|
予想や期待は裏切られることが多い。良い意味でも悪い意味でも。オーディエンス側の持つ予想や期待は対象のこれまでのバックグランドから想像でき得る範囲のものか、「何だかすごいもの」というような曖昧なものだ。この期待とのギャップの絶対値が大きければ大きいほどインパクトが強い。思い入れの強いアーティストがそれなりのアルバムを作った程度では納得できないのはきっとこのせいだ。Badly
Drawn Boyは親しみやすいメロディを抱え込んだアルバムのリリース後、そしてMercury
Prizeに選ばれた直後という絶妙のタイミングでの来日公演だったということもあり、大きな、そして漠然な期待を持って見に行った。
彼に対するイメージは「真面目でパッとしない風貌のアーティスト」といったところだった。現代的なセンスと自己のルーツ的な部分をバランス良く聞かせるところはBeck的と言えなくもないのだが、鬼気迫る形相で最先端サウンドを突き詰めるというよりは、メロディの分かりやすさやアレンジのシンプルさにセンスをプラスして勝負するといった感じだったし、そこに親しみやすさと近寄りやすさがあった。その一方で、本当は「偏執狂タイプで大量の機材を1人で操るのでは」等と勝手に思ってたりもした。
そして予想は外れる。開演直後、ステージにはギター、キーボード、ベース、ドラムスのメンバーが登場、少し遅れてDamon
Goughがタバコをふかしながら、片手にウイスキーのボトルを持って登場。だるそうにライブが始まる。曲の間に酒をあおりながら、ダラダラとステージは進む。正直、やる気が全然ないのかと思うようないい加減さで、イントロが終わった直後に「あ、悪い悪い、間違えちゃったよ〜」とかいいながら中断したり、歌が入る直前に「あ、そうそう、この歌はね」などと話し始める始末で、さっさと終わって帰っていくんじゃないかと思った程だ。前半の演奏は可もなく不可もなく、というにはほど遠く、演奏のミスも多いし、とにかく曲間でMCが入りすぎるため、流れがブチ切れてしまって、乗るに乗れない状態が続く。箱の中から取り出したおもちゃを持って、「こいつはポケモンよりすっげーんだぜー」と歌うポケモンブルーズまで始める始末。盛り上がることには盛り上がっていたものの、真面目に音楽を聴きに来た客は怒り出すんじゃないかと思うほどのダラケ方だった。
ところが、これが計算かもしれないと思ったのは、"Disillusion"のイントロが終わって、またまた「ちょっとストップ」といった直後に再び始まったジャストタイムのビートと演奏のタイトさだった。その後は、おふざけも少なく、演奏を続けていき、次第に会場をまとめ上げていった。「僕はずっとマンチェスターに住んでてさ」というMCで始まったのは何とBruce
Springsteenの"Born In The
USA"。プロモーションビデオよろしく右手を突き上げて歌う様は、どこまで本気でどこまでが冗談か分からなかった。
会場からリクエストを募ったり、キーボードのSEで遊んだりと最後までフレンドリーなステージを続けながらも、中盤以降はメロディを武器にしながら、力づくで会場の雰囲気をまとめ上げたのは立派なのかも知れない。ただ、やっぱり前半のダレた感じと、演奏のラフさは残念だった。演奏のラフさは持ち味と言えなくもないけど、もう少ししっかりして欲しかった。結局最初から最後まで、彼のペースに煙に巻かれたという感じで、終わったときには1時間40分が過ぎていた。彼に何を望んでいるかにもよるだろうが、僕の期待はちょっとばかり中途半端な満たされ方で終わってしまった。まあ、イメージなんてこんなものか。 |