神聖魔法“セントレクイエム”」
「全ての邪悪な魔を排除しこの世に祝福をもたらす魔法なんだが・・・」
「だが!?なんですか?」
「術者は力を全て失い消滅する・・・」
「!!!!!!!!」
「・・・・だ・・・だめだ!!!セルフィ!!そんなことしてはいけない!!!」
ルナティは必死に訴えたが、セルフィにはもう声は届いていなかった。
「なんてことなんだ!あぁ・・・私は・・・そんなこと願っていない・・・!!」
「うあああああぁぁぁぁ・・・・・・」
その場に崩れ落ち、声にならない声でルナティは泣いた。
ルナティの奥底に潜む力は、自身はまだ気づかないが紛れもなく光を放っている。
何かが起こる予感はレイランスも感じていた。
第十八話「神の使者、最後の想い」終わり
戻る
Copyright (C) 2008 kaito, All rights reserved.