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The Flaming Lips (official page / MySpace)

The Soft Bulletin (1999)                                                                   

★★★★
もう1曲目のイントロで完璧に心をつかまれてしまいました。ピアノと湿り気味のストリングス、キーボードの音がやや弱めのボーカルを生かしながら儚さみたいな世界を演出してます。繊細な色の絵の具で浮かび上がらせたようなぼんやりとした、それでいて気になる音世界で鳴っている音は、同時に力強さも兼ね備えてます。メロウでゆったりとしたオープニングから、ビッグバンド風のアレンジに進み、再び静かなアレンジに戻るといった曲の進行もこのアルバムの中では取ってつけたような嫌らしさは皆無で、極自然な風景のように溶け込んでます。Mercury Revっぽい音のイメージもありますが、彼らよりもどこか牧歌的なイメージが強く、身を委ねられる安心感みたいなものが感じられます。深めにかけられたディレイとリバーヴの中で、色々な種類の音が重なりながらも、うまくはないのですが、ある意味個性的なボーカルが、アイデンティティを一点に集約する役割を果たしているように思えます。耳を澄まして聴いていると、本当に色々な音が散りばめられてます。今も昔も全ての音が詰まっていて、考え尽くされているのに、その計算高さを感じさせないってのは大きな武器だと思います。老若男女、マニアからポップスファンまで誰もが自分の切り口、感じ方で楽しめる素晴らしい作品だと思います。

Yoshimi Battles The Pink Robots (2002)                                         

★★★★★
前作"The Soft Bulletin"のようなザラザラ感は後退して、音の木目が細かくなった印象が強いものの、散りばめられた音色/フレーズともにアイデアに富み、おもちゃ箱をひっくり返した楽しさとそれらが論理的に配置された整然さが非常に高いレベルで結びついたアルバムです。前作はドラムの使い方に特徴がありましたが、今回は自由自在に動き回るアナログ感タップリのベースが大活躍で、他の楽器とは次元の違う存在感と美しさを感じさせるアコースティックギターと共に、彼らの世界観を現実化する中心的な役割を果たしています。で、相変わらず曲者っぽいのは完璧さを微妙に崩す手法で、どの曲にもスキとアソビを持たせ、敢えてピースを空けておく。これによって、夢の世界の作り上げられた完全無欠の美しさではなく、多少不格好だけどリアリティを持った美しさが描き出され、同時に欠けたピースが残りの部分の美しさを映し出します。先行シングルの"Do You Realize?"を始めとして、メロディにも様々なアイデアが入っていて、即効性と継続性の両方を持っているところもスゴイ。描き出した世界観を継続させながら現実世界へゆっくり連れ戻す役割を果たす"Approaching Pavonis Mons by Balloon"も文句なし。ちょっとぶっ飛んだモチーフのロボット物語も、その歌詞は深く、本質を突いてたり。日本語で歌うボーナストラック"Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.1"の「あのコはYoshimi、空手の黒帯。僕らの街のためにいつも鍛えとんねん。いつかきっと彼女はメチャクチャ強い悪のマシーンをシバキ倒すだろう」…もう何から何まで最高。どうせ買うなら是非とも日本盤を。(2002/7/11)

Ego Tripping at The Gates of Hell  (2003)                                       

★★★★
"Yoshimi Battles The Pink Robots"からのリミックスに未発表曲4曲加えたEP。基本的には最新作の路線ですが、未発表曲は季節を意識したのかホッコリ暖まるような雰囲気があります。冒頭の"Assassination of The Sun"はゆったりした流れの上でカラリとしたメロディを展開し、「想い」が強く表れがちなWayne Coyneのアクを巧い具合に弱め、フワフワ度とカッチリ度のバランスを絶妙に取っています。続くインスト"I'm A Fly in A Sunbeam"はピアノとトランペットの絡みでジャジーな香りが漂う変化球気味の曲。さらに、"Sunship Balloons"はベースラインが自由奔放に飛び回るThe Flaming Lipsらしい曲で、面白みには欠けるものの意表を突いた2曲目の流れを引き戻す役割を果たしています。そして、軽めでアナログっぽい"Do You Realize?"とタイトル曲のリミックス後の"A Change at Christmas"。キラキラしたシンセとクリスマスベルに甘酸っぱいメロディが絡まりますが、描かれる世界は「僕と彼女のラブラブクリスマス」ではなく、「僕が時間を止められるなら、世界が力と恐怖ではなく、愛と平和と慈悲を受け入れられるクリスマスを選ぶ」というスケールの大きなクリスマスソングで、シンプルな構成とシンプルな歌詞の相乗効果により、メッセージが言葉と音でストレートに伝わって来ます。未発表曲に佳曲が多いこともあり、迷わず買いの一枚です。(2003/12/18)

At War with The Mystics (2006)                                                      

★★★★
過剰とも言える分厚いサウンドの前作から一転、4年ぶりの新作では間引いたサウンドに遊び的な音を散らしたチープなアレンジによって、ポップな曲はよりポップに、メランコリックな曲はよりメランコリックに表現する生々しさが前面に押し出されています。オモチャ箱で見つけた音で作ったような"The Yeah Yeah Yeah Song"はポップでキュートながらも「スイッチ一つで世界を吹っ飛ばせるとしたら、やってみるかい?」と歌い、やや実験的な"Free Radical"だけでなく、流麗な"The Sound of Failure / It's Dark... Is It Always This Dark??"でもブッシュ米大統領とその周辺に辛辣なメッセージを突きつけます。そして、深いリバーブの中で優しく囁きかける"My Cosmic Autumn Rebellion"、切なくやるせないメロディーと歌詞の"Mr. Ambulance Driver"や"Goin' On"でも楽曲を活かしたカタチで思いを表明。メッセージを伝えるのに激しいギターやシャウトが必須条件ではなく、ポップミュージックがそのメディアとして機能することを示した上で、ポップワールドの領域で怒りや悲しみなど次の行動のエネルギーとなる感情を必要十分に表現。相変わらず最後のピースは残し、リスナーにそれを埋めるための想像力を要求するような音ですが、この不完全性こそが彼らの音に感じる人間らしさや愛おしさの要因なのかも知れません。(2006/5/1)