かいたひと 柳家 松乃介
 
 
水ム
 
 
 星屑が落ちている、陸から投げられて空の又その向こうに。
 何故だかその一つが欲しくなって私は足を踏み入れる。
 「あれね、高いよ。」
 オバサン今日もスウェットと変なマスク、ねだる私にはくれなくて。
 じゃあ何処かで貰える所は無いかと聞くと。
 「彼処だね、海だよ海・・陸のは全部あたしが拾っちまった。」
 私は海に行く事にした、ケチでがめついオバサンに取られてない新しい星屑の色を浮かべながら。
 
 星屑が浮かんでる、陸から投げられて名前を付けられて。
 「海だね。」
 友達のかえでちゃんが・・いつの間にか私と腕を組んでた。
 いきなりの友達に驚いたけど嬉しい、かえでちゃんは友達だから。
 ドキリとする程格好良い表情をこっそり見てにやけてしまいながら。
 「海だよっ。」
 「泳ぐの?・・まさかね、こんな寒いのに。」
 現実主義者だ、かえでちゃんは、でも格好良い・・抱き締めちゃう程。
 彼のちょっとおちゃらけの言葉・・当たってた。
 「うん、泳ぐ・・あ、服脱がないとね。」
 「ふーん。」
 一枚一枚服を外して行く度に肌に当たり風が痛い、雪も降って来て裸の私と完全傍観になってるかえでちゃん。
 苦笑いして最後の一言。
 「じゃね、頑張って。」
 彼は消えてすっと、裸の私がもう少しで凍りそうな浜に残された。
 眼鏡を掛けて試しに見てみるときらきらと光るのは何?
 「星屑・・。」
 手を伸ばそうか、寒そうな深い青の海、息を止めてゆっくり指先を。
 
 星屑が光ってる、海の水に揺られて誰にも見られていない。
 「魚が居る、こんな寒いのに良く泳げるね。」
 自分で喋ってて苦しくなって来た、魚は泳ぐのが仕事、当たり前。
 でもちょっと言ってみたかっただけ、海の水は普通の水よりひんやりしてて・・。
 「寒いでしょう?ほら直ぐ上がって来なよ、星屑ならオバサンの所で買えば良いじゃん。」
 「嫌だよ、私だけの星屑が欲しいんだもん。」
 何でだろう最初は星屑が欲しかっただけなのに、
 後になってみたら段々と欲が出て来るのは何でだろう。
 海に潜って・・本当にあるのかな。
 「君はもう夢中になったみたいだね、ボクは持ってるから。」
 先を目指した私にはかえでちゃんの海の上の声も、結構どうでも良くなっていた。
 私の世界じゃない其処、身体は海から出ようと浮かび肌が縮まって息が逃げ場を求める、それでも動かして光を。
 「ある訳無いでしょ、オバサンに騙されたんだって。」
 「・・知らないよっ。」
 声が聞こえていちいち見てられないのにかえでちゃんは止めさせようとする、ぼやけて暗い視界を凝らすけど。
 何も無い、暗くて冷たい海に私は真ん中、漸く身体は沈んで行くのに何処にも少しも光が無い。
 「折角捜しに来たのに・・あっても良いじゃない!酷いよ・・。」
 星屑が欲しいだけ、只それだけ、星屑は見当たらない。
 身体が奥に向かう、これ以上下はもう上がれなくなる程下の、もう上が見えなくなるのに微かに戸惑って。
 「どうしたの、星屑は下にあるよ。」
 「かえでちゃん・・。」
 いつの間にか隣に、服を来たままいつもの笑顔で、逆に苦しくなる私は酷い顔。
 耳元でそっと泡に混じる声はかえでちゃんに聞こえているか不安だった。
 「下に行けばあるよ、絶対。」
 「でも・・もう戻って来れなくなっちゃうよ。」
 「だったら魚として暮らすのはどうだい?戻らなくて良いし意外と楽しいかもね。」
 ゆっくり手を引いて来て一緒に下に進んで行くと身体がぎゅうぎゅうで目が腫れて来る、痛いけど目だけはしっかりと凝らして。
 暗い筈なのに・・其処は光っていた、冷たくて、とても人では此処に居られない程痛い場所で、赤い青い緑も・・。
 「ほらっ、一杯好きなだけあるよね・・でも・・。」
 でも?
 「もう君は戻れないよ、もう此処は人の居る場所じゃないから・・
  ボク?ボクは・・ボクも困った事になったね・・でもこれからは魚でも良いかな。」
 聞いてないのにかえでちゃんが何故か楽しそうに、あと泡が消えて行くのが見えた。
 焦って上がろうとしてももう身体は浮かばない、私自身も魚になり始めてるのかも知れない。
 「ゴメンねかえでちゃん、巻き込んじゃって・・。」
 「ううん、多分こうなるなって解ってたから・・いいよ。」
 そう言って星屑を拾って私の胸に押し当てた、暖かい光と星のざらざらした感触。
 「何でかえでちゃんも一緒に来たの?待ってるんじゃなかったの?」
 「それはね、君が言っても聞かないし魚になって一人で寂しい思いをすると思ったんだよ。」
 かえでちゃん・・。
 私はどんどん海に順応して身体の縛りと息が楽になる、星屑を掴んでいる手も段々と小さくなって、このまま魚に変わるんだ。
 「ほらさかなはしゃべるいきものじゃない、ぼくもきみもだんだんことばを・・わす・・れ・・。」
 あー、考えるのも海の事だけで・・星屑なんてどうでも良くなって来るし口が言葉を喋ろうとしない。
 最後に伝えないと・・言葉が無くたって私達は。
 「??」
 友達だよね。
 ・・・・・・。
 
 
 黒くてぽつりぽつりとある石が光ってる、暗い底の海の中でひっそりと。
 海にも慣れて私達、あれからずっと遊んでいた。
 御飯を取るのが上手なかえでちゃんと一緒に、御飯以外にも何かあったけど・・忘れちゃった。
 しゅくだいも無いしママのおせっきょうも無い、人間だった私が嫌だった事だ。
 「!!」
 驚いた、かえでちゃんが尻尾で叩いて私を気付かせる、何?
 そっか、誰かが海に入って来たんだね。
 黒い影と泡に変な機械を背負った人だ、慣れた様子で私達みたいに泳いでみせる。
 「やっぱり海にも一杯あるねえ・・未だあの子に取られてなかったみたいだねえ、良かった良かった。」
 袋を出してひょいひょい石を詰めて行って・・袋が僅かに光ってる、当然此処等は暗くなる。
 「あの子・・そう言や最近見ないね、まさか溺れ死んだとか・・あたしみたいにちゃんとスーツを着てないととても此処じゃあ動けないからね。」
 私達の方をちょっと見たけど興味なんて無いみたいでそのまま。
 すいー、すいー、胡散臭い色したヒレで上に上がっていった、手慣れたオバサンだなあと思う。
 「!」
 かえでちゃん、お腹空いたの?・・じゃあ一緒に食べよ、ね?
 「。」
 戴きまーす。
 ・・・・・・。
 でもちょっとだけ忘れなかった事があるんだ、さっきの独り言でやっと気付いた。
 ケチでがめついオバサンだけが得をしたんだなあって、思ったんだ。
 
 
 あとがき
 御免なさい、一体全体で謎だらけの話になってしまいました。
 テーマ付きでのリクエストを戴いて書いた作品、その当初に何と無く書いていた話とミックスしたんです。
 そしたら何か微妙にオチなのかあれなのか、普通にラッキーみたいな終わりを避けた結果です。
 満足頂けたでしょうか、こんなもので宜しければお受け取り下さいませ。
 面白くなかったなら・・次頑張ります。(汗)
 でわ、この辺で・・。
 
 
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