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ATCで冷たい田舎蕎麦を食べ、身体が冷え切った状態で、冷たい風の吹く風の中をZeppへ向かう。18時50分くらいに会場に到着して、いつものPA横の場所をゲット。先月のMuseと比べると人口密度はやや低めで、動くときに人にぶつからないという適度な混み具合が嬉しい。開演時刻を過ぎても、しばらくステージ上でスタッフが動き回っていたが、19時15分に突然照明が落ちてライブは始まった。
特徴的なギターの音色の"Loser"のイントロが流れた瞬間、ステージ上に4人の人影が浮かび上がり、ステージ中央に鎮座したミニステージの中でパペットを操り始めた。ステージ後方のスクリーンにメンバーにソックリのパペットの映像が映されると、一気にフロアの温度が上がり始める。ワンコーラスが終わって本物のメンバーが登場したときにはアイドリングは完了していて、Beckがラップを始めたときには既にお祭り騒ぎ。ショートバージョンの"Loser"が終わると、人気のクラシック"Devils
Haircut"と"The New
Pollution"を筋肉質のサウンドで聴かせる。演奏力の高いバックバンドを従えることで、やや線の細い印象の初期の曲でも、ギターはエッジが立ち、ベースはドライブ感に溢れ、ドラムはタイトなリズムを刻み、ドッシリしたサウンドになっている。
"Girl"や"Mixed Bizness"と立て続けにポップな曲を演奏した後、ややダークで沈み込むような曲調がそれまでの流れに対して強いコントラストを生む"Nausea"で流れが大きく変わり、"Guero"から"The
Information"に収録されているヒップホップ色の強い曲が続く。下手をすると間延びしそうな雰囲気もあったものの、どの曲もライブ仕様に変更されていて、冗長に感じ
そうな部分を大胆に削ぎ落とし、各曲を矢継ぎ早に演奏することで、パフォーマンスに致命的なダレは起こらない。
再び流れを変えたのはBeck史上最もポップな"Sexx
Laws"。フジロックのときと同じく、かなり激しくスクラップアンドビルドされていて、アレンジだけでなく、メロディラインも大きく変わっていたため、やや盛り上がりに欠けた気がした。ピコピコシンセのアレンジ自体は面白いけれど、一気に加速するためにも、ブラスサウンドをフィーチャーしたオリジナルに近いバージョンで演奏して欲しかった。
個人的にはこの曲が唯一残念と感じたところだった。
そうしている間にもパペットは忙しく動き回る。それぞれのメンバーのステージ上の位置取りと同じ場所に立ち、Beckが歌うとBeckパペットが歌い、メンバーがドラムを叩くとドラマーパペットがドラムを叩く。
映像を使うときにもパペット用ステージ後方のディスプレイに映ったものをパペット専用カメラで撮影してスクリーンに出すという徹底ぶり。最初は軽いお遊びかと思っていたが、ステージの人の動きとシンクロしたパペットの動きはまさにプロフェッショナルな仕事だった。
パペットにも飽きてきたタイミングで、アコースティックセットが始まり、ステージ上にテーブルが運び込まれる。そう、フジロックでも見せた例の演出の再現だ。最初はBeckの横でメンバーが食事をしていて、その後コーラスを重ねたり、"The
Golden Age"ではグラスや食器でリズムを奏でながら、曲を構築していく。そして、本編最後となった"Clap
Hands"では個々のメンバーが激しく食器を叩き、最後もキッチリと決めて終了。ちなみに、この演出の間、パペット達もちゃんとテーブルに座り、食器を叩いていたから、チームBeckのこだわりは相当なものだ。
メンバーが袖に引っ込むと、「Beckzilla」というタイトルのショートフィルムがスクリーンに映される。内容はBeckパペットが夢の中でゴジラになって大暴れするという他愛のない内容。それでも、オープニングにZepp
Osakaの建物の映像を取り込んだりすることで、頭でっかちのアイデアだけではなく、オーディエンスとの一体感やインタラクティブ感を強める工夫はさすがのひと言。
Beckの場合、初期の頃はアイデア先行の感が強く、楽曲やライブもトータルではやや荒削りで、完成度という評価軸ではそれ程高くはなかったように思う。ただ、シーンがBeckのメソッドに追いつこうとし、そのメソッド自体がコモディティ化していく間に、Beckは"Mutations"や"Sea
Change"などでフォークやカントリーなどを取り込み、最終的に"Guero"でかつての位置を俯瞰できる位置に戻ってきた。そうした先進性と回帰性とのスパイラルのプロセスを経たことで、尖った部分を残しながらも、高いレベルのエンターテイメント性を表現できるようになったようなう気がする。
様々なアイデアを自画自賛で終わらせずに絶妙のユーモアのセンスでパフォーマンスに効果的に作用させながら、最後の最後に"Where
It's At"〜"E-Pro"という流れを提示して、10年間をひょいと一跨ぎして見せた。そして、飄々としてBeckはステージの袖に消えていった。(2007/4/11)
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