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第八話「笑顔」
作 Chierin
あれから光の使者となった私は、人間界に降り立ちセルフィと共に人間界のベルヘルツ
という大都市に拠点を置いた。
この都市は、私のような光の使者たちが集う街であり、街の人々が崇める存在である。
その為、この都市は神の加護で守られており一切魔物が近づけないのだ。
私も日々その中で生きて行く度、暗い過去が浄化されていくように感じた・・・
夜、街の中央にある大きな聖堂の地下練習場で
今日もセルフィの指導の下、神聖魔法の練習をこなそうとしていた。
と、そこへ司祭のロディがルナティの様子を伺いにきた。

「ルナティ様、今日も練習ですか?」
「あまりご無理なさらず、夜なのですからどうかお体をお休めください」
「すまぬ・・・私には時間が無いのだ・・・」
「ルナティ様は、使者となって日が浅くお力をつけるのに焦ってはいませんか?」
「毎晩、過酷な精神修行しているようで、わたくしは心が痛いのです」
「ロディ・・・心配してくれてありがとう」
「私にはその気持ちだけで十分だ」
「・・・・私には救いたい人が居る・・・それで時間が無いのだ」
「そうでありましたか・・・」
「ルナティ様、わたくしでよければお力になります」
「いつでもお申しつけください」
そう言うと、ロディは練習場から出て行った。
「すまぬなロディ・・・」
セルフィがルナティの頭の中に話しかけ始めた。
《ルナティ、大丈夫かい?気持ちに乱れが出てるよ?》
《あまり無理をしすぎると、集中力が無くなるからたまには息抜きも必要だよ》
「わかってる・・・わかってるさ!!・・・」
「どんなに頑張ったって、すぐには習得できない魔法だってわかってる!!」
「だが、どんなことしてでも習得せねば・・・ラクア様を救うことが!!・・・」
《うん、君の気持ちは痛いほどわかるよ》
《だけど、どんなに急いでも神聖魔法は清らかな気持ちではないと発動できない・・》
《言ってることわかるよね?・・・君にはまだ闇の心が少し残っているんだよ》
「・・・あぁ・・・わかってる」
「どうすればいいんだ・・・」
《・・・・・・・・・・・・》
《今日はもう寝たほうがいいよ》
「そうだな、血が上りすぎたな、頭冷やすよ・・・」
セルフィは思った。
《ルナティは完全な光の使者ではないということか》
《これは、神の試練かもしれないな・・・》
そして、朝を迎えた。
「ん・・ん〜〜よく寝たな」
《どうだい、気分は?》
「まぁまぁ・・・かな」
すると
トントントン
ドアをたたく音が部屋に鳴り響いた。
「ルナティ様起きていらっしゃいますか?ロディです」
「あぁ、起きているぞ」
「どうした?何か用か?」
「はい、ルナティ様にお会いしたいという人が来ていまして」
「どうしたしましょう?」
「すぐ行く、待っているよう伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
数分後、待合室のところへ行ってみると・・・
そこには可愛らしい女の子が行儀良く座っていた。
「お前がそうか?」
満面の笑顔を浮かべて
「はい!ルナティ様初めまして!私アイシャっていいます!」

はきはきと元気良く答える少女にちょっとたじろぐルナティ。
「アイシャ、私に何か用なのか?」
「はい!ルナティ様にもっと街に打ち解けて欲しくて」
「私が街を案内しようかなって!」
「私はもう街の中は全て把握してるぞ」
「ううん、もっともっと私たちの生活を見て欲しいの!」
「あ、あぁ・・・」
そう言いながら、アイシャはルナティの手を引っ張って外へ連れ出した。
私はアイシャに引っ張られ、街の市場へとやってきた。
都市中心部の大きな市場だ。私は一度も利用はしたことが無いが・・・
光の使者であるルナティを見た人々は、驚いた顔で近寄ってきた。
「ルナティ様、来てくださったのですね!」
「私どもはとても嬉しゅう御座います!!」
「あ・・あぁ・・・アイシャに連れて来られてな」
「そうでしたか!良くやったぞアイシャ!」
少女は微笑みながら答えた。
「ふふ、私にかかればざっとこんなものよ」
街の人々は、新しくやってきたルナティにもっと打ち解けて欲しくて
連れて来るようアイシャに頼んだのだ。
だが、ルナティは人々と関わるのをずっと拒み避けていた。
それはずっとずっと昔の暗い過去の傷がルナティを苦しめていたせいだ。
だが、アイシャの笑顔にルナティは何かを感じたのか、拒めなかった。
そして、ルナティへの歓迎の意を込めて人々が踊り始めた。
市場はいつもの数倍の熱気に包まれ、ルナティは圧倒されていた。
アイシャも小さい体ながら、一生懸命踊っている。
見事なステップを踏みながら、ルナティのところへ近づいてきた。
「ルナティ様!一緒に踊りましょう!!」
「無理を言うな、私は踊りなどしたことがない」
というのは・・・嘘だ・・・私は昔ラクア様の前でよく踊っていた。
色々な儀式でも踊っていたが、それを気に入られ二人っきりのときも踊っていた。
私を見るラクア様の瞳が今でも忘れられない・・・
早く取り戻したい・・・
《ねぇ・・・ルナティ》
《踊ってみなよ。僕も君が踊っているところ感じてみたい》
『バカを言うな。もう踊れるわけが無い・・・』
「どうしたの?ルナティ様?踊ろうよ!」
アイシャがまたルナティの手を引っ張った。
「ま、待て!・・・」
《アイシャの為に踊ってあげなよ》
《僕の為に踊ってって言っても、聞いてくれなさそうだしね》
『何を・・・』
『ふぅ・・・』
「仕方ないな・・・1回だけだからな」
「ええ!?本当!?アイシャ嬉しい!」
人々が太鼓や笛で音楽を奏でている中、ルナティがスーっと入っていった。
そして、ルナティの踊りが始まった。
人々はルナティの情熱的なダンスを見てざわめき立った。
「おぉ、なんと美しい・・・」
「あんなに情熱的な踊りは見たことが無い!」
「ルナティ様、凄く綺麗だ」
人々が魅了される中、ルナティはラクアを思い続けていた。
『ラクア様・・・私は貴方の為に踊っています・・・』
『今貴方は如何しておられるのでしょう・・・』
ルナティの踊りはヒートアップしていく。
そして、クライマックス!美しい体を揺らしそして踊り終わった。
人々の歓声が響き渡る。
その中、アイシャがルナティに駆け寄って飛び込んできた。
「ルナティ様!アイシャあんなにキレイな踊り見たことが無い!」
「すごいね!」
ルナティのことを見ながら微笑んでいた。
一瞬ルナティは抱きつかれてどぎまぎしたが、アイシャの笑顔を見て何か心が穏やかになった。
「ふふ・・・」
「あ!ルナティ様が笑った!わ〜い!」
「笑ってなどいないぞ・・ふふ」
「ふふ、ルナティ様の嘘つき〜!」
アイシャはルナティの中で何かを変えてくれる存在な気がした。
そうセルフィは感じていた。
《僕も君を変えれるような存在になれたら・・・》
第八話「笑顔」終わり
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