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斉藤和義 (official page)

I ♥ Me (2007)                                                                    斉藤和義 - I ♥ Me

★★★☆
真面目に聴くのは"Because"以来、約10年ぶりとなる斉藤和義の12thアルバム。これだけ間が空くと、サウンドや歌詞に大きな変化があるのが普通ですが、男視線、女視線、日常型、抽象型、メッセージ型など、様々なタイプの言葉を、幅広いメロディに乗せながら歌うスタイルは、呆気にとられる程、時間の不連続性は感じられません。パッと聴いたときに耳に飛び込んでくるのは、力強い先行シングルの"虹"かも知れませんが、個人的には誰もが生活で直面する選択肢に都会的な感覚で優先順位を付けて行く滑稽だけど切ない"新宿ララバイ"が最強。それ以外にもギターの小気味良いカッティングにシニカルな歌詞をぶつけた"I Love Me"や泥臭いメロディと言葉の相性が良い"男節"、トレモロを効かせたバックトラックの上に不安定なメロディを重ねた"トレモロ"や素朴なセンチメンタルさが心に染みる"かすみ草"など平均レベルを超える曲は多数。確かに、サウンド的に斬新さはありませんが、どこにでも転がっていそうなストーリーを等身大で描き出すセンスは相変わらず素晴らしく、ノンフィクション感が強い分だけ、彼の感覚と共振するとその曲の世界観に引き込まれて行きます。特に、シングルやコマーシャルとのタイアップ曲とは一線を画した「濃い世界」の描写は映像的でさえあり、行間ならぬ、音符間から詳細な物語が垣間見えて来るようです。(2007/11/6)

歌うたい15 Singles Best 1993-2007 (2008)                                    

★★★★
デビュー15周年記念のレアトラックを含むシングルズコンピレーション。フォークからポップス、ブルース、ロックを俯瞰した縦断しながら、多彩な手法で味付けした楽曲群は満腹感も充分。さすがにセピアカラー掛かってしまった"僕の見たビー トルズはTVの中"で始まると、歌詞のインパクトが今でも強烈な"君の顔が好きだ"、TV番組やコマーシャルとのタイアップが続いた"歩いて帰ろう"、"大丈夫"、"空に星が綺麗"など、まずはメロディのキャッチーさをアピール。そうかと思えば、チープなリズムマシンの打ち込みをベースにエッジをぼかした"deja vu"、イタズラ電話が頻発する実話をブルージーなサウンドで渋く"ポストにマヨネーズ"、微妙にグラマラスな"砂漠に赤い花"とアザーサイドもシッカリ主張。その後も、個人的なオールタイムバラードの"歌うたいのバラッド"、蝶がヒラヒラ舞う情景が頭に浮かぶ"アゲハ"、2人のいる風景を鮮やかに描いた"やわらかな日"、ちょっぴり切ない"真夜中のプール"に"ウエディング・ソング"、超絶のメランコリックなメロディが炸裂する未発表曲"Ride on The Sun"など耳に残る楽曲を連発。超ハイレベルなメロディが多い訳ではないものの、捻った言葉や日常のシーンの切り取り方が秀逸で、音と言葉が相互補完だけではなく、1プラス1を2以上に引き上げることに成功。オリジナルアルバムの深さこそありませんが、彼の魅力を知らしめるには最適の一枚。(2008/9/7)

月が昇れば (2009)                                                              斉藤和義 - 月が昇れば

★★★★
約2年ぶりの13thアルバムは、ブルースの香りが強めの埃立つロックからアコースティック系楽器でシットリとまとめたバラードまで全方位的に過不足なくカバーし、マルチインストゥルメンタリストぶりを遺憾なく発揮。唸りを上げるギターに歯切れの良いブラスが絡まり、この上なくポジティブなエネルギーの流れを感じさせる"Come on!"からガリガリしたギターと微妙に湿気を含んだメロディが不思議と相性の良い"Love & Peace"と押せ押せの流れで始まるものの、どれだけ強がってみせても格好悪さ全開の"映画監督"と"後悔シャッフル"が序盤の個人的ヤマ場。その後も、柔らかなメロディにシニカルな言葉を重ねる"天国の月"、過去の記憶をノスタルジックになぞる"Summer Days"から現在の想いをメランコリックに歌う"ハローグッバイ"、未来を見据えてそっと語りかける"アンコール"の終盤の流れは派手さはなくとも完璧。ここしばらく最近続いていたお手軽感漂うタイアップ戦略に閉口気味だっただけに、このアルバムに収録された楽曲のレベルの高さは予想外で、まさに嬉しい誤算。特に、アルバム収録曲の濃密さが際立つ分だけ、今ひとつ薄っぺらく感じていたシングル群が巧い具合に緩い空気感を生み出していて、作品全体に強力なダイナミズムが生まれるという副次的効果も発生。オーソドックスという足枷を逆手にとって、限られた枠の中で自由自在に振る舞った充実作。(2009/11/03)