全文 柳家 松之介
 
ACT H
 
 
ルールの行進
 
 
 基準、基づいたもの。
 皆、当然に従って生きていくのがルール。
 変わり者と言う基準に従って動いてる私には良く解らない変な話。
 只、それだけの変な話。
 
 ある朝、非常識って服を着てた怖い人が道路の白線を見詰めて唾を吐き捨てた。
 結局最後泣いて謝ってた。
 悪い敵は負ける、正義の味方が勝つって先生がこっそり教えてくれた。
 でも言われる迄忘れてた。
 ひょっとしたら皆も忘れてるの?
 私はそう思い呼び掛けた。
 煙草屋のお爺さんにその話を話した。
 お爺さんは耳が遠くて私の声が聞こえなかった。
 何も言わずにイトで吊られた人形を私にくれた。
 可愛くない人形だった。
 お爺さん以外の皆にも話したけど白い目で見られた、溜息混じりに当然だって言われた。
 何だ、気付いてたんだ・・ちょっぴり哀しかった。
 でも気付いてるのに何で口に出さないんだろう、皆。
 ・・もしかしたら言ったら要けないのかな?
 悪い事言ったのかな?
 友達に聞いた、悪い事したら地獄って場所に連れて行かれるって噂。
 何処か知らないけど何となく嫌なところなんだろうと思った。
 やっぱり次の朝、そこで働いてる鬼って人が家に来た。
 お母さんが怒ってるのか哀しいのかそんな表情をしていた。
 でも言った言葉がどんなものだろうと悪い事ではないと思った。
 多分それより昨日私が猫を虐めた事が悪いんだろう、でもそれ位皆遣ってると思った。
 私を乗せてバスがどんどん進む、水平線が上にある位で降ろされた。
 薄暗い、怖い場所だった、見た事も無いのに想像通りの場所だと思った。
 隣の町の出っ歯のあの子がここで舌を抜かれたって痛がってた。
 私も抜かれるのかも知れない。
 やっぱり抜かれた、痛いし喋り辛いし血も出た。
 そうだ、こんな時には恋人の彼と楽しいお喋りをしよう。
 恋人は地獄から遠いけど3つ数えると飛んで来てくれた。
 愛する二人は何時でも一緒に居るって、
 酔っぱらって家に帰って来たお父さんがお母さんとひそひそ話してたのを聞いた。
 私達は愛し合ってるから当然だった。
 いつも笑顔で格好良くって物知りな彼とお喋り、でも楽しくなかった。
 何で楽しくないの?と聞くと地獄は何をしても楽しくなんかないって彼が答えた。
 あ、そうか・・忘れてた。
 じゃあ、こんなところに居たくないよ、私は悲しくて泣いた。
 彼が優しく抱き締めてくれたので少し落ち着いた。
 そしておでこにキスしてくれた後彼が言った。
 良い事をすればこの上にある天国に行けるって。
 そっか、忘れてた・・その手があったんだ。
 忘れっぽくてちょっと馬鹿な私に色々教えてくれる彼に感謝した。
 じゃあ良い事をしよう、普段ならしないけど此処から出る為なら仕方ない。
 ・・煙草屋のお爺さんの肩を揉んであげよう、
 お年寄りは大切にしようってお婆ちゃんがお母さんに怒られてる時言ってた。
 お婆ちゃんも年寄りなのに自分で言うのは狡いな、ってその時思った。
 お爺さんを捜した、でも居ない、
 そう言えばお爺さんは悪い事していないから地獄で探しても居ないんだ。
 諦めて、肩を落とし乍ら小石を蹴った。
 別にお爺さんじゃなくても良いのでその辺の子供の肩を揉んであげた。
 全然肩凝ってなかった。
 良い事をしたので天国って場所に移動した。
 綺麗で楽しい場所だった。
 来て良かったと思った。
 ずっとそこで遊んでたらお腹が空いた。
 ご飯は無いの?と天使って人に聞くと死んだ人はご飯は食べないから無いって言われた。
 でもお腹が空いてるよ?って聞きたかったけど空を飛ばれて逃げられた。
 私には羽根が無いので追い掛けて聞く事は出来なかった。
 お腹空いたな・・空腹でイライラしたのでその辺の花をむしり取って誤魔化した。
 何度も何度もしてたら彼がやって来た。
 そんな事したら駄目だよって怒られた。
 でもお腹空いたの。
 それは関係ないだろ?それに・・。
 それに?
 死んだ人はお腹空かないよ。
 だって私死んでないもん。
 死んでなきゃ天国や地獄に居る訳無いよ。
 ・・そっか、私死んだ人なんだ。
 でも何でお腹が空くのかは解らないままだった。
 解らないのは嫌なので彼に聞いた。
 彼は知らないって答えた。
 物知りな彼も解らないので私には勿論解らなかった。
 只の思い過ごしだったと無理にこじつけると何となく落ち着いた。
 ・・どうでも良いけど彼との恋はもう終わりだと思った。
 
 
 
 後書き
 
 今回の作品は文頭で述べてる基準について書いた作品です。
 それぞれの事象や単語に在る大抵の人が思っているだろう事を書きました。
 文中にも地獄は怖くて天国は楽しい、等がそれです。
 そのイメージに流され勝手に思い込む主人公が何か妙に笑えます。
 この文章は大袈裟ですが皆さんもこれに似た経験が在ると思います。
 基準や恋なんかは人の思い込みだと私も思い込んでいます。
 でもそれで良いんですよね、多分・・。
 色々詰め込んでみたので後書きも今迄に比べ長いです。
 でわ、この辺で。
 
 
 
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