かいたひと 柳家 松乃介
 
 
胡蝶之夢
 
 
 時は流れる、皆が同じ、有り触れた部屋の中に。
 凛と降り続ける星に、願いを掛ける。
 それは誰にでも或る、哀しい物語と為り。
 約束が過ぎ、只待ち続ける日々が始まる。
 空は緋く染まり、少し雨が降り出した蹟の小さな欠片。
 炎は美しく、想いを、蒼に巡り繰る時を。
 刃は輝き、映す、やがて旅立つ姿を。
 掲げた翼に、祈る、夢に終わる命故。
 物語は終わり、白く聴こえ続ける旋律。
 何時の頃か、闇に投げ込まれる自分が。
 星は彩られ、全て忘れられたまま。
 “見ないでくれ・・頼むから・・”
 涙で視界を遮られる、この方が不思議と見える気がした。
 夢の謳が聞こえる、誰より近く、誰より優しい母にも似た胡蝶之夢の様で。
 心を閉めた、もう、聞こえないだろう。
 試しに遣ってみようか・・ほら、もう何も聞こえない。
 人の犇めく音が重く、もう何も見たくない。
 息を止め、目を伏せ、願った。
 “すべてが・・ひとつに・・なれる・・の・・”
 急に気が抜けた様に顔が緩み思った以上に声が幼く。
 鏡の中、握る刃を持つ手が弱々しく。
 近付いて来る光が眩しくて、でも瞼を閉じる事が出来ずに、見続けた。
 “息が出来ないの・・もう判らないの・・助けて・・お願い・・
  こんなに言ってるのに・・誰も聞いてくれないの・・ねえ・・ねえ・・”
 背筋に走る感覚、心地良いが、何か違う感触。
 そして産声に似た声が頭を掻き回す。
 “・・これで・・わたしも・・すくわれるの・・”
 解き放たれる瞬間に思い出した、あの時の、約束。
 “ねがいは・・とどいた・・のかな・・”
 星は彩られ、全て忘れられたまま。
 
 
 
 
 あとがき
 
 今迄の詩的な作品の総纏めとして書きました。
 過去のテーマと共通してる部分も多いです。
 淡い感じの作品を中心に集めたので何かとぼやけた作品かも。
 こんな感じです。
 
 
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