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第二十二話「あの頃の記憶」
作:Chierin



『聞こえるかルナティよ。』

「え?・・・この声は・・・?」

『私はメディーヌ。お前の中に宿っている。』

「メ、メディーヌ様!?」

『うむ。今はお前の意志が強いため私は表にでてこれぬがな。』
『・・・・・・・・・・・・・・』
『お前に一つ話しておきたいことがあるんだ・・・』

「はい」




その頃、下界ではレイランスが暗黒神ゼクトアのすぐ側にまで迫っていた。
ゼクトアは復活の時の大きさとは比べものにならないほど、大きく成長し
その邪気は普通の人間が触れると、即バケモノ化する恐ろしい邪気だ。
闇に溢れたその世界を目の辺りにしたレイランスは、いてもたってもいられず
背中に大きな白い翼を生やし、ゼクトアに向かっていった。



『あの人を愛していた・・・・・・いや、今でも・・・・』

「メディーヌ様?」

『・・・話すより、私の記憶を観せたほうが話が早いな』

「えぇ?」
「!!??」

次の瞬間ルナティは気を失い、光の渦へ飲み込まれていった。
意識を取り戻すと、そこはさっき居た天樹界の中にある大広間だ。

「これは一体・・・」
「メディーヌ様?」

問い掛けるが反応がない。
不思議に思いつつ何故か自然と体が動き、大広間を抜けた先にある部屋へ入っていった。
そこは、赤い絨毯が敷かれ綺麗に装飾された椅子が置かれていた。
恐らくメディーヌの物かと思われる。
そこにルナティは何の躊躇(ちゅうちょ)もなく座り込んだ。

「私は一体なにしてるんだ・・・」

すると、何処からともなく声が聞こえてきた。

「どうしたんだい?」

「え?」

いつの間にか目の前に見知らぬ人が立っていた。

「なんだい。まるで見知らぬ人を見るような顔して。」

ルナティは本当に知らない人を目の前にしてドギマギしていた。

「え?あ・・・いや、その・・・」
「その・・・あなたがあまりにも綺麗だったから見とれてたのよ。」
「レイランス・・・」

ルナティは自分の口から自然と言葉が出てきたことに驚いた。

『ええ?これは一体?レイランス様とは顔つきも喋り方も違うのに・・・』
『何故・・・?・・・私、確かに言ったわ・・・自然と口から出た・・・』

「ほら、今日も君と過ごすために早くから来たんだから・・・」
「ご褒美ちょうだいよ」

「あら、ちゃんと神の仕事はしてるのかしら?ふふ」

「あぁ、常に頭では下界の様子を見ているよ。でも・・・」
「瞳は君を見ている・・・」

「もう、そんなんでいいのかしら?ふふふ」

「いいさ」


ルナティの意識は確かにあるが、体と口が勝手に動き感情も徐々に入り込んでいった。
それは嫌な感じではなく、逆に心地よい感情だった。
急に目の前が真っ白になり、声が聞こえてきた。

『愛し合っていたのだ・・・私達は・・・』
『そう、お前が見ていたのはメディーヌとレイランスだ。』
『レイランスとは、お前が知っている神ではない。その前の神だ。』
『だが・・・運命の日が来てしまったのだ・・・』


それは、いつもと変わらないように思えた日にやってきた・・・
天樹界は雲がゆっくり流れ、風が爽やかに吹き、穏やかな時間が流れていた。
メディーヌは、そのなんでもない日々を毎日穏やかな気持ちで過ごしていた。

だが、いつも来るはずのレイランスが姿を現さず、天界の方が慌ただしく思えた。
何が起こっているのか気になったが、基本的に創造神というものは天樹界から出られなく
自ら出向くことが出来なかった。

天界では、下界の数年続いている戦争が激化し、死人が増えていることに神が頭を抱えていた。
戦争で亡くなった人間は、心に憎い気持ちを持っていることが多い。
その魂がこの天界に来ることが殆ど無く、ほぼ全て闇の住人の誘いで闇の世界へと
誘い入れられてしまう。
もしその闇に染められた魂が下界へ降りてきてしまったら、戦争どころではなく
下界は徐々に闇と化していくだろう。

数日後、恐ろしほどに闇の力が蓄えられた魂が下界へ降りてきてしまった。
人々の心に憎しみや妬み苦しみなどの感情が交差し、下界に闇の扉が少し開いてしまったようだ。
多くの闇の魂が合わさって巨大な力となり、恐ろしい怪物へと変化した。
神や光の使者達は、その怪物に挑むために下界へ降りていったが、かなりの手強さに
光の使者達は全てやられてしまい、神は深手を負ってしまった。

天界での掟では・・・もし天と地を司る神の命が危ないとき、それは世界の破滅を意味する。
それを阻止するために、神が命を落とす前に創造神が神の魂を救い、世界をリセットし再生する。
そして、神をまた生みだし世界を創造する。

『それでは・・・!メディーヌ様・・・』

『あぁ、神は命が危なくなったその時、私にこう言ってきた。』


《メディーヌ・・・私はもう長くない・・・・・・》
《お願いだ・・あの掟通り私を・・・・!!》


『私は、その時激しく拒否した。それほど愛していたからだ。』
『世界のリセットと再生の為に私がいるようなものだと、わかってはいたはずだったが』
『愛する者を自らの手でリセットするのは、考えてもみなかった・・・』

神同士愛するなどいけないことだったのだ・・・

これが最後のリセットと心に決め、私は私を封印した。



第二十二話「あの頃の記憶」終わり

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