"OK Computer"と"Kid A"の二つの極の間をユラユラしていた"Hail to The
Thief"と比べると、両者を一つのエリアで邂逅させたような新種の生命力を感じさせるグルーヴィな楽曲が増加。それぞれのサウンドプロダクション自体の斬新さが失われた時点で、キッチリと両者を効果的に組み合わせた楽曲を方法論や抽象論ではなく、具体的な楽曲として表現して来るところはさすがに第一人者。レコード会社を通さずにダウンロード販売を行うという販売方法の導入を含めて、最も2007年らしいアルバム。(2007/12/25)
近作の音響的アプローチは影を潜め、やや薄らいでいたベーシックな音楽的要素が再び表出し、サウンド面以外で"Yankee Hotel
Foxtrot"以降を感じさせる作品。工夫が凝らされたサウンドがシーンを席巻する中、短期的な成功に繋がるスキームを放棄し、生々しい音を重ねて曲を構築することもある意味で実験的アプローチ。イノベーションという派手な言葉こそ似合わないものの、メインストリームに対する自浄作用として機能する曲を生み出し続ける彼らのクリエイティビティは頼もしい限り。(2007/12/25)
5. The Boy
with No Name / Travis (2)
近作はポップ性や力強さ、バラエティに富んだバンドサウンドなど、深化よりも進化を求める一方、「どこかが膨らむと、別のどこかが引っ込む」という印象。そんな歯痒さとは対照的に、今作は奇を衒わない肩の力が抜けたサウンドをベースに、キャリアで得たものを取り込みながら、全体を過不足ない繊細さで統一することに見事成功。"The
Man
Who"がTravisのデファクトスタンダードだった人にもオススメ。特に斬新さはないものの、美しいメロディをシンプルに歌うことの真摯さが伝わってくる一枚。(2007/12/25)
美しいメロディを中心とし、男女ボーカリストを配した楽曲群は、偏執狂的な部分を控え目にしたBelle &
Sebastianっぽい雰囲気がチラリ。曲毎に表現のタッチが変わっても、共通基盤として存在するのは現実味を残したロマンティシズムで、Prefab
Sproutにも似た儚さと美しさをひたすら貫き通した確信犯的サウンド。タイトルトラック"In Our Bedroom After The
War"のスケールの大きさは桁外れで、瞬時に耳を捉えて離さないキラーチューンこそないものの、懐の深い楽曲の連続。(2007/12/25)