かいたひと 柳家 松乃介
追伸
書き残したメモが幾つも乱雑に転がる部屋、誰も居ない。
埃まみれのギター、最後に聞いたレコードが針の上に置かれたまま。
全て後で知った事、もう大分前の事。
夢から醒めて見てみるとまるで今迄が嘘の様に晴れた空、何年も眠っていた様に景色が違って。
一つ一つの世界が・・段々と薄れて行った。
希望、推理、観測、誘惑、幻視、妄想・・全て少年が求めた結果、不格好に広がる物語は・・誰にも知られていない。
でも何故かその物語は何処かで混在していた、
道路、屋根、リビング、窓、エレベータ、寝室に至る迄敷き詰められて、後を訪れる人々は既視感に首を傾げる。
実際にあった事だ、決して夢じゃない、少年は言った。
それが事実かどうかも又、知られていない。
今日も何処かで首を傾げる人々に耳元で語り掛ける少年が・・。
でも誰も何故か気付かずに、部屋を後にする人を惜しみながら見詰める瞳には。
嘘偽りの無いものだと、どうしてかそう思えるのは何でだろう。
首を傾げる世界に・・。