Mus!c For The Masses
Home > Art!sts > D > Doves
Doves (official page / MySpace / live'03 / live'05)

Lost Souls (2000)                                                                            

★★★★
2ヶ月近く探し回ってようやく見つけたDovesのデビューアルバムです。ジャケットからして僕の大好きな香りがプンプンしてて楽しみだったんですが、音の方も予想に違わずツボにビシッとはまりました。全体に渡って内へ内へ潜り込んでくるようなダークな面と、それでいてメランコリックな面が共存していて、時には過剰なまでの荘厳さとドラマティックさを演出しています。随所に効果的に散りばめられたピアノの音色は、クリアなギターの音と絡まりながら、Travisの紡ぎだしたピュアネスへのベクトルと同じ方向を向いているようです。アルバムを通した印象は、Tears For Fearsのデビューアルバム"The Hurting"に通じるものがあるように思いました。全体を覆うヨーロッパ的で暗い雰囲気とは対照的に、実は親しみやすいメロディラインが隠されているところも抜群です。アコースティック楽器をうまく使いながら、この重く荘厳な雰囲気を表現しているのはある意味ものすごいと思います。スマッシュヒットが出るとは思えないものの、アルバムとしての完成度は非常に高いと思います。全ての曲がかなり高いレベルに到達しています。惜しまれるのは、その高いレベルを突き抜けるまでの楽曲がまだないことで、統一感はあるものの、ちょっと平坦な印象は否めません。この壁を突き抜けたらとんでもないアルバムを作り出しそうな予感がします。とか、文句をつけながらも、この雰囲気は個人的に最高に気に入ってます。もちろんオススメ。

The Last Broadcast (2002)                                                             

★★★★★
まず、アルバムを通して明るめのポジティブな曲が続いているのにビックリ。それぞれのアプローチも微妙に変化を遂げて、基本的に楽曲自体はシンプルさを追求する方向ですが、アレンジ的には 丁寧に色々な音が塗り重ねられていて平板になりそうな流れに変化を持たせています。前作に見られた音の振幅の変化を使って直接心を揺らすのではなく、シンプルで直接的なフレーズの音の重ね方を微妙に変えることによって、少しずつ少しずつ揺らぎを起こしながら共鳴するような手法を採ってます。決してシングル向きとも思えない大作"There Goes The Fear"をシングルに持ってくるあたりにも自信が感じられますし、その他の曲にも信念が感じられ、それが力強さにつながっています。それぞれの曲、そしてアルバム としても決して派手な仕掛けがあるわけではなく、逆に表面的には地味で抽象度を追求した雰囲気さえありますが、曲に秘められたポジティブさや推進力は強力です。こうした要素が詰まった"Satellites"は中盤のクライマックスで 聴いていて身体が震えそうになりました。ただ、きっちり咀嚼するまではナイーブな音なので、音だけに集中する必要があるかも。そして、咀嚼後はそのスケール感、力強さに圧倒されるハズです。ちょっとベタなPounding", "The Last Broadcast"にさえ心揺らされます。予想さえしない方向へ歩みを進め、予想を遙かに超える地点に着地したDoves恐るべし。とにかく、まずはこの音に触れてみて 下さい。大プッシュ盤。

Lost Sides (2003)                                                                            

★★★★
DovesのB面コレクションに未発表リミックスのボーナスディスクの付いたコンピレーションアルバム。描き出される世界はDovesがこれまでに作り上げてきた世界を再現していて、レアトラック集にありがちなガツガツした実験性や冒険心、あるいはラフで大味な楽曲はなく、Dovesらしく丁寧に作り込まれた曲が中心です。同郷のNew Orderを感じさせるヘナチョコボーカルと妙に開放的なメジャーコードを基調とした展開が印象的な"Your Shadow Lay Across My Life"、ロックモードにギアを入れた"Hit The Ground Running"などが例外的な曲ですが、それらの曲も実験や冒険と言うよりも、これまで明示的に出していなかった隠し持った引き出しや従来路線のバラエティを増やしたといった感じです。"Sea Song"のテンポを落として抽象度を高めた同曲異名の"Down to Sea"は彼らのメロディセンスを遺憾なく発揮していますし、"Zither"や"Willow's Song"の暗闇の中で一瞬光る明かりのような心許ないながらも頼りになるような強靱な楽曲で素晴らしいのひと言です。1曲1曲のクオリティはB面にしておくのは勿体ないレベルですが、アルバムの性質上仕方ないとはいえ、全体的には統一感にやや欠ける印象もあります。それでも、次のアルバムのリリースへの期待は膨らむ一方で、恐らく彼らはその期待を裏切ることはないという確信が非常に強く残りました。(2003/11/3)

Some Cities (2005)                                                                         

★★★★☆
哀愁感を漂わせる楽曲に留まらず、ライブで得た力強さや各国の音楽的要素を取り込んだ3年ぶりの3rdアルバム。耽美的な陰鬱さの1st、エネルギッシュなメランコリーの2ndと、アルバムとして世界観が統一されていましたが、今作は手を広げ過ぎたために少々散らかった印象があります。それでも、カントリー調のギターのフレーズが顔を見せる"Some Cities"で始まり、吹っ切れたような軽快なメロディとコーラスが印象的なシングル"Black And White Town"、メロウなメロディとドライなドラムスの衝突が面白い"Almost Forgot Myself"と序盤だけでも新味充分。また、彼ららしいキラキラメロディから、胡弓のような神秘的な間奏へ繋がる"Snowden"、坂本龍一の"Snake Eyes"の一部を使い、ブルースハープのような泥臭い音を挿入した"The Storm"では、アルバムタイトル通り様々な街の音の断片をインストール。さらに、シンプルに感情を表現した"Walk in Fire"や歌謡ロック風の俗っぽいリフを持ち込んだ"One of These Days"も目立ちますが、ギターがイキイキとした表情を見せ、ハイハットの振動音が生々しいドラムスとのコンビでイニシアティブを取る曲が増えているのも大きな特徴。内容がバラエティに富んでいるので、47分弱という長さの割にはボリューム感があり、リスナーに集中力を要求する作品ですが、それを受け入れたら新しいDovesに出会えます。オヤジ達の底力に脱帽。(2005/2/26)

Kingdom of Rust (2009)                                                  Doves - Kingdom of Rust

★★★★☆
約4年ぶりの4thアルバムは、煌びやかな音でダイナミックレンジの広い世界を描き出していた近作から一転、陰りと仄かな暖かさを感じさせるメロディをベースに、1stの頃を想起させるような影を巧みに使った仕上がり。ハイハットを細かく刻みながら、シンセサイザーやシーケンサで周期の長いウネリを生み出す"Jetstream"で幕を開けると、ウェスタン風のイントロで始まり、分厚いバックトラックの間隙を突いて鳴らされるザラついたギターのフレーズが美しい"Kingdom of Rust"、アゲ気味のメランコリックなダンスロック"The Outsider"とメリハリの利いた立ち上がり。ところが、中盤以降は穏やかな序盤から暴発一歩手前の終盤まで表情を変える"10:03"などはあるものの、キャッチーさよりも深みを感じさせる楽曲が増加。全体を通して重めの曲が多く、表面的な派手さが少ないこともあり、シッカリと対峙して聴かないと本質部分に辿り着くのが難しい一方で、ジックリと聴くと繊細さと力強さの両方が伝わって来て、激しく感情を揺さぶられます。また、個々の音を使って曲を印象づけるのではなく、アンサンブルによって重厚なグルーヴを感じさせる部分にはこれまでのキャリアが充分に活かされた印象。楽曲に散りばめられた多様なサウンドはイマジネーションを刺激するという点で聴き手の介入できる余地が大きく、その意味で非常に映像的。外面的な派手さは弱まっても、内面は充実一途。(2009/05/04)