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Mercury Rev (official page / MySpace)

Deserter's Song (1998)                                                   Mercury Rev - Deserter's Songs

★★★★★
全体を覆っているのは、重苦しくない静けさ・沈黙、解放というような物静かなでありながらもポジティブな感じです。一聴すると、「癒し系」として捕らえられそうな曲が続きますが、そんな一言では片づけられない深みが感じられます。オープニングから中盤まであたりは、心の傷ついた部分にゆっくりと、痛みを鎮めるように染み込んできて、知らず知らずの間に彼らの世界に引き込まれていきます。ゆったりとしたテンポで流れる歌と演奏は、外界の喧騒と自身の焦燥のリズムを同期させてくれるかのようです。子供の頃に聴いたことがあるような暖かく懐かしいメロディーが続いた後の"Goddess on A Hiway"は童歌のような旋律で過去を引き出す作業は終了。ラスト3曲のインタールード的な"Pick up If You're There"や"The Funny Bird"と"Delta Sun Bottleneck Stomp"では過去からゆっくりと未来へ視線を導くような解放をイメージさせるような曲です。特にラストの"Delta〜"はアルバム中で最もポジティブな曲調で、前へ進んで行くためのエネルギーを感じさせてくれます。この曲があるからこそ、単なる癒し系の物静かな音楽ではなく、発展・進化・継続のようなものを感じさせる力強さが残ったような気がします。このアルバムはとにかく自信を持ってプッシュできる一枚です。完璧。

All Is Dream (2001)                                                         Mercury Rev - All Is Dream

★★★☆
"Deserter's Song"の全編を貫くこの世のものとは思えないほどの美しさに出会って以来、新作を待ち続けてました。で、リリースの日程を知り、しかもタイトルが"All Is Dream"と聞くと、発売日までカウントダウンする程心待ちにしてました。実際に音を聴いたときの感想は、確かに美しいアルバムだけど期待していたものとはどこか違うというものでした。全体的にザラッとしたテクスチャの曲が多く、"Deserter's Song"の現実世界の夢に限りなく近い場所で鳴っている音楽ではなく、夢の中で限りなく現実に近い場所で鳴っている音楽のように思えました。"All Is Dream"の曲は現実の方向へ流れようとしている分、"All Is Dream"の美しさには所々に現実を感じさせるリアリティがあり、その分痛々しく感じました。ドラマティックな"The Dark Is Rising"のイントロ、深い場所から浮かび上がってくるような"Tides of The Moon"、安堵感のある"Nite and Fog"、ピチカートのストリングスが可愛らしい"A Drop in Time"、全てが夢の中のような要素と共にリアルさを持ってます。ほとんど同じ場所で鳴らされる音楽の印象がこれほど変わる驚きとともに、"Deserter's Song"の持つ世捨て人の描く現実感を期待していた僕は強烈なリアルさに戸惑うばかりです。アルバムのクオリティが高いだけに自然に受け入れられないのが残念でたまりません。要は気持ちの持ち方次第か?

The Secret Migration (2005)                                           Mercury Rev - The Secret Migration

★★★★☆
タイトルとは裏腹にハッキリと音作りのフレームワークの移行を果たした約3年半ぶりの6thアルバム。前作が"Deserter's Song"で構築した音を鳴らすための制約に縛られた美しさだったのに対し、今作は個々の音が自由に動き回りながらも全体として結合力を増し、現実感のある美しさへと昇華。90 Day Menを彷彿とさせるリードトラック"Secret for A Song"はヒンヤリしたアンサンブルが生々しく、繊細さと大胆さを併せ持った"Across Yer Ocean"や"Diamonds"は各パートがアイデンティティを主張すると共に、それがエゴに終わらず完成度の高いアンサンブルへ到達。やや地味な序盤から一転して、様々な音素で厚みを加え、果てには泣きのギターまで登場する"Vermillion"、アップテンポなメロディに存在感あるギターやベース、キュートなキーボードによるハッピーな"In The Wilderness"、全体を覆うソプラノボイスやストリングスに臆することなく鳴らされるドラムスやギターが印象的な"In A Funny Day"など中盤の層は非常に厚め。その後も直球や変化球を交えながら、最後まで「リアリティのある音」をキーワードにして中盤の流れをフォローし、小さい波をリズミカルに重ねて大波を起こす展開が続きます。近2作と比べると即効力は幾分弱めですが、聴き込む度に奥の深さを実感できる作品で、前作で弱まった輝きが再度強烈に放たれ始めました。ただ、ジャケットは不気味。(2005/1/22)

Snowflake Midnight (2008)                                             Mercury Rev - Snowflake Midnight

★★★★☆
約3年半ぶりの7thアルバムは、前作で究めたサイケデリックポップ路線からエレクトロニクスを大胆にフィーチャーしたサウンドへと大きく針路を変更。ドリーミーさの残り香にやや強めの電子音でドラマティックな世界を構築した"Snowflake in A Hot World"で幕を開けると、無機的にビートを刻むバックトラックに人間的な揺らぎを持つJonathanのボーカルが暖かさを添える"Butterfly's Wing"、サイケデリアに逃げ込まない冷たいウォールオブサウンドを聴かせる"Senses on Fire"など、一つの曲に対極要素をパッケージ。その後も、深みのある音場で組曲的な展開を見せる"People Are So Unpredictable (There's No Bliss Like Home)"や電子音が織りなす彩度の低いサイケデリアが圧巻の"Dream of A Young Girl As A Flower"、重めの流れをゆっくりと緩めていく"Faraway from Cars"なども完璧。温度感の低いエレクトロニクスを駆使したサウンドは多少の世捨て人的な雰囲気を残しつつも過度なアブストラクトさはなく、逆にドリーミーナ部分を抑えてリアリスティックな方向へ力強く踏み出した印象。従来のジワジワと感覚が麻痺していくような中毒性が弱いのは残念ですが、シンセサイザーで楽曲に浮遊感を与える手法は確実にトリップ感覚を想起。革新的とまでは言えませんが、新たな方向へ着実に前進する姿勢を見せるあたりはサスガのひと言。(2008/11/12)