Written by 六花
バタンッ!!
力強く、思いっきり、というように閉められた玄関のドアの音は
狭い家の中の隅々まで響いた。
本当に狭い部屋だから
人が一人いなくなっただけでもこんなにも広く感じる。
さっきまでは少し窮屈だったけれど、
心地良いあったかさが充満していたのに。
ついに彼女を怒らせてしまった・・・。
普段から特に穏便である・・・というわけでもない。
彼女は結構嫉妬深いほうだと思うし、
思ったことはちゃんと口にしてくれる。
どちらかといえば『おとなしい』というタイプよりも
元気なタイプだ。
どこか子犬のような感じで、僕はそれが愛しかった。
些細なことでキャンキャンないて、
けれどすぐに尻尾を振りながら僕に寄り添ってきてくれる・・・。
暖かくて、やわらかな、僕だけのたった一つの存在。
小さな諍いは日常茶飯事で、
・・・・・・だからあんなにも彼女が怒るなんて思いもしなかった。
“コレはいつもの『ケンカ』じゃない”
頭の中で警鐘が鳴り響いている。
何を間違った?
何を見落とした?
原因になった時計は彼女が一緒に持っていってしまった。
けれど・・・答えはソレじゃない気がした。
ソレはきっときっかけにしか過ぎなくて、
僕は何かを忘れてしまっているんだ。
彼女が出ていく直前に僕に投げつけてきた白い枕。
僕がよけたせいでどっかにひっかかって破れてしまったらしい。
・・・・・羽が―――白い羽根が少しだけ、見えていた。
追いかけなくちゃ。
忘れてしまった『何か』を失う前に。
追いかけなくちゃ。
『何か』を僕が思い出すことをきっと切望しているであろう彼女のために。
飛び出た僕の後ろでドアは景気をつけるように、
さっきよりもずっと大きな音をたてていた。
彼女を見つけた。
二人のお気に入りの、小さな空き地のど真ん中にいた。
やっぱり逃げたかったわけじゃないんだ。
隠れたかったわけじゃないんだ。
その事実が意外なほど心に重くのしかかる。
話しかけることはためらわれた。
だって僕は・・・まだ、答えを見つけてない。
風が少しだけ吹いて、彼女のきれいなロングヘアーを微かに揺らした。
僕が追いかけてきたことに気づいていないはずはないのに、
彼女は振り向かない。
両手を胸の辺りにおいて僕に背を向けている。
きっと手の中にはあの時計が抱えられているのだろう。
ゆっくりと彼女が振り向いた。
そして、僕の目をまっすぐ見つめてきて・・・
愛を 勘違いしないでください
そう、ただ一言こぼして時計を空中へと放り投げた。
普段の彼女とは違った、
一文字一文字をかみ締めたような・・・そんな喋り方だった。
僕は投げ捨てられた時計を目で追うこともできず、
彼女をただ呆然と見返した。
視界はひどくゆっくりと、
まるでスローモーションがかかったかのようなのに。
・・・・・音だけはしっかりと時を刻んでいる。
チクッ タクッ チクッ タクッ
この音(カウント)が止まった瞬間がタイムリミット。
それまでに答えが出せなければ『爆発』だ―――。
困ったように小さく微笑んだ彼女が・・・小さく目を伏せて。
それが僕の答えになった。
一緒に帰ろう?
あとがき
大変遅くなりました(汗)そのうえとても、とて〜も短いです!(涙)
長くなるとただの『説明』になってしまうのでこんな感じで(と言い訳してみたり)
今回、わざとあのフレーズ“走る君の髪でシャツで揺れるたくさんの白い羽根”は入れませんでした。
青人様のサイトにこられる方々にはそれぞれこのシーンに対してのイメージ・想いがあると思ったからです。
その代わりソノ存在をそこはかとなく微妙に漂わせてミマシタ(笑)
返品可&文句承ります。
2003/03/31