今年のフジロックで一番見てみたいバンドだっただけに、痛恨の直前のキャンセルだったけど、何とか3ヶ月遅れで決まった再来日公演。
「ちょっと掴み所のないフワフワした音楽はハロウィンナイトにピッタリかも知れないな」と思いながら、様々な仮装をした人が行き交う心斎橋商店街を足早にクアトロへ向かう。
発売からしばらくして買ったのにチケットの整理番号が2桁だったので「ひょっとしてガラガラ?」と危惧していたけど、会場に入った瞬間そんな不安は一蹴。ここ最近見たクアトロのライブでは一番客入りが良く、開始予定時刻10分前ということも手伝って後ろの方までギッシリ。普段よりスピーカーが前に迫り出していたので見にくそうだったけど、いつも通りゆっくりと見れる左後方に移動して、ビールを飲んで始まるのを待っていた。
予定より10分弱遅れてフロアの照明が落とされると、猿のかぶり物を被って「今日はハロウィンだよね?何か問題でも?」っていう感じの兄ちゃんを含むメンバーが登場し、"Let
The Cool Goddess Rust
Away"でライブはスタート。アルバムのスカスカした音から、ライブではさらにヘロヘロ感が増強されるのかと思いきや、全く想定外の筋肉質サウンド。ベースとドラムスがガッチリと安定したリズムを刻み、そこにギターが変幻自在に絡みつく。但し、Alecの独特のひっくり返ったボーカルが楽曲に不安定さを加え、Clap
Your Hands Say Yeahならではのアイデンティティを充分に主張。
セットリストは1stアルバムを中心にして、Dave Fridmannプロデュースで来年の1月にリリースされるニューアルバムに収録されるだろう曲も多数披露。それらの新曲もロック色の強い曲からフックの効いたポップスまで、彼らが得意とする人懐っこい表情のメロディで、初めて聴いたのにすぐに口ずさめそうな程だ。ライブ前半で驚いたのは"In
This Home on
Ice"。ややギターのバランスが強めだったが、キーボードが全体の雰囲気を巧い具合に調整してアルバム同様のノスタルジーを構築し、さらに身を削るように声を絞り出すAlecのボーカルスタイルがノスタルジックな雰囲気を何倍にも増幅したので、感情が吹き出しそうになるほどに心を揺り動かされた。
音楽的な変化を除いて比較的淡々とライブが進む中、サイレンを鳴らし、ハンドマイクを使って歌った"Clap Your
Hands!"は良いアクセントだった。この短い曲でオーディエンスをまとめ上げて加速し始めると、アップテンポの"Upon This Tidal Wave
of Young Blood"で本編終了。5分程度のインターバルを取った後のアンコールで圧巻だったのはシットリしたBob
Dylanのカバーを挟んで後の"Satan Said
Dance"。元々彼らが持っている「狂った部分」をデフォルメし、ガレージを彼ら流に解釈したサウンドはキーボードを大胆にフィーチャーした踊れそうで踊りにくいダンスミュージックの側面も併せ持っている。この期に及んでこんな隠し球を出してくるとは、他にも色んな隠し球を持っていそうでますます楽しみで仕方がなくなった。
この日一番盛り上がった"Heavy
Metal"で終了した約1時間20分は彼らの音楽の魅力を充分に表現した楽しい時間だった。ただ、全体的にはアルバムを聴いていたときから想像できた部分を再確認したという印象が強く、ライブ仕様の演奏に新機軸の楽曲と新たな一面も垣間見せたとはいえ、もう少しライブならではのプラスαが欲しかったというのが正直なところ。
彼らはそれをできる能力を持っていると思う。だからこそ、広い苗場のグリーンステージで
彼らを知らない人達を「圧倒的な彼らの音」で魅了し、その拍手が鳴りやまないシーンを目撃してみたい。
"Clap or Treat?"
まずは、この日のパフォーマンスに拍手。(2006/11/4) |