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Mogwai (official page / MySpace / Live '03 / Live '06)

Young Team (1997)                                                          Mogwai - Young Team

★★★★☆
フジロックのパフォーマンスでの過去の楽曲に度肝を抜かれたのと、11月の来日に備えて、これまで未聴の1stアルバムを購入。"Rock Action"以降の多様な楽器をフィーチャーして深化していく近作に比べると、静寂と喧噪を切り替えるスイッチの動作スピードが非常に速く、情景を一変させる振幅変化も強烈で、日常で体験する感情の瞬間的な変化にも似ています。といっても、雑然としているとか、初期衝動で突っ走ったということはなく、充分なエネルギーを内包しながらも作品としてのまとまりは維持していて、ギター中心のスタイルで実現可能なことを最適化している感じがします。個々の楽曲が自身の魅力だけを主張するのではなく、相反する楽曲を引き立てながらトータルでMogwaiの世界を構築する前半、平穏をフィードバックノイズで鋭く切り裂く"With Portfolio"から新たな平穏とメランコリーを生み出す"R U Still in 2 It"、アルバムをダイジェスト化するのではなく、全要素を濃縮して論理的なカタルシスを生み出した"Mogwai Fear Satan"と楽曲の粒も文句なし。所詮、他人の思考過程やバックグランドから導き出されたものである歌詞を排除した音楽は、言葉という翻訳が必要な記号列がない分だけダイレクトで、一度放たれた後は受け手側に全ての解釈が委譲されるので個々のオーディエンスにとってリアルなのはある意味当然でしょう。この凄みとキレはタマラナイです。(2003/9/13)

Come on Die Young (1999)                                                            

★★★★
プロデューサーにMercury RevのDave Fridmannを迎えたこのアルバムは、Mercury Rev系統の一派に挙げられると思いますが、サウンドの間に見えるリアリティはもっと鮮烈です。Mercury Revのサウンドはあちら側を感じさせるものですが、Mogwaiの簡素で少ない音で表現された音はこちら側と自分自身の存在を感じさせるものです。ギター、ドラム、ベース、キーボードで鳴らされる音は抑揚が少なく、無理にコントロールされたように感じられる感情表現がリアルで痛々しいです。音はいたってシンプルですが、ドラムとギターが中心となってボリュームコントロールを中心に表現される楽曲は独特で感情の固有振動数に共鳴し、言葉がなくても充分に想いを伝えることができています。派手な音楽的な仕掛けもなければ、起伏に富んだ楽曲があるわけでもないのに、聴いているものを引きずり込むだけのエネルギーと説得力を兼ね備えたこのアルバムは貴重で、弱いながらも心を長い時間揺さぶり続ける音が詰まってます。自分たちの表現結果を突きつけることなく淡々と自分たちの表現を続け、聴く側が彼らの作る音の隙間に自分の存在を置くことによって完成する不思議な音楽だと思います。

Rock Action (2001)                                                           Mogwai - Rock Action

★★★★☆
前作の"Come On Die Young"の音はライブ感が強く残り、ドライなリズムトラックが特徴的でした。そして、そこに単調なギターのフレーズ、更に時折、沈黙を引き裂きながら被さってくるノイズ混沌さが、直接感情に訴えかけてサイケデリックな感覚を引き起こしてましたが、このニューアルバムは少しアプローチが違う気がします。簡単に言うと、とても分かりやすくなっています。音のバリエーションは増え、ライブ感は薄まったものの音自身は洗練され、それぞれの曲が持つ特徴的な部分が非常にストレートに表現されていると思います。1曲1曲が強烈なエネルギーを持ってぶつかってくるというよりも、アルバムを通して聴いたときに曲同士の相互作用によって、二次的なサイケデリック感が引き起こされるようです。相変わらず音は非常に映像的で、前作よりもボーカルがフィーチャーされているとはいえ、言語を介さずに感覚に直接訴えかける雄弁さを持ってます。前作でモノクロームだった風景は、大胆にフィーチャーしたストリングスやキーボードによってうっすらと色が付けられ、微妙にリアル感に変化が出ています。"Take Me Somewhere Nice"に完璧に心奪われました。分かりやすい方向の変化が必ずしも悪ではないという当たり前の事実を明快に表現したアルバムだと思います。

My Father My King (2001)                                                Mogwai - My Father My King

★★☆
Mogwaiのライブ評で必ず見かける言葉が「轟音ギター」という言葉。確かにスタジオ録音の作品でもその断片は見え隠れしてますが、今ひとつピンと来ず、最新アルバム"Rock Action"のソフィスティケイトされた音を聴くいて益々クエッションマークが増えました。そして、このシングル。アートワークはどことなく"Rock Action"風ですが中身は全く違います。ほぼ全編に渡って繰り返される単純なギターのフレーズとノイズ。ときにはクリアに、ときにはディストーションがかかるリフが20分を超える曲の中で潮が満ちては引いていくような展開を見せ、ヘッドフォンで繰り返し聴くとシンプルなフレーズが生体リズムとシンクロして気分が高揚していき、アドレナリンが分泌し続けるような感覚に襲われました。何ヶ所か共感できる部分もありますし、この音がライブの音に近いんだろうなと納得する一方で、日常生活で聴く音としては 少々暴力的過ぎで「ちょっとキツイよ〜」っていうのが本音です。しかし、この曲のアレンジがArthur Bakerってホントかなぁ〜

Happy Songs for Happy People (2003)                           Mogwai - Happy Songs for Happy People

★★★★☆
ボーカルや様々な楽器群を大フィーチャーして色のバリエーションを活かした"Rock Action"、ギターのフレーズやノイズのレイヤをコントロールして筆圧のバリエーションを活かした"My Father My King"。これらは直接的なアプローチの違いはありますが、静寂から轟音までダイナミックレンジを最大限に使うMogwaiのサウンドスケープという括りでは同じ地点に着地していましたが、今作は前二作のアプローチを柔軟に適用しながら、それを昇華して新しい一歩を踏み出したように感じられます。序盤はボコーダとギターによる不安定な揺らぎの"Hunted by A Freak"、時定数の長い感情の振れを感じさせる"Moose? I Amn't"から"Kids Will Be Skeletons"と平穏に進みます。中盤では、ライブでのSigur Rosを彷彿とさせる"Boring Machines Disturbs Sleep"に続いて、"Ratts of The Captal"で静と動が同居するMogwaiワールドをパッケージ化。そして、クライマックスは直前までのテンションを緩和する"Golden Porsche"、シンプルなピアノと打ち込みリズムが美しい"I Know You Are But What Am I?"、再びSigur Rosチックな展開を見せる"Stop Coming to My House"の3曲を貫く壮絶なエモーションで、この新境地にはアッサリと無条件降伏でした。メロディのキャッチーさが若干後退し、しかもデリケートな曲も多いのは弱点とも言えますが、特に新たに踏み出した方向性は特にライブでの爆発力が期待できそうで楽しみです。何が何でもヘッドフォンを使って大音量で聴いてみて下さい。深みを増したサウンドスケープ、絶品です。(2003/5/25)

Mr. Beast (2006)                                                               Mogwai - Mr. Beast

★★★★☆
約3年ぶりの5thアルバムは、静寂と轟音という異質なものを繋ぎ合わせた"Young Team"や"Come on Die Young"、ストリングスやキーボードとノイズを緻密に組み合わせた"Rock Action"や"Happy Songs for Happy People"の両方の影響を感じさせつつ、いずれとも違った内容に仕上がっています。リードトラック"Auto Rock"はピアノと徐々に厚くなるノイズギターとのユニゾンが感情を昂揚させる程度ですが、常時多層のディストーションギターを纏った"Glasgow Mega-Snake"で早くも最初のカタルシス。一転、打ち込みリズムにクリアなギターとキーボードで長周期のウネリを創出する"Acid Food"、その流れを汲んでメランコリックなメロディと暴力的なギターを正面衝突させた"Travel Is Dangerous"と序盤から充実。その後は、美しいメロディをミニマルに仕上げた"Team Handed"、キーボードとギターのバランスが絶妙な"Friend of The Night"、envyのメンバが日本語の詩を朗読する荘厳な"I Chose Horses"など緩めの流れですが、再びギターの持つプリミティブな破壊力を前面に押し出したクロージングトラック"We're No Here"で二度目のカタルシス。日常の感情変化をこれまでのようにデフォルメせず忠実に再現した表現方法は、これまでで最も奇を衒わないメソッドであるが故に、楽曲とその表現力の凄まじさがより直接的に訴えかけ、ノイズの美しさも唯一無二。(2006/3/25)

Zidane A 21st Century Portrait (2006)                            Mogwai - Zidane A 21st Century Portrait

★★★☆
サッカー元フランス代表のジネディーヌ・ジダンの1試合のプレイを撮影したドキュメンタリー映画"Zidane A 21st Century Portrait (ジダン 神が愛した男)"のMogwai+Tony Dooganによるサウンドトラック。Mogwaiサウンドの大きな特徴である轟音を一切排除したアンビエントな雰囲気にもかかわらず、静寂を積極的に取り込んだサウンドプロダクションによって独特の切迫感や凄みが生み出され、その結果として非常に集中力が要求される内容に仕上がっています。やや叙情的ではありますが、最近のオリジナルアルバムに収録されていても違和感のない美しくシンフォニックな"Black Spider"や"7:25"、小さなギターノイズが生み出した深い闇から、音数の少ないピアノによって放出されるポジティブなエネルギーがSigur Rosを彷彿とさせる"Half Time"など、物静かながらも芯が通った強靱さのある楽曲が満載。但し、音楽によるイメージの歪曲や固定化を避けるためなのか、日常に潜んでいるような音や心象風景を顕在化したような抽象的な楽曲は、音楽的に一定の水準で完成されているものの、作品的にはラスト1ピースとして映像が必要な感じもあります。その意味では、確かにMogwaiの音楽であり、起伏の少なさ故に微妙な変化を鮮やかに描き出すという面がある一方で、映像領域をコミットしない優れたサントラという制約条件を強く意識してしまう作品でもあります。(2006/12/5)

The Hawk Is Howling (2008)                                          Mogwai - The Hawk Is Howling

★★★★☆
プロデューサがAndy Miller、レコーディングがChem 19スタジオという10年ぶりの"Young Team"体制による6thアルバムは、これまでのキャリアパスを充分に活かした原点回帰。繊細かつストイックな序盤で貯めたエネルギーを終盤でゆっくり吐き出した"I'm Jim Morrison, I'm Dead"で始まると、ノイズの激しさと美しさの両極を完璧に共存させた"Batcat"と期待感充分の立ち上がり。中盤に差し掛かるに連れて蓄積してきた重苦しさを、多少流れから浮いたポップさを持つ"The Sun Smells Too Loud"で緩和した後、キーボードとギターのコラボで寡黙ながらも深く艶やかな世界を構築した"Scotland's Shame"、シロフォン風のエレピと音の隙間から聞こえてくるストリングスが暗闇の中の仄かな明かりのような"Thank You Space Expert"、ギターとリズムが淡々としたフレーズを繰り返す中、ノイズギターが閃光を放つ"The Precipice"へのクライマックスは圧巻。様々な音を散りばめつつ終始ギターを中心に据えたサウンドプロダクションは、キーボードやストリングスなどが楽曲の色付けに活躍していた近作と比べるとやや地味な印象。但し、表面的なカラフルさが減少した一方で、メランコリックな曲や繊細な曲でさえ、重厚さや内に秘めた激しさを感じさせる楽曲が増加。特に、複数のノイズギターで緻密に織り上げられた世界はあまりに美しく、温故知新を実践しながら次へのステージへ到達。(2008/10/18)