この日は初めて見るColdplay単独ライブ。これまでフェスティバルで3回パフォーマンスを見たことがあるものの、2000年のサマーソニックはデビュー直後、2003年のフジロックフェスティバルは持ち時間不足、2008年のサマーソニックは体力不足で途中退散と、ドップリと浸かり切ったことがなかったので、ワールド記念ホールでのライブを見に行くことにした。
オープニングアクトがあるということだったので、開演時間の40分後くらいに会場到着。まず驚いたのは客層の幅広さ。子供を連れた家族連れが居たり、通常の見に行くライブではほぼ最高齢に近い自分よりズッと年上の人がたくさんいたりして、何だか異空間に紛れ込んだ感じがあった。もちろん、以前からのファンも多くいるのだろうけど、「スマスマに出演したり、グラミー賞を獲ったりというのは、こういうことなんだな」と改めて思った。
チケットを買ったのが直前だったので、席はスタンド席のほぼ最後列とあまり良くなかったけれど、ワールド記念ホールはサマーソニック大阪会場の舞洲アリーナよりも少々大きい程度の会場なので、ステージからそれ程離れている感じもせず、ステージ両サイドのスクリーンがなくても充分に見ることができそう。そんなことを考えながら座っていると、6時を過ぎた頃から時々刻々と会場の温度が上がり始め、6時15分にヨハン・シュトラウスの"美しく青きドナウ"が流れ始めた頃にはアイドリング完了。
そして、客電が落ち、メンバーのシルエットがステージ前方に垂らされた幕に映される演出でライブ開始。1曲目は"Life in
Technicolor"。キーボードがフェードインし、クリアなギターのフレーズが鳴らされても、メンバーの姿はまだ見えず、やや滑稽さが誇張された動きが映し出されるだけ。終盤になって幕が落とされ、ようやくメンバーが登場し、大歓声が巻き起こった。
基本的には誰もが聴きたい代表曲を中心にして、新作からの曲を織り交ぜた現時点でのグレイテストヒッツ的な選曲でライブは進んで行く。まず、序盤から"Clocks"、"In
My Place"、"Yellow"とメロウながらも芯が一本通った曲を持ってくる展開。"Yellow"では会場全体が黄色の柔らかな光で満たされる中、大きな黄色のバルーンがアリーナに放たれ、まるでアンコールのような演出。やや微妙ながらも一応コーラスも起こり、序盤のハイライトになった。その後は「このタイミングで演奏するのか」と驚いた"Fix
You"やステージ右側のミニステージにメンバーが集まって演奏された"Talk"や"The Hardest
Part"など、個々の曲としても、ライブの流れとしても、パフォーマンスとしても、アリーナクラスの会場にマッチしたダイナミックレンジの広い内容。
中盤でのハイライトとなったのは、ミニステージでChris Martinによるピアノのインストゥルメンタル曲"Postcards from Far
Away"が終わった後の"Viva La
Vida"。消え入るようなピアノのサウンドの前に突然現れたストリングスによる美しく鮮やかなサウンドは非常に印象的で、渇望感が瞬時に満たされたようなオーディエンスのレスポンスは、この曲がマスマーケットにおける彼らの代表曲であることを示していた。ただ、残念だったのは最後のコーラスが即効で止んでしまい、倒れ込んでいるChris
Martinがトホホな感じになったこと。あそこで、もう少しあのコーラスが続いたら、恥ずかしい感じもするけれど、もっと強烈な印象が残った気がした。
さらに"Lost!"が終わるとメンバーはステージから駆け下りて、もう一つのミニステージへ。ここでは"Speed of
Sound"のアコースティックバージョンやドラマーのWill Championがギターを弾いたThe Monkeysのカバー"I'm A
Believer"を演奏。本当に小さいエリアに世界的に名声を得たバンドのメンバーが身体を寄せ合って演奏をしている様子を見ていると、こちらまで笑顔になり、彼らが羨ましくなった。一旦メンバーが退場すると、"Viva
La
Vida"のリミックスが鳴り響く中、天井から吊されたボールにアリーナで掲げられている携帯電話の光の様子が映される。ただ、スタンド席から見ている限り、それ程多くの人がやっている訳ではなかったのが少々寂しい。この辺がコアなファンが集まるライブとは勝手が違うところか。
メンバーがステージに戻ってくると、"Politik"でリスタート。続くキャッチーなメロディと多幸感溢れるアレンジの"Lovers in
Japan"では天井から無数の蝶が降り注ぐ。スタンド席から見ていたせいか、まるで空中にフワフワ浮かびながら音を浴びるような感覚が沸き起こると共に、適度な楽曲のベタさと演出のベタさが正帰還を掛け合って、それまで蓄積されてきた感情がサビで頂点に達し、柄にもなくジーンとしてしまった。そして、本編ラストは"Death
And All His
Friend"。序盤の物静かな部分は前曲の鮮烈さを一旦クールダウンし、終盤のユニゾンでのコーラスはライブ全体を締めくくるのに充分なエネルギーを解き放つ。この"Lovers
in Japan"から"Death And All His Friend"の流れは本当に素晴らしかった。
アンコールはChris Martinの歌の巧さが光った"The Scientist"で開始。そして、エンディングは"Life in
Technicolor II"。オープニングで演奏された"Life in
Technicolor"がフェードインしながら始まるのに対して、この曲はエッジをハッキリ立てたギターのカッティングから入り、軽快なリズムと必要十分なアップテンポさで湿っぽくない笑顔のラストを生み出す。さらに、1曲目の兄弟曲としてメビウスの輪のような効果を生み、1時間半前からのこの日のライブがフラッシュバックししつつ、全体としては終わりに向かって行くという不思議な感覚。この曲をラストに持ってきたのも正解だと思う。
彼らの今のポジションではどうしても最小公倍数的なパフォーマンスが必要になることを逆手に取った、徹底的にプロフェッショナルな「ショー」。音楽以外の部分で緻密に計算し尽くされ、どこかDVDの映像を見ているような感覚が強かったこともあり、「ライブ」と呼ぶには違和感は感じるものの、ロックやオルタナティブに固執せずに、アッケラカンとポップサイドに軸足を残したことで、過剰気味の展開にも嫌みに感じる部分もなく、実に楽しい時間を過ごせた。
2000年の初来日のときとは規模も距離も違うけれど、縦横無尽に動き回るインタラクティブなパフォーマンスは健在で、根っこが変わってないことが分かって感慨深かった。(2009/02/21) |