〓偽善者の嘘吐き〓

この世で偽善者ほど嫌いなものはない。
とにかく良い人ぶって、それを周りに押し付けるからだ。
偽善者の多くがエゴイズムに走っていて、自分に害が及ばぬようにそれを演じているに過ぎない。だとしたら、偽善者のつく嘘がもっとも性質が悪い。だってそうでしょう、ホントの気持ちなどこれっぽっちも含まれていないのだから。
でも、それならば、どうして自分はあの人が好きでたまらないのだろう。

あの人はいつも無口だった。たまに話をしても、すべてがどうでもいいことばかりで、結局核心に触れさせてもらえることは一度もなかった。
この街に越してきて、初めてあの人に会った。同じ学校に通うだけで、それ以外には何の接点もなかった。ただ、慣れないことばかりで神経をすり減らす毎日に、一言だけ「アグレッシヴだよね。」と石を投じられただけ。それだって、自分の心の中はすでに波打っていたわけで、その一言が波紋を呼ぶことは一切なく、ましてやその一石が余計に心を波立たせた。

大体、アグレッシヴってどういう意味?
辞書を引いたら積極的、攻撃的という説明文。余計に混乱。
どっちの意味?

優しくしてあげたくて嫌われたくなくて、一方的にいつもまとわりついていた。
いつも生物の授業だけ寝ているあの人のために、真剣に授業を受けてノートも綺麗にとった。いいカッコがしたくて勉強も頑張って、あの人に聞かれたらなんでも答えられるように。誰かのために何かを頑張るのは初めてだった。ただ、意外と安い努力だなあと今ではそう笑える。

やがて自分は東京の大学へ、あの人は地方の大学へと決まった。
「地方って言ったって、そこまで地方じゃないから。」
縋(スガ)るようにわがままを言った自分を、また適当な言葉であしらって、何も話さずに行ってしまう。
一体いつになったらこの努力は報われるの?

「三井さん、わかっているくせに、いつもそうやってはぐらかす。」
グダグダと管を巻いているうちにポロリと口をついた台詞に驚いたのは自分のほう。
「会いたくなったら会いに来ればいいのに。」
にやりと笑ってあの人は言った。

この世は、嘘と本音と、エゴと思いやりと、同情と哀れみと、その他もろもろの感情に、人と人との隙間を埋め尽くされていて、そのやっとのところで地球は丸さを保っているのかもしれない。もしもそれが本当なら、この気持ちにも言い訳がつく。
三井さん、あんた嘘吐きだね。ごめんね。ありがとね。

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とくにマキハラと関係のあるものではないのですが・・・。
なんとなく気に入ったので載せときます。
イメージ的には・・・いや、危険だから言うのはやめておきましょう。
(別に全然危険ではないけれども・・・。/^^;)
SSってなんか初めて。
こういう曖昧な話も。(^^
 

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