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21XX
人間より能力、知識、体力全てにおいて優れているアンドロイド
しかも感情もあり人間並みに感覚もある
ただアンドロイドには人権がない
人間を主人とし、尽くすことが仕事だ
僕が生まれたとき カプセルの中で目覚めた
その時 はじめて目に飛び込んだのは
可愛らしい黒髪の女の子だった
そしてその時から彼女が僕の主人となった
ある日 僕の誕生日に主人から生まれてはじめて真紅の薔薇をいただいた
心から嬉しさを覚えた僕は喜びのあまり その薔薇の種を買ってきて庭に植えた
花が咲くころには 主人はきっと美しい大人になっているだろう
ある日 主人は結婚することになった
僕はもちろん嬉しそうに笑顔で祝った でも結局作り笑いになってしまった
なんだか寂しい気持ちになった
ある日 主人に子供ができた
彼女に似て 笑顔の可愛い キレイな黒髪の女の子だ
この子もそのうち 彼女みたいに素敵な女性に育っていくのだろう
その時はじめて人間がうらやましいと思った
人間には知識を得るまでの過程があり 子供にそれを受け継ぐことができる
僕は作られた時にはすでにあらゆる知識を頭のチップにインプットされてる
唯一体験できないこと
身体の成長 出産 である
ある日 僕は年老いた主人に言われた
「あなた、いつまでたっても変わらないのね。人は年とる寂しさを知るけど、
あなたはそのうちきっと年とらない寂しさを感じることになるわ」
そして主人は死んでしまった 僕は人知れず涙に濡れた
棺には庭いっぱい埋めつくされた真紅の薔薇をそなえてあげた
どんなにしわだらけでも僕の目には
いつまでも出会った頃の彼女のまま美しく見えた
アンドロイドは永遠に生きられるわけじゃない
部品がそのうちなくなってサビれば 鉄の固まりにされる
人間には弔ってくれる墓があり子孫を残せるが 僕らにはできない
亡くなる前主人は 優しく微笑みながらこんな言葉を残してくれた
「私がいなくなっても、誰かが私のこと思い出してくれればそれで充分よ」
これから僕は壊れない限り 何人もの主人の思い出を鮮明に記憶していくことだろう
そして僕は何年も何十年も何百年も主人の死を見なきゃならないのだろう
人を愛すことも許されないアンドロイド
それでも僕は叶うことのない夢を見つづける
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