9月に解散を発表したArab
Strapのラストツアー。発表時には日本が入っていなかったので、「もう一生ライブは見れないんだ…」という寂しさを感じたが、ヨーロッパでの日程終了後にジャパンツアーが追加されたことを知り、すぐさまチケットをゲット。ただ、客観的に感じていた彼らの解散が急に現実的になったことで、別の寂しさが徐々に増えてきた。
開演時間は18:30だったが、オープニングアクトが発表されていたので19:00過ぎに会場へ向かった。「良く見つけられたな」というくらいに目立たない階段を下り、忘年会シーズンの喧噪を遮断するドアを開いた。初めての会場だったので、フロアを少し覗く。キャパは200人ということで、学校の教室を一回り広くしたような感じだ。外の光を遮蔽するために暗幕でフロアの入口を覆っていたり、ブロックの上にスピーカーを置いているところなんて文化祭並みのチープさ。ただ、そんな雰囲気がArab
Strapっぽかった。
ドリンクチケットとビールを交換しに行くと、ダッフルコートを着た髭面の大男=Aidanと遭遇。彼は普通にビールを飲みながらファンと雑談中で、握手をしてもらえた。これで、The
Delgados、Belle & Sebastian、Arab
Strapとグラスゴーの大物3組とのフィジカルタッチが完了。Aidanは最初こそ写真を撮られていたが、繰り返しウロウロしていたため、その内歩いていても振り向かれることもなくなっていた。ただ、それがArab
Strapっぽかった。
19:45頃にDJの音楽がフェードアウトし、Aidan、Malcolmの二人とドラムス、ベース、ギターのサポートメンバーの5人がノソノソと登場し、数名の「エイダ〜ン!」という声とパラパラ起こった拍手の中、"Stink"でライブはスタート。アルバムよりも力強い演奏はメロディを素朴になぞっていくスタイルAidanのボーカルを覆い隠し気味だったが、次第にAidanの声が出てきたのとミキシングが修正されたことでバランスは改善。アルバムでは陰鬱なイメージが強いものの、ライブでの彼らの音は意外にも骨太で、"Don't
Ask Me to
Dance"の間奏のノイズギターやアウトロでのAidanによるエレクトロパッドを使ったドラミングなどアグレッシブな部分が強く現れていた。
ライブでは"Dream Sequence"などのリッチな楽曲が映えるが、やはり独自の世界観を表現するのはスローテンポのミニマルな楽曲で、"Who
Named The
Days?"や"Piglet"などのシンプルな曲を聴くに連れてセンチメンタルな気分になって来たタイミングで「次は古い曲だよ」とロックモード全開の"Gilded"を挟む。「ビールと酒を飲み過ぎて…」というAidanに向かって、オーディエンスが「(今日も)飲み過ぎだよ!」と言うと、「俺にはこれがいるんだよ」とポツリ。そして、「グッドジョブ」という観客に苦笑する。彼らが意図しているかどうかは分からないけど、解散へのカウントダウンがが進んでいることなど全く感じさせない。ただ、それがArab
Strapっぽかった。
Aidanがキーボードの前に座ると、史上稀に見るオプティミスティックなラストシングル"There Is No
Ending"が始まり、本編ラストのファーストシングル"The First Big
Weekend"へ。ところが、Aidanのポエトリーリーディングが終わったところで、ドラムマシーンが動かず、「じゃ、バイバイ!」とおどけてフロアに手を振るAidanにフロアの空気は少し緩む。Aidanが"Fucking
Machine"と呟いた後、リズムマシーンが動き出して仕切直し。Aidanと目配せをしたMalcolmのローテンションなコーラスが加わって微妙に盛り上がった後、一旦メンバーはステージ袖へ。
1分もしない内に、AidanとMalcolmの二人だけが登場。「俺達はあと10分しかできないから、あと1曲で終わりだ」というMCの後で始まったのは"The
Shy Retirer"。丁寧な演奏と歌によるメランコリックなメロディに再びセンチメンタルな気分になるものの、曲が終わると彼らは日本語で「ありがとうございました。さようなら」と言い残し、ライブは21:10頃にアッサリと終了。
常に生活者=当事者の視点から等身大の体験を歌ってきたArab
Strapは「ラストツアーの最後の局面」という非日常的な場面でも、感傷に浸ることなくパフォーマンスを行った。そして、その淡々としたパフォーマンスは彼らの音楽同様に自分自身のありのままを伝える誠意と不格好さが詰まっていて、Arab
Strapという存在を体現していたと思う。
「俺にはこれ(ビール)が必要なんだよ」と呟いて酔っ払いながら、惨めなノンフィクションを歌い続けたArab
Strapの位置は永久のミッシングピースになるかも知れないが、彼らの飄々としたパフォーマンスを目の当たりにして、何故かライブ前とライブ中に感じた哀しみやセンチメンタリズムは消え去ったことは救いだった。彼らの日常的なパフォーマンスを見ることができて本当に良かったと思った。
フロア外で待っていたら2人が出て来る気もしたが、余計に帰りづらくなりそうだったので、忘年会シーズンの喧噪が広がる街を抜けて、すぐに家に帰った。正直、彼らの音楽を深く聴き続けていた訳ではないが、時々どうしても聴きたくなる楽曲を作ることができるバンドだっただけに、日を追うに連れて喪失感が大きくなっていくのかも知れない。傍目から見ると不格好だけど、それがArab
Strapの音楽が好きな人間っぽい気がする。(2006/12/17) |