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Oasis (official page / MySpace / live'00 / live'02 / live'09)

Definitely Maybe (1994)                                                                 

★★★★
「俺は俺でいる必要がある」、これ以上ないほどのシンプルなマニフェストを引っ提げたOasisのデビューアルバムは、サウンド面でも特に凝った飾りもなくシンプルでストレート。Liamのボーカルには今のような凄みやふてぶてしさはなく線の細さが目立ちますし、Noelのメロディも光る部分はありますが完成途上で、アルバムとしては持っているパンチを全て出してみたという印象があります。"Live Forever"や"Supersonic", "Cigarettes & Alcohol"などのアルバムの核となり得るシンプルさと力強さを兼ね備えた曲もありますが、音が完全に整理されていないため、多少散漫でバンドの進行方向に対して音がぶれているように感じられる部分もあります。それでも、そんな欠点を補うだけのメロディと、高らかに宣言したマニフェストへ向かうだけの推進力を感じます。核ではありませんが、他の曲にはないポップさを持った"Digsy's Diner"、その後のグッドメロディ爆発を予感させる隠れた名曲"Slide Away"、レイドバックした雰囲気の"Married with Children"へのラストの流れは前半の部分的な粗さを消し去るだけの説得力を持っています。原石とともに、幾つかのダイヤモンド自身も詰まった作品です。

(What's The Story) Morning Glory (1995)                                     

★★★★★
呆れるほどのメガヒットを記録したこのアルバムでは、1stアルバムに残された課題を完璧にクリアしてきました。楽曲の幅が広がったにも関わらず、アルバムとしてのまとまりは抜群で、しかも感じられる自由度、スケールともに前作の比ではありません。特にLiamのボーカルの成長には目を見張るものがあり、"Roll with It"で独特の歌い回しをしたかと思えば、"Wonderwall"では良い感じに力を抜き、スタイルの確立と表現力の獲得を同時にやってのけてます。その一方で、メロディの完成度の高さも超弩級で、全ての曲がほぼ完璧に近いレベルに達しています。アレンジ面でも、みんな大好き"Don't Look Back in Anger"は言うに及ばず、大声で歌い出してしまいそうな"Some Might Say"、スローバラード"Cast No Shadow"、Liamのボーカル爆発のOasis流ロックナンバー"Morning Glory"と比較的単調だった前作に比べるとバラエティに富み、一瞬も退屈させることはありません。そして、アルバムの楽曲全てを内包しているような"Champagne Supernova"に至っては唖然。Noelの作る希有なクオリティを持ったメロディと強烈な存在感のLiamのボーカル、全てがシナジスティックに影響しあい、「俺が俺でいる必要がある」ことを実現しました。これほど、前作をフォローアップできたアルバムも珍しいと思います。文句なし。

Be Here Now (1997)                                                                       

★★★☆
前作"(What's The Story) Morning Glory"が売れまくった後にリリースされた3rdアルバムは、リリース当初はプレス大絶賛。しかし、後になって手のひらを返したような低い評価に変わり、挙げ句の果てにはメンバー自身もその評価を受け入れてしまうような発言もしてました。僕は逆にリリース当初の大騒ぎは斜に構えていましたたが、冷静に聞くにしたがって「そんなに悪くないやん」という評価に辿り着きました。ストリングスをうまく使って盛り上げていく"Stand by Me"や1stの頃を感じさせる疾走感たっぷりの"I Hope, I Think, I Know"があると思えば、究極の泣きのメロディを持った"Don't Go Away"、強烈な構成と威力のリフを持つ"All Around The World"などは単純に感心しました。確かに、前作までと比べると、全体的にアレンジが仰々しくなった分、瑞々しい魅力は薄れていますし、メロディやフレーズの手垢も多少気にはなります。サウンドを詰め込むことで幅を出そうとしているのも疑問ではあります。それでも、この作品だけに焦点を絞って評価すると、平均は軽く超えていると思います。前作の強烈なイメージと評価を引きずったまま、不当に過小評価されているように思えてなりません。

The Masterplan (1998)                                                                   

★★★★☆
今年の7月から彼らのオフィシャルのウェブページ上で投票されたシングルB面の上位の曲を収めたコンピレーションアルバムですが、「本当にこれが全部B面の曲なのかというほどクオリティの高さです。シングルでもアルバムでも彼らのメロディーの強力さは他のバンドが太刀打ちできないものでしたが、ここでもそれを実証してます。アコースティックで繊細な曲から骨太な力強い曲まで、とにかく強烈に良いメロディーが存在しています。思わず歌いだしたくなるような曲の連続、それが彼らの特徴の大きな一つであり、最大の武器なんだと思い知らされます。昔からの正統派Oasisサウンドあり、"Be Here Now"的ラウドサウンドありと、ガタガタ言う必要のない寝ても覚めてものOasisワールド。"Talk Tonight"のアコースティック&美しいコーラス、"Listen up"の力強くも叙情的なフレーズ、とにかく彼らの良い面が山ほど入ってます。新作のレコーディングを始めたという噂も聞こえてきていますが、シングルを持っていない人にとってはこのアルバムは充分に次作発表まで間をつないでくれる、そんなアルバムです。たかがB面集だとなめてかかっていると大事なものを聞き逃してしまいます

Standing on The Shoulder of Giants (2000)                                  

★★★
コンピレーション"The Masterplan"を間に挟み、オリジナルとしては約2年半ぶりのOasisの4枚目のアルバムです。前作"Be Here Now"はリリース直後は様々なところで拍手喝采を浴び、その後雑誌メディアでこき下ろされ「失敗作」とまでいわれてましたが、僕は個人的には今聞くと最初に聞いた時よりも楽しめています。確かに、2ndアルバムにあった楽曲群には及ばないかもしれないですが、それでも圧倒的な説得力を持ったメロディは健在ですし、ポジティビティの軸に全てを射影してしまう強引さも潔かったと思います。逆に、あの強引さこそが当時のOasisの持ち味だったと思ってます。変われば変わったでシンパからは「昔が良かった」と言われ、変わらなければ変わらなければでアンチには「成長がない」と言われる彼らが紡ぎだした音は、これまでとは違います。少し余裕が出てきたのか、これまでのように勢いだけに裏打ちされた曲ではなく、理論的に構築されたような曲作りが印象的です。メロディはこれまでの作品に比べると平坦になってしまったような感じは否めないし、暴力的なスケール感も感じられませんが、一方で広がりは感じられます。これまでが一次元的な、線方向の広がり=伸びしかなかったのが、二次元的な平面への広がりを持ったという感じでしょうか。但し、まだまだ着地する場所は中途半端で、ブレイクスルーには至ってません。ドラムのループやサンプリングの手法自体はすでに手垢にまみれているわけで、Oasisがそれらを利用したという以上のものが感じられないのも事実です。ただ、"Go Let It Out!"のザラッとした感じや、Liamの初ソングライティングの"Little James"などに新境地も見えるので、まだまだベクトルが定まっていないのでしょう。新しいメンバーがサウンドプロダクションに関わるようになってからが正念場だと思います。

Familiar to Millions (2000)                                                             

★★★☆
Noelのワールドツアーの不参加やメンバーのプライベートなど、音楽周辺での話題ばかりに注目が集まったOasisですが、このアルバムを聴いた限りではまだまだ彼らは大丈夫なんじゃないかなあという思いが漠然と湧いてきました。彼らはよく使われる意味での「ライブバンド」とは思いませんが、このアルバムで聴かれる音の強靱さ、自信、スピード感、さらには、オーディエンスとの一体感が手伝って生み出されるグルーヴには恐れ入りました。当然の大合唱ソング"Wonderwall"や"Don't Look Back In Anger"以外の曲も、すさまじいエネルギーが伝わってきます。ワールドツアーの最初と言うこともあるんでしょうが、3月に神戸で見たライブとはドライブ感や演奏の安定度など雲泥の差があるのを認めざるを得ません。最新アルバムからの曲は「変化すること」に対する義務感のようなものを持って作られたような感じがして、頭でっかちな部分が気がしていましたが、こんなライブをやったら、そんなことは全て忘れてしまって彼らの持ち味を最高に引き出すような作品を作ってくれそうな予感がしました。U2が様々な方向を模索しながら原点を鳥瞰する地点に向かったように、そんな時間も必要なんだと思います。様々な雑音を振り払い、次作への期待感を生み出させるのにも充分で、Oasisは終わっていないという当たり前のことを再認識させてくれる一枚でした。

Heathen Chemistry (2002)                                                             

★★★★
もろに「ロックンロールだぜ、ベイビー」的な先行シングル"The Hindu Times"で感じた1stの頃のサウンドの断片からすると、アルバムはちょっぴり違う方向か。横柄なまでに力ずくでオーディエンスの間口をこじ開けながら侵入してくるような強力なメロディとパワーを持った曲はありませんが、そうかといって本質を持たない小手先だけの曲もないように思います。前作にも増してNoel以外の楽曲が増え、若干統一感に欠ける気もしますが、何故か一番OasisのロックっぽいGemの"Hung in A Bad Place"や「歌謡ろっく」とロックンロールのブレンドの妙の"Stop Crying Your Heart Out"など守備範囲が一気に増した印象があります。これぞOasisといったグッドメロディーの"Little By Little"はサスガですが、Noelの楽曲のクオリティに僅かにバラツキが出てきたのは気になります。ただ、Liamや他のメンバーの楽曲がそれを補う役割を十二分に果たしたり、圧倒的な存在感を持っていたLiamのボーカルが少々影を潜めたものの、その分Noelが活躍したりと二大巨頭のカリスマ性だけで力任せに押し切る姿勢から、バンドが正常に機能し始めた様子がうかがえます。Johnny Marrをギターとコーラスに迎えた"(Probably) All in The Mind"のバンドとしてのグルーヴ感には驚きました。大きな音で演奏しなくてもグルーヴを生み出せるという見本のような曲で、前作で感じられた迷いはこのアルバムには全くありません。Liamの"Born on A Different Cloud"も最高にカッコイイし、メンバー間で微妙なバランスを取っている危うさを感じると同時に、この勢いはしばらく止まらなさそうな気もします。

Don't Believe The Truth (2005)                                                      

★★★★
約3年ぶりの6thアルバムは、多少考え過ぎの感があったサウンドプロダクションは薄れ、アレンジこそ多彩になりましたが、全体的にはシンプルな路線へと回帰。Liamの太々しいボーカルを活かしたメロディと間奏のノスタルジックなギターが印象的な"Turn up The Sun"、ギター/ドラムス/ベースのユニゾンが豪快に曲を進行して行く"Mucky Fingers"と来て、単独で聴いたときには何の面白味も感じなかった"Lyla"が妙に新鮮に響く序盤。さらに、水戸黄門のテーマのようなイントロの"The Importance of Being Idle"、軽快なノスタルジーを醸し出す"Part of The Queue"など、Noelの曲にクオリティのバラツキも見られません。そして、Andy Bell会心のドキャッチーメロディをロックに仕上げた"Keep The Dream Alive"、アルバム中最高にグルーヴィなGemに"A Bell Will Ring"、美しいメロディをアッサリ味のドラマティックな展開に仕上げた"Let There Be Love"への終盤の流れは圧巻。ここ何作かは新しい方向性の片鱗を見せる度に、ファンからもアンチからもダメ出しされるという負のスパイラルでしたが、「Oasisの評価軸で唯一意味を持つのはOasisらしさである」とでも主張するような開き直りによって、楽曲の表情に随分と輝きが戻って来ました。かつては制御不能だった疾走感とエネルギーの統制を「成長」と考えることさえできれば、ここしばらく続いたモヤモヤを払拭してくれる内容です。(2005/6/4)
Dig Out Your Soul (2008)                                                               

★★★☆
前作と同じくDave Sardyプロデュースによる約3年ぶりの7thアルバム。Noelの作品が一作品ぶりに過半数を確保した内容は前作よりも音に手が加えられていて、瞬発力のあるシングル向きの曲よりも、持久力のあるアルバム向きの曲が多め。太い音がライブのオープニングにハマリそうな"Bag It Up"から"The Turning"への流れやグルーヴ感をCDの段階から注入することに成功した"The Shock of The Lightning"の序盤は「強さの戻ったOasis」を感じさせる展開。その後は、サラリと美しいスローバラードの"I'm Outta Time"、レイドバック感覚が絶妙な"(Get Off Your) High Horse Lady"、シタールを使ったオリエンタルグルーヴが楽曲にマッチした"To Be Where There's Life"など、個々のメンバーの個性に起因した面白味はあるものの、勢いは若干弱め。"Be Here Now"以降は常に「変わること」に正面から対峙しながら、結局1stや2ndに代わる新たな立ち位置を開拓し切れず、ある種の限界を感じさせる時期の連続。そんな中、前作で「手を抜くこと」で良い曲をシンプルに聴かせるという彼らの強みが戻って来たと感じただけに、個人的にはこの「頑張った」方向転換は少々残念。特に、以前のメロディの輝きが失われているだけに、作り込んだバックトラックが徒になり、メロディが飲み込まれ気味。両者のバランスを巧く取れればそんな課題も解決しそうですが、今のところは完成途上。(2008/11/10)