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Belle & Sebastian / Zepp Osaka
 2年前のライブは本当に楽しかったけど、昨年リリースの"Dear Catastrophe Waitress"に何とも言えない違和感を感じ、dotmusicの「予想もしない退屈さを感じた」というレビューを読んだあたり、急速に魔法が溶け始めていた。そんなこともあって、整理番号は30番台だったけど、開演時間の10分ほど前に到着。会場の中にはいると7割から8割程度埋まっていたけど、前方にも充分なスペースがあったので前方センターへと移動。開演時間が近づいても、いわゆるロックのライブとは違って緩くフワフワした空気が充満している。15分くらい遅れておもむろに客電が落ちて、拍手と歓声が起こる中メンバーが登場。

 未発表のインストゥルメンタル"Passion Fruit"の最初の音が鳴らされた数秒後には、見事なまでのベルセバワールドが構築され、それまでのモヤモヤ感は瞬時に消え去った。バイオリンのカルテットとチェロを加えた演奏は、ロックバンドというよりは音楽隊の演奏会というような雰囲気。"Passion Fruit"に続いて"Tigermilk"から"Expectations"。忙しくストロークを刻むStuartのギターを中心にバイオリンのカルテットが厚みを加え、間奏ではトランペットが加わり、Stevieのハモりが重ねられていく。発表から10年近く経っても瑞々しさを損なわない楽曲の強靱さ、そして楽曲を慈しむように丁寧に演奏し、オリジナルを再現する演奏力は圧巻の一言。

 セットリストはは新作"Dear Catastrophe Waitress"から半分、残りは"Tigermilk", "The Boy with The Arab Strap", "If You're Feeling Sinister"、そしてアルバム未収録のEPから数曲と"Storytelling"から1曲という構成。新作はトリッキーな仕掛けとカッチリ作り込み過ぎた仕上がりに馴染めなかったはずなのに、序盤の"Wrapped up in Bocks"や"Dear Catastrophe Waitress"は充分に楽しむことができた。これはCDに比べて、音の散らし方が比べるとシンプルになっていて、曲の素材感が全面に出たからか。

 通常、ライブではテンポを早めにしたり、ギターを強調したり、アグレッシブなアレンジにしたりすることが多いけど、Belle & Sebastianの場合は各パートの音は等しく拡大され、アンサンブルのバランスは忠実に守られるにもかかわらず、曲全体の温度感や雰囲気を壊すことのないライブならではの躍動感だけがグッと強調される。淡々とした中からフツフツと沸き起こってくるライブ感とでもいうのだろうか、表層的な音やグルーヴといった切り口からはとてもライブバンドとは呼べないが、そういう意味では確実にライブバンドだ。

 ただ、それは諸刃の刃で、CDで感じた不満は図らずも再現されてしまう。序盤こそシッカリと楽しめた新作の曲も、途中からアルバムで気になった下世話さが顔を出し始め、初期の楽曲の輝きが全く失われていないのに対して、既に手垢が付いて輝度が落ちてしまったように感じることがあった。また、アルバムの流れでは気にならない部分でも、新旧織り交ぜて演奏するライブでは残酷な程にクオリティの絶対的な違いを浮かび上がらせる結果になった。

 今回はフレンドリーなパフォーマンスが印象的だった。"Dirty Dream #2"の台詞の部分を観客に言わせてみたり、コイントスで次の曲を決めてみたり。"Asleep on A Sunbeam"ではSarahが笑い出して演奏が中断してしまうと、引っ込んでいたStuartがステージに登場して冗談っぽく「出てけ」と一言。Sarahが苦笑しながら袖の方に歩いていくと、Stevieが「おーい、戻って来いよ〜」と叫んで場内爆笑。Stuartは「変な髪型」を隠すために被っていた帽子を「よし、この勇気の帽子を被って歌ってみろ」とSarahに差し出す。Sarahは渋々被って歌い出したけど、気に入らなかったのか、途中でStuartに投げ返す。こんなやりとりを通して、バンドの悪い意味で神秘さは薄れ、良い意味で化けの皮が剥がれていった。あらゆる面で新鮮な驚きという点では前回には叶わなかったけど、音楽の楽しさやライブで音楽を聴くことの意義は前回同様充分に伝わってきた。

 アンコールはメンバがステージ中央に集まって話し合って決めた"Get Me Away from Here, I'm Dying"。その力まずに、至って普通に演奏する姿は、最後までアマチュア臭さを感じさせる完璧なプロ集団だった。そして、至って普通に演奏するので、それを目の当たりにしているときにその大切さに気づけない。でも、その時間が終わってしまったときに、大切な時間が過ぎてしまったことを知る絶望感。日常性の裏側に隠された残酷性。そんな魅力に取り憑かれ、ライブが終わってから沸き起こってきたワクワク感のやり場を探して、今日もセットリストを眺めたり、アルバムを聞き返したりしている。こんなバンド、ちょっと他には居ない。(2004/1/31)

Set List
  1. Passion Fruit
  2. Expectations
  3. Step into My Office, Baby
  4. Wrapped up in Books
  5. Seeing Other People
  6. Dear Catastrophe Waitress
  7. I'm Waking up to Us
  8. Travellin’ Light
  9. Photo Jenny
  10. You Don’t Send Me
  11. Scooby Driver
  12. Stars of Track & Field
  13. Piazza, New York Catcher
  14. Asleep on A Sunbeam
  15. Like Dylan in The Movies
  16. Dirty Dream #2
  17. If You Find Yourself Caught in Love
  18. Roy Walker
  19. Stay Loose
  20. Sleep The Clock Around

Encore

  1. Get Me Away from Here, I'm Dying