全文章 柳家 松乃介
 
 
ACT L
 
ミライトムカシ
 
 
 最近変。
 何かが変だ。
 そう思い始めたのはいつからだったか、この街が消えて無くなる気がした。
 モノクロの街が本当に灰になって又新しいものに変わる、工事現場で街が埋まるんだ。
 こんな事を考えていたなんてお姉ちゃんには言えないけどきっとばれるんだ。
 だって私とお姉ちゃんは繋がっているから。
 
 「又、そんな曲を聴いてんの?・・全く芸が無いわね。」
 古いラジオで音を拾い流れるのは雑音混じりの古いレコードの曲の古いメロディーが部屋から漏れていた。
 だらしなく下着姿のままで仰向けになって天井を見詰めている。
 それが私、ミヤ・・と見下げるお姉ちゃん。
 「お姉ちゃんは良いと思わないの?やっぱり。」
 背中をさすり口をぽかんと開けてお姉ちゃんの方を向いた。
 こんなだらけた顔を見せるのはお姉ちゃんだけだ。
 「あんたが変なのよ、拘り過ぎ。」
 「でもでも・・良いでしょう?やっぱり今に無いものがあるし、それにそれに・・えっと・・。」
 私がそれを言い終える前にやっぱり、お姉ちゃんは私に背中を向けた。
 「はいはい。」
 ぴったりとしたジーンズがお尻を振っていた、お姉ちゃんは私が見ても色っぽかった。
 ・・何か好きになれないのは何でだろうか解らないけど・・。
 
 最近お姉ちゃんはテレビを良く見ている八時からのきらきらした。
 私には動きが早くて理解出来ない、お姉ちゃんはソファに座って眼鏡迄掛けて近くで見てた。
 追っ掛け予備軍・・呟いた声が聞こえたらしく私を叩いた、でも目はそっちに向いたまま。
 口はぽかんと開いたままで白い歯がちらっと見えた。
 ・・お姉ちゃんが好きな子ってどれだろう。
 探してみるけど多分この子だと思った大勢居る中でこの子だけ目立ってるから。
 「ねえ、この子?」
 ブラウン管を指で触って差す、差したと思ったら画面が変わる。
 うんうん、と頷くだけして私の手をはね除けた、別にビデオに撮ってるんだし良いじゃない。
 それよりお話してよ・・って思ったけど内緒、でもお姉ちゃんは知っててシテルの。
 私はお姉ちゃんが好きなのに。
 
 でも私達、顔も似てないしこんなに違う。
 でも大好き、お姉ちゃんが大好き。
 何でなのかは解らないけど。
 でも大好き、お姉ちゃんが大好き。
 
 お姉ちゃんは少しだけ私を構ってくれる、真夜中私が眠い時。
 あの、ねえ・・から始まる囁き声がちょっと五月蠅い。
 この時のお姉ちゃんはちょっとだけ違う気がするの。
 広い部屋なのに、一緒に寝るんだ・・小さな頃からの唯一の習慣。
 「もう眠いから・・止めてよ。」
 何度言ってもお姉ちゃんは止めなかった、やっぱりお姉ちゃんだけズルい。
 こんな時のお姉ちゃん・・薄暗くてもお姉ちゃんの綺麗で細い瞳が見えるから。
 ・・昼間の放置プレイが嘘みたいなのはきっと冗談なんかじゃないよ。
 
 お姉ちゃんも好きだけど、お爺ちゃんも好き。
 偶に遊びに来てくれる・・ホコリを被った様な帽子を被ったお爺ちゃんは私達に笑顔をくれる。
 「今日はお爺ちゃんが来るから、ちゃんとお掃除しないとね。」
 お姉ちゃんも言ってる、私もやっぱり楽しみで花瓶の水を入れ替えたりして。
 チャイムの音が聞こえた、今度は気の所為じゃない。
 お爺ちゃんだ、二人して駆け寄って部屋の中でもきちんと服を着て私達が笑顔で迎えるの。
 「元気にしてたかい。」
 お爺ちゃんは暑そうな恰好で、だけど今日も涼しそう。
 花束を私にくれる、前はお姉ちゃんだったから今日は私に・・嬉しかったのはオレンジ色の花だった事。
 私達は料理をして肩を叩いてあげる、お爺ちゃんはやっぱり笑顔で有り難うと言う、でもコートは脱がない。
 今日は日曜日でお爺ちゃんも夜遅く迄居てくれるので楽しい。
 「・・それでね、お姉ちゃんは新しもの好きなんだよ。」
 「ミヤ、あんただって変なラジオとか持ってるじゃない、それにレコードとか古臭いもの。」
 「アスカは未来が好きで、ミヤは昔が好きなんだね。」
 ヒゲで口元が見えないけど、確かに言った、私達二人はお互い顔を見合わせた。
 ・・お爺ちゃんってやっぱり凄い、そうなんだ、私は昔、お姉ちゃんは未来で。
 「でもでも、新しいものは皆知ってるし、奥ゆかしさが無いでしょう?」
 「古いものってなんか暗いじゃない、それに在り来たりだし。」
 言い合いになったお爺ちゃんはそんななのに微笑ましい顔をしてた。
 別に微笑ましくないのに。
 「じゃあ、二人共・・交換してみれば良いよ。」
 ヒゲで口元が見えないけど、確かに言った、私達二人はお互い顔を見合わせた。
 ・・じゃあお爺ちゃんの言う通りにしてみようと思った、きっとお姉ちゃんもそう。
 だってお姉ちゃんもお爺ちゃんが好きだから。
 私達の交換ごっこが始まった。
 
 最近変だ。
 何かが変だ。
 そう思い始めたのはいつからだったか、この街が爆発する気がした。
 原色の街が虹色になって眩しくて目を背ける、墓場で街が埋まるんだ。
 こんな事を考えていたなんてアスカには言えないけどきっとばれるんだ。
 だって私とアスカは繋がっているから。
 
 お姉ちゃんが又レコードを掛けている、ぷつぷつと時折入る雑音で感じるらしいけど私には嫌なノイズ。
 うっとりした顔で目を泳がせているのを無感動に眺めていた・・。
 それが私・・とお姉ちゃん。
 「こんなの・・何処か良いの?お姉ちゃん。」
 「ミヤが解らないだけよ、歴史と原点の集合体じゃない。」
 生意気な事を言うお姉ちゃん、ちょっと頭に来たのでお姉ちゃんを五、六回打った。
 お姉ちゃんは捨て犬の様な目で何よ・・と怒ってた。
 私はスリムのジーンズで部屋を出た。
 
 八時、私の好きな音楽番組が始まる。
 録画は準備出来てる、でもこの時間、彼を見ない訳にはいかない。
 目的はハリオットだ、ギターの彼はあまり移らないけどブラウン管に彼がちらつく度出せもしない色で表示される。
 「追っ掛け予備軍・・。」
 五月蠅い、ギターの音が掻き消される気がした。
 「この子でしょう?あんたが好きなの。」
 と手で触ろうとする、慌てて手を退けると、何よぉ・・と愚痴を漏らしてた。
 そんなの私にはどうでも良かった。
 
 私は少しだけお姉ちゃんを構ってやる、真夜中お姉ちゃんが眠い時に。
 「ねえ・・仰向けになって頭を少し上げて。」
 眠いのか首を振る動作が可愛い。
 広い部屋なのに、一緒に寝るんだ・・小さな頃からの唯一の習慣。
 「もう眠いから・・明日にしてよ。」
 何度言おうと私は止めない、一人で寝るなんてお姉ちゃんだけズルい。
 ・・昼間の放置プレイで寂しがってた癖にさ。
 
 ある日、思い出した事だけど私達は交換ごっこをしてた。
 私は古いものでお姉ちゃんが新しいもの、入れ替えたんだ。
 でも、それだけじゃなかった気がした、でも想い出せない。
 「ねえ、アスカ・・私をもっと構いなさいよ。」
 お姉ちゃんはきっと、気付いてる・・だって私達、繋がってるから。
 「ミヤさ・・い、痛い・・ですっ・・。」
 甘ったるい、その薄汚い声を上げるお姉ちゃん、レコードの音が心地良くて私は笑いが止まらない。
 ・・お爺ちゃんが言ってた、私が昔でアスカが未来。
 体中に一杯痕を付けて、飽きる迄弄んだお姉ちゃんを私はずっと見ていた。
 「でも、アスカに未来は無さそうだね。」
 なら今未来は昔にお腹を踏まれて悶えているって事なのかな。
 明日、お爺ちゃんに聞いてみようと思った、きっとお爺ちゃんの勘違いだったって。
 アスカを見れば解ると思った、明日が楽しみ、又二人が入れ替わってもあまり変わらないのかも知れない・・。
 だって私とお姉ちゃんは繋がっているから。
 
 
 
 後書き
 
 ちょっと長いシリーズは凄く久しぶりでした。
 ストーリーと人物を持たせつつも変な話を目指したつもりです。
 でも内容が誤解を招きそうですね・・過去最低の描写かも解りません。(汗)
 『視点が違うと色々な物が見えて来る』ストーリーにしたですが・・ちょっと力不足です。
 幼い感じを出したくて動詞や主語をより基本的にしてるです。
 でわ、この辺で・・。
 
 
 
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