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3連続休日出勤
の最終日、疲れてボーッとした頭で車に乗り込み、阪神高速を飛ばして南港へ…向かうはずが、阪神高速が20kmを超す大渋滞で終始ノロノロ運転。ただ、それが功を奏して、最近ご無沙汰だったBeckの音楽を充分に予習成功。何がプラスに働くものか分からないもんだ。
2007年のツアーが「アレ」だっただけに、正直今回のライブが前回の満足度を越えることは難しいだろうという予感の中、それでもどこかBeckの天才ぶりに期待しながら19時10分前に会場に到着。最近は神通力が次第に弱まっている気がするものの、まだまだ日本での人気は大きいようで、フロアはほぼ人で埋め尽くされている。そんな中、「本日は皆様にサプライズなスペシャルイリュージョンをご覧いただきます」とかいうアナウンス。内容は…ウケ半分、失笑半分ってことろで、ある意味スペシャルな時間だったかも。ただ、あれは決してイリュージョンではないよな。
そんなハプニングで緊張感が一旦緩んで微妙な空気の流れてからしばらくして、突然フロアの照明が落ちてBeckとバンドメンバーが登場。まずは新作"Modern
Guilt"の"Gamma
Ray"でライブはスタート。前回のような度肝を抜く演出がない一方で、アルバムでは緩めに感じられる楽曲は堅さと逞しさを増し、非常に肉感的だ。続く"Devil's
Haircut"や"Timebomb"でもカット&ペースト的な様相は弱めで、意表を突くバンドサウンドとして楽曲が成立している。特に、中盤ではSonic
Youthのカバーを演奏するなど、淡々とした流れの中にもシンプルに「音で勝負する」という強い意志を感じさせるパフォーマンスが続く。
そんなサウンド指向のためか、この日は"トリッキーなWhere It's
At"よりも、クールでタイトでトライバルなリズムやギターのカッティングが効果的に使われた"Nausea"や"Youthless"のような曲の方が圧倒的にリアルに聞こえる。とはいえ、本編終盤ではバンドメンバーがステージ前方に集まって、小型のサンプラーみたいな機材を使って演奏する遊び心(今回の場合はファンサービス的要素が強いかも)も忘れてはおらず、期待されている自分らしさも表現。
その後はアコースティックギターによる"Lost Cause"でミュージシャンとしての力量を主張し、メロディとアレンジの絡みが絶妙な"Chemtrails"で静から動への爆発力を見せつけ、最後にオーディエンスの期待に応えるかのように"Loser"で本編終了。
そして、短めのインターミッションを挟んでのアンコールは"E-Pro"と"Sexx
Laws"のアッパー楽曲2連発。"E-Pro"の堅くてダーティーなギターは単調だった流れにガツンと一撃を喰らわしてフロアに波を起こし、"Sexx
Laws"はその波間にチープなピコピコサウンドを響かせながら、微妙な共鳴感を生み出していく。そして、その波が最大振幅を記録した時点でライブは終了。
約1時間20分というコンパクトな内容は前回のツアーとは対極にある、音楽以外のものを極力排除した内容で、エンターテイメントとしては地味ながらも、音楽的な見所は充分。特に、鋭いアイデアと音のコラージュでメインストリームに対してカウンターパンチを打ち続けていたBeckがギターを掻き鳴らし、バンドサウンドを聴かせることで、自らのキャリアに対するオルタナティブな立ち位置を見せたのも興味深かった。それは、彼がアイデアマンであると共に、ミュージシャンであることが伝わって来るライブだった。
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