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第二十話「記憶の中で」
作:Chierin
それは、突然と現れた・・・
とても美しく何処か寂しげな創造の女神メディーヌ・・・
その偉大な存在に神レイランスさえも一歩も動けずにいた。
「メディーヌ様・・・」
「ルナティは、私に体を預け深き眠りについた」
「・・・・レイランス、どうしてこうなったのか知りたそうだな」
「・・・・」
「うむ・・・何千年も前だろうか、私はこの地で起きている戦争に終止符を打つため」
「全ての生命の再生をおこなった」
「真っ新になった大地にやがてまた生命が誕生し、しばらくはゆっくりと豊かな時間が流れていた」
「だが、やはり・・・歴史を刻むに従って人々の欲は増し、争いが絶えなくなっていた」
「私は何千年もその光景を目にし、悲しかった・・・なぜ人々は殺し合うのか・・・」
「このまま争いが終わらぬのならと思い、私は自分自身を再生したのだ」
「再生?」
「うむ。どの時代も戦いは繰り返され、私自身同じ事を繰り返すことに心底疲れたのだ・・・」
「そして、我が身の転生をおこない、ルナティとして地に降り立った」
「戦いの真っ直中に生まれた私は、それは貧しく天上で見る地よりとても酷かった・・・」
「人間への憎悪で魔族になることを決め、ルナティの奥底に眠っていた私の意志が働き」
「真の魂は守られ、魔族へなることができたのだ」
「そこで、ラクアという最愛のパートナーを見つけ、愛する気持ちを手に入れた」
「そしてセルフィと出会い、光の使者となる。温かい心も芽生え、セルフィを愛し・・・」
「だが、そのセルフィも暗黒神ゼクトアに飲み込まれてしまい、ルナティの心は激しく引き裂かれ」
「心を閉ざし、私が覚醒したのだ」
「そう・・・私が覚醒の時、それは再生の時なのだ」
レイランスは少し驚いた表情を表した。
「この地・・・生命の再生をですか?」
「・・・あぁ、そうだ」
創造の女神メディーヌは、静かに問いに答えると大きな扉があった所をスーと静かに通り
創造を司る間へと向かっていった。
地上というと、セルフィを完全に吸収したゼクトアが大きなパワーを手に入れ
逃げまどう人間を喰い殺し、邪気を吐き散らし死んだ人間をゾンビとして蘇らせ
絶望の地獄と化していた。
「レイランスよ、私はこの地をどうしたいのか、このまま地を再構成させていいものか」
「正直迷っているのだ・・・」
「メディーヌ様・・・」
「今、地で起きている事は何度も見てきたのだ」
「また再構成をしたとしても、また争いごとは起きるであろう・・・」
「ならば・・・」
「ならば?」
「この全ての世界を無くし・・・神も女神もそして私も・・・無にする・・か」
「!?」
「それでは、生命・・・歴史を永久的に封印すると?」
「そうするしか、もう手はないだろう・・・苦しいのだ」
「私の中で眠るルナティの気持ちが込み上げてくるのだよ」
―――――そこはとても寒々しく暗い空間
暗くとても広く感じる・・・
どこかで味わった感覚だ。気持ちが悪い感覚。
何かに封じられ身動きが取れない・・・声が出ない・・・
・・・いや・・・私には体がない・・・・一体どうして無いのだ?
体がないのに苦しいという感覚がある。何故苦しいのだ。
何かを無くしたのか?私が何かしたのか・・?
誰か教えてくれないか・・・?
私は一体何者なんだろう・・・
『・・・・・ル・・ナ・・・ティ・・・』
誰だ?ルナティとは?
わからない・・・一体なんなんだ!?今の声も誰なんだ・・??
自分がなんなのかも、どうしてこんなに苦しいのかもわからない。
『苦しまないで・・・』
な、なんだ??今のは一体・・・?
不思議そうにしていると、目の前に光の帯が突然現れた。
そしてその光の帯から優しい声が聞こえだした。
『ルナ・・いや・・・君は、全ての苦しみから逃れるために殻に入ってしまった』
『その殻でも君の心の底にある苦しみまでは取り除けない』
『けど、苦しまないで。僕はすぐそこにいるんだよ』
一体何を言っているんだ?
『今はわからなくてもいい。時期にわかるから』
『だけど、君の思考で世界の運命が掛かっているかもしれないんだ』
運命だと?何もわからない私に何をしろというのだ。
『このままの君だと世界は消滅するんだ』
その世界も私は知らない。どうにでもなればいい。
『君の光が薄く見えづらくなっている・・・お願いだ、僕の光を感じてくれないか?』
お前の光だと?苦しいという感覚は感じられるが、観ることが出来ない。
体がないからな・・・
『目で見るんじゃないんだ。感じるんだよ。僕の光を』
『ほら、暖かくない?君を・・・ルナティを想うこの眩い光を』
何を言って・・・・あ・・・これは一体・・・

周りにあった暗闇がその暖かい光によって晴れていく感覚が感じられた。
目で見なくとも、とても強い光を感じる。強い意志を感じる。
その光は、暗闇にいたルナティを包み優しく抱きしめた。
体が無かったルナティだが、光によって体が映し出された。
記憶を無くしたルナティは、自分の手で顔を触り不思議そうな顔をした。
『これが私・・・』
光の帯が消えると、そこには男性が光を放ちながら立っていた。
『僕がわかる?』
『・・・・?』
『僕が誰かさえもわからないなんて・・・それ程までに傷が深かったんだね・・・』
『・・・僕のこの強い光の意志で君に眠る全ての記憶を蘇らせる』
ルナティの体を強く抱きしめ、己の持つ眩い光で覆う。
それは心地良い光で、そしてどことなく懐かしい。不思議な光だ。
目を閉じると何かに吸い込まれるような感覚に襲われたルナティ。
次の瞬間、ルナティの頭の中に様々な場面が蘇ってきた。
人間だった頃の記憶、虐められ惨めな思いをした日々。
親戚の叔父や叔母にも煙たがられ、毎日居場所がなかった・・・
両親が生きていた頃よく通っていた教会へ大人になってからも何度か通っていた。
それがルナティの唯一の楽しみであった。
子供の頃から親身に相談に乗ってくれていた人が居た。

いつもいつも私を見ていてくれた・・・
私はいつしか好きになっていた・・・
『・・・・・・』
え?何?私のこと?それは私の名前?
あ、あぁ・・・人間だったときの名前だね。
でも、もうあの頃の自分じゃないの・・・今はルナティっていう名前があるの。
魔族の時、愛した人が付けてくれた名前・・・
『ルナティ・・・』
懐かしい声・・・ラクア様なのね・・・
愛していたわ・・・でも何かが足りないの・・・
『ルナティ・・・』
・・・?あなたは誰?
でもどこか懐かしい声・・・そうあの教会でよく聞いていたわ。
『そうだよ。僕はいつも君を見守っていた。守りきれなかったけど・・・』
『僕は君を守らなければいけないような使命感があった・・・』
『けど、いつしか僕は好きになっていた。』
え?あ・・・あなたは確か・・・
次の瞬間、ルナティを包んでいた光が解け、ルナティは目を覚ました。
第二十話「記憶の中で」終わり
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