かいたひと 柳家 松乃介
 
 
霧と柳、薔薇と傷痕
 
 
 柑橘色の空の上、お花畑へようこそ。
 硝子をなぞる蝶々、
 合わせ鏡の向こう側、虹色果実の苦い舌触りが今も忘れられないの・・。
 露を垂らす指先、薄い唇、爪を咬む癖。
 それを優しく愛でて紫色の刺繍をあげる。
 「これは夢なの?」
 「そうよ、これは夢、そろそろ醒めても可笑しくないのだけれど・・。」
 薔薇を摘む手には無数の傷痕。
 君の掌の中、薄紅に染まった私の胸に、生温い感覚。
 少女だった私が見た、灰を被った少年の私を見据える瞳が眩しくて身を委ねたまま、今も。
 夢幻の境に或る光の種を捜して・・ずっと。
 「未だ、続けるの?」
 「そうよ、未だ夢が終わってないもの。」
 振り向いても誰もいない・・。
 羽根を焦がす匂いと頬を擽る誰かの髪が切なくて。
 歯形の痕が恥かしくて身を伏せた。
 「崖の向こうに咲くお花が・・取れないの。」
 テレビで見て真似た色付いた仕種、緩いウエーブの先。
 終わらない波の動きの向こうの虹が消えて行くのを。
 見ているだけ、短い春が過ぎていくの・・。
 
 
 
 あとがき
 
 又々昔の作品の掘り起こし版です。
 テーマは『色』『花』です。
 やたら爪とか髪、指・・等身体の一部を使ってるです。
 こんな感じです。
 
 
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