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Kasabian (official page / MySpace / Live '04 / Live '07)

Kasabian (2004)                                                               Kasabian - Kasabian

★★★★☆
シングルリリース直後から大騒ぎのKasabianのデビューアルバムは、耳に入ってくる情報からThe Music辺りの流れを汲んだデジタルビシバシ音を予想していましたが、予想外にクレバーな作りになっていて正直驚きました。デビュー直後からの盛り上がり方が似ているThe Musicが「アーティストサイドの視点からの完成形グルーヴ」を提供したのに対して、Kasabianは全編に渡って「リスナーサイドの解釈でカスタマイズ可能なB.T.O型グルーヴ」を駆使。擦り切れた古さを感じさせる先行シングル"Club Foot"の直接的なグルーヴ以外にも、オリエンタルな雰囲気の"Processed Beat"やシンプルなリズムで感覚を麻痺させていく"Reason is Treason"など、密度は低めながらも身体を揺らす力を持つ曲が続きます。「フロア」をキーワードにして80年から現在までを豪快に俯瞰したサウンドは、2004年度秋冬モデルではないものの新鮮で、Beckの"Where It's At"を意識したような"Butcher Blues"にはニヤリとしてしまいます。楽曲やアレンジの持ち玉も豊富で、強烈な印象がないにも関わらず、繰り返し聴いてしまう常習性を持ったヤバさがあります。おまけに、何となく本気を出し切っていないような雰囲気もあって、まだまだ成長の余地がありそうな予感。ここのところ、現在進行形の音に不感症気味だった身体にも完璧にシンクロして、一気にモヤモヤが吹っ切れました。(2004/10/6)

Empire (2006)                                                                  Kasabian - Empire

★★★★☆
再びJim Abbissとタッグを組んだ約2年ぶりの2ndアルバムは前作同様にフロア対応型ロックですが、楽曲の牽引力がリズムに依存していた前作に対して、全パートが高い次元でシナジックに融合し、前作で感じた「伸びしろ」を完璧に体現。シンプルなバックトラックに様々なSEが絡むAメロからキーボード主導でリズムが強引にねじ曲げられる"Empire"で幕を開けると、ユニゾンとコーラスのボーカルワークが抜群の"Shoot The Runner"が続き、ザラザラした音密度の高い世界を構築。中盤では小刻みに動くドラムスとギターストロークの"Me Plus One"でひと息入れながらも踊らせることに執着すると、デジタルをデフォルメしたベーシックトラックにオリエンタルな味付けを施したPrimal Screamのような"Apnoea"、無機的な部分を押し出した"Seek And Destroy"、音数を抑えた美しいメロディの"British Legion"など作品の一貫性を保ちながら、飽きさせる部分は一切ありません。ラストの"The Doberman"のウエスタンっぽいトランペットも泥臭さを感じさせる内容にフィット。地を這うような太いグルーヴはスマートさには欠けますが、やや幼さが感じられた前作から一気に成長した筋肉質のサウンドには即効性と常習性がタップリ内包。キーボードが重要な役割を果たしている曲が多いのでChris Karloffの脱退の影響が気にはなりますが、来年の来日公演ではモノスゴイものを目撃できそうな予感。(2006/9/9)

West Ryder Pauper Lunatic Asylum (2009)                    Kasabian - West Ryder Pauper Lunatic Asylum

★★★★
Dan The Automatorプロデューサによる約3年ぶりの3rdアルバム。一聴して感じたのはJim Abbiss時代の押し付けがましいまでのグルーヴ一点主義アプローチとの決別、そして余裕さえ感じさせる柔軟なサウンドプロダクションへの針路変更。音に隙間が見えるようになった一方で、アンサンブルの強靱さが増した"Underdog"で始まると、曲が進むに連れて次々に表情が変わり、次曲へとシームレスに繋がる"Where Did All The Love Go?"、淡々と刻むリズムに妖しげなベースが絡むインスト"Swarfiga"、大味なイントロから各パートがフル稼働して、しなやかで性急なグルーヴを紡ぐ"Fast Fuse"、一転して優しく、柔らかな音世界を描く"Ladies And Gentlemen (Roll The Dice)"、弾力性と表情に富むギターが活躍する"Fire"、Kasbian流ゴスペル"Happiness"など、聴き所満載の内容。力尽くで踊らせてやるという意図が弱まった分、作品としての主張やパワーが若干弱まった印象はあるものの、これまでになくシンプルな曲、個々のパートが相互作用しながらリスナーを巻き込んでいく曲など、バラエティが格段に豊かになり、これまで「グルーヴ」というキーワードの背後に隠れていた部分が表面化。時折単調さが目に付く部分もありますが、どの曲にも彼ららしさがキッチリと刻印されているのは見事で、1stから2ndへの強烈な進化こそないものの、着実な深化を確認できる充実作。(2009/06/27)